シノプス<><>06/08/19 10:08 ID:Aj8AEkmZiK<> 3つのお題を元に即興で文章を作るという、あれです。
前の投稿者が出した3つのお題を全て使って文章を書き、
最後に次の投稿者のために3つのお題を出してください。
お題が入ってさえいればジャンルは何でも構いませんが、
場所が場所ですので、官能表現などは自粛してください。
細かいことはまた後々追加します。とりあえず書いてみませんか? <>三題話を作らないか
シノプス<><>06/08/19 10:56 ID:Aj8AEkmZiK<> 前の投稿者がいないので、適当に3つ見繕って書いてみました。こんな感じで。
「車椅子」「うだるような暑さ」「ポスト」
「これよろしく」
望は白い封筒と数枚の葉書をつき出した。私に出して来い、というのである。
「帰りにな。帰りに出す」
気の抜けた声で答えつつ、私は吹き出る汗を拭った。室内に居るとはいえ、病院内にはほとんど
冷房が効いておらず、こもった空気のせいで外と大して変わらない暑さだった。
私は長いすに腰掛けて息をついた。まあ、いかに暑いとはいえ、強烈な日照りから逃れられるのはありがたい。
椅子に深くもたれこみ、顔だけを望に向ける。
「お前は元気そうだな」
「まーね。おじさんよりかは」
情けない格好で自分を気遣う叔父を見て、望は複雑そうな笑みを浮かべた。
「これのせいで仰々しく見えるけど、別に大したことはないんだよね」
彼女は自分の乗っている車椅子をつついて笑った。知っている、と私も笑った。
さっきの葉書を手に取り、私はどこのポストが一番近いかを考えた。
帰り道にポストは無い。このうだるような暑さの中、私は可能な限り短いルートで
この手紙を投函し、駅に戻らねばならなかった。
次は「はさみ」「クロワッサン」「霧吹き」で。 <>
equilibrium<><>06/08/19 23:12 ID:9yMjbvUMnP<> シノプスさん、ルールについて質問です。
話を繋げていくのでしょうか、それとも
全く新しい話をその都度書くのでしょうか?
それともそのどちらでも良いのでしょうか?
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/08/20 00:37 ID:jXtrWnH/js<> 久しぶりの休日だが、荒れ放題の庭にはさみで刈り込んで芝生を綺麗にしてやった。
私は汗をかいた体にビールを所望したのだが、妻に叱られてコーヒーとあいなった。
やれやれ。
妻は小さな袋から、それはまた小さなクロワッサンをスヌーピーの絵皿にのせてくれた。
やれやれ。
「あれぇ これは可愛らしい大きさだねぇ。」
「知らなかった? 一口サイズがいいのと、これ1ケ百円なのがいいのよね。」
「1ケ百円は安いねぇ。」
本当は安いかどうか知ったこっちゃないが、妻にはこういう言い方が無難だと学習してる。
食ってみたところ、小さなながらサクサクして思いのほか甘味も感じて美味いのだ。
普段の妻は甘い菓子類が多いのだが、私に気を使ったのだろうか?
うれしくなった私は、「では、君に瞬間芸をひとつ披露しようかな。」と言った。
やれやれ。できるんかいな。
しばらく物置の中をゴソゴソしたが、朝から気温が上がりっ放しで暑くてかなわない。
「それでは、奥様、目を閉じて・・・・」
「はーい! 奥様、目を開けてよろしいですよ。」
小さな虹が夫婦の間に綺麗にかかっていた。
「奥様、どうでしょうか?」「綺麗、綺麗、 いいんじゃない!」
背中に隠した右手に1ケ百円也の霧吹きが、
「どうだい!見事だろ!」 と言った とか 言わないとか。 <>
シノプス<><>06/08/20 02:08 ID:O3h/bLzR2v<> >>2
別に繋げていく必要はありません。
でも、あえてそういう縛りを自分に課すのは面白かも。
それと、前の投稿者がお題を指定しなかった場合、
その前のお題を継続してお題とします。
つまり、次も「はさみ」「クロワッサン」「霧吹き」で。 <>
Kelp<><>06/08/20 13:39 ID:1OVvZP7CaK<> ゆっくりと目覚めた休日の朝、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる。
いつもは部屋の暑さに耐え切れず目覚めるのだけれど、今朝は少しだけ違う。
程よく冷やされた部屋。暖められたクロワッサンとコーヒーの香り…昨夜の会話を思い出す。
『此処に来るのももう最後かもしれない。』
長い事、君だけにしか切らせなかった髪…その髪を濡らしはさみで整えながら君は言った。
『結婚するのよ』と。
『ふ〜ん』と短い返事をしていつものように君の為すがままにされていた。
髪をクシャクシャに乾かす時もただ笑っていた。何もかもがいつものように。
何も変わらない…そう思った。
あんな事を言っても君は又来るだろうし、時々会えれば僕はそれでいいのだから…
そして今朝、ソファーで目覚めて君の姿を捜す。
ベッドにかすかな温もり、空っぽのキッチン…僕より朝寝坊な君がどこにもいない。
体の奥から喪失の痛みがやって来た。君を完全に見失った…
君がどこに住んでいるのかさえ僕は知らなかったのだ。
次は 「猫」 「指輪」 「長い階段」で。 <>
シノプス<><>06/08/21 09:18 ID:oA8nv5/CBB<> 志村ーっ!! 霧吹き、霧吹き!!
「猫」 「指輪」 「長い階段」
店内は思ったよりも明るかった。電灯、クロス、カーテン、
カーペットに至るまで、どれも暖色系でまとめられ、背の低いラックや
アンティーク調のキャビネット、そして大きな鏡が壁際に沿ってぐるりと並べられていた。
「いらっしゃい」
声をかけたのは若い男性だった。どこにでもいそうな普通の人だ。
唯一、黒猫を抱いているところはそれっぽかったが、逆に言えば本当にそれだけだった。
先輩はその隣にいた。窓際のラックの前に屈みこみ、中を物色している。
声をかけると、遅い、と言われた。僕はそれを無視して言った。
「……何か、イメージと違いますね」
「もっとおどろおどろしい所だと思ってましたか?」
ドクロの意匠が施された不気味な指輪に夢中になっている先輩に代わり、
さっきの店員が答えた。率直な物言いに少し驚いたが、案外自覚はあるもんなんだな、とも思った。
「ナチュラルかつアットホームに、と言うのがうちの方針なんです。一見さんにも
気楽に覗いていただけるように。まあ、あの長い階段のせいで滅多に人なんて
入って来やしないんですけどね」
店員はそう言って笑った。でも正直、無駄な努力だな、と僕は思った。
だって、魔術品ショップにわざわざ足を運ぶ客なんて、先輩みたいな確信犯だけだろう。
冷やかしなら来るかもしれないけど。
次は「海岸」「空気」「台風」 <>
equilibrium<><>06/08/21 13:07 ID:LFO8NcDVa/<> 先んじられた! 「猫」と「指輪」まで練りだした処で、
あと一息で「長い階段」の登場だったのに!
涙を呑んで、次いきます。
「海岸」「空気」「台風」
彼女とよく来たT海岸。此処で出会って、此処で愛を重ね、此処で別れた。別れてから数年、此処をどうしても訪れる気になれなかった。此処の海は彼女の思い出と重なりすぎているからだ。もうそれも思い出の彼方と思えるようになれたから、再訪しようとする気にもなれたのだ。
あの頃のT海岸は海水浴客で賑わう華やかでいて俗っぽい場所だった。今、僕の目の前にあるそれは、人っ子一人いない或る一つの海の断片に過ぎない。あの頃の暑くて湿った空気は失われ、何も無かった如く落ち着き払った乾いた空気に変わっている。夢だったのだろうか。あんなにも僕の心を熱く煮えたぎらせた彼女との恋愛は。
沖を大型船が走り、高波を立てた。波が岩礁にぶつかり、一瞬、彼女の幻想を見せた。当時のままの彼女が岩礁の上に立ち、微笑んでいる。僕は息を呑み、思わずそこに駆け寄った。波は直ぐに治まり、彼女の幻想も消滅した。
「馬鹿だな。彼女が此処に居るわけがない。どうしたって、居る筈がないんだ」
目の裏が熱くなり、無性に遣る瀬無い気持ちに囚われた。
「何故こんな処に来たのだろう。分かっていたのに、此処に来たって彼女が生き返りはしない事くらい承知してるのに」
このまま電車に乗り込んで涙を他人に見られるのは嫌だから、泣くだけ泣いて、涙が乾くまで此処にこうして居ることにしよう。どんより曇った空から淡い太陽の光が何本も筋をなして海を照らす。もうじき台風の季節がやって来る。
次回の御題は「着物」「露地」「約束」。
<>
Kelp<><>06/08/21 22:51 ID:mFBLD/VYbB<> 湖のほとりにある染色工房。
今は私と父とでひっそりと仕事を請け負っている。
趣味が高じて染物を生業にする父は母を亡くしてから急に老け込んだようだ。
『今日は母の命日だから…』朝食の時、私がそう言うと父は白い封筒を私に渡した。
『お墓参りの後、これで美味しい物でも食べておいで。』
父は私が年齢相応な楽しみも無く毎日を家に篭って過ごすことに負い目を感じているのだ。
『お給料ね。』と言ってそれを受け取る。
母の眠る墓は湖の反対側にあった。
電車に乗り、小高く景色のいい墓地に着く。
誰が参ってくれたのか母の墓には生前、母が好きだと言ったヒマワリの花が飾ってあった。
ほのかに線香の香り…
私が持っていったグラジオラスの花は無縁仏の墓に飾られた。
帰りの電車に乗り途中の駅で降りるつもりでふと目を上げると、そこに見覚えのある柄の着物を着た女性が立っていた。
「あれは確か…」
その女性の後を追う様に同じ駅で降り後をつける。
真昼の暑い日ざしを避けてその女性は白い日傘をさしていた。
その日傘が飲食街の露地の奥に消えたのを見てから急ぎ足で露地を曲がる。
その女性が立っていた。此方をじっと見つめている。
『あなたを知っているのよ。』と彼女は言った。
『不躾は承知ですがあなたの着ている着物はもしかしたら私の母の物では?』
父が描いた一品物なのだ。私の問いに彼女は答えた。
『あなたのお父様に頂きました。お母様もご存知のこと…でも、これ以上は約束なので話せないわ。』
彼女の目はもうそれ以上の質問は受けないと私に告げていた。
私は朝の浮き浮きした気持ちには戻れず、時間をかけて家に戻った。
帰った私に父が聞いた。
『早かったね。お母さんとはゆっくり話せたのか?』
『ええ。何年分もの話をして来た…』
もしかしたらあの女性が新しい母になっていたかも知れない。
そう思いながらなぜか、それ程嫌でも無いなと父に笑顔を向けた。
志村です。長くなってしまいました。
霧吹きは髪を濡らす時に使いますがニュアンスでなく言葉として入れないといけないんですね。
試しました(笑)
次は「本を読む」「散歩」「虹」で。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/08/22 20:37 ID:Ske2L9KLS/<> どんどん北の空の雲行きが怪しくなり、雲間に雷がキラっと見えるようになる。
雲の流れからも、やがてこの辺りにも雷混じりの雨がくるのがわかった。
しかし、ここは暑い炎天下で私達は彼の作業が終わるのを待っているのだ。
「もし、今雨や雷が落ち出したら彼を置き去りにして逃げましょう。だって、
こんな場合、犠牲者はたったひとりでいいのですから。」
名指しされた彼のなんだよーという惨めな顔に車の陰から彼女が笑った。
ギクシャクした会話に我慢ならないのはいつもの性分か。
「最近、本を読みだしてね。今読んでいるのは松本清張の「砂の器」です。
読んだのは随分と昔の話なので、今読み直して見て本当に忘れてますね。
ちょっと前の「砂の器の意味」その答えが書いてあるのを見つけました。
人間は忘れるんですね。いや、思いが足らないのでしょうかね。」
北の空が一段と暗くなってきたが、綺麗な色の光が見え出したのだ。
「あぁ 虹ですね。しかし、珍しい事に上下ふたつも見えますね。」
「ほんどだぁ」彼女は不思議そうに見ていた。
私も虹を見るのはとても久し振り。なんか、得をした気分だ。
彼の作業はなかなか終わらない。
若い二人は草も伸びきった下の造成地でお喋りを始めた。
暗さと距離感のせいか、二人が前からここに住んでいるような錯覚を覚えた。
辺りはとても暗くなって、遠くを走る車もヘッドライトを点灯している。
お喋りをしてる二人は散歩の途中のような雰囲気を感じさせてくれる。
でも、本当は彼の作業を二人が優しく待ってくれているのだ。
「まったく、君の仕事は遅さといったら・・」
再び、彼のなんだよーという惨めな顔に今度は二人が大きく笑った。
次は「レストラン」「喧嘩」「片親」でお願いします。
志村さん、そうでしたか。なぜか、納得。
<>
シノプス<><>06/08/23 06:24 ID:KwN.PvWopB<> >>8
そういやその辺りの所を明記してませんでしたね。追加しときます。
言い遅れましたが、動詞は基本的に活用可で。言わなくても大丈夫だったようですが。
それと、先越されちゃっても、投稿してもらって構いませんよー
せっかく書いたものですから。
「レストラン」「喧嘩」「片親」
週に一度は繁華街のレストランで食事をした。父は私を高そうな服で綺麗に飾り立て、
テーブルの向かいに座らせておくのが好きだった。父が選んだのはいつもパンツルックの
男っぽい格好ばかりだったが、それは別に父がマニッシュな女性に劣情を刺激されるような
男だったからという訳ではない。母が好んでそういう服装をしていたのだ。もっとも、
私はもうぼんやりとしか覚えていない。
二年前、私は事故で片親を亡くし、間もなくもう片方も親であることをやめた。
つまるところ、両親を失った。ただ愛情だけは残り、父はそれを明らかに歪んだ形で
私に注いだ。その頃、私は14歳だった。
食事中、父と私との間に会話はなかった。父はただ私の一挙一動をうれしそうに眺め、
私はそれに気づかないふりをして黙々と料理を口に運ぶ、というのが常だった。
傍目には、反抗期で口をきいてくれない娘と、かわいそうな父親、というふうに映ったかもしれない。
でも実際のところ、私は生涯において反抗期というものを経験することはなかったし、
父との間には喧嘩のひとつもなかった。まあ、当然といえば当然のことかもしれない。
喧嘩というのは対等な、あるいは対等だと感じられるような間柄でなければ起こらないのだから。
次は「岩塩」「サイバネティックス」「たこ焼き」で。 <>
♪亜譜里織♪<><>06/08/23 23:32 ID:O3qiFDui7A<> 先越されちゃってもいいんですか?
では、だいぶ前に出しそびれた、「猫」 「指輪」 「長い階段」です。
***********************
タバコが吸いたくなって、マンションの非常口から外階段に出た。
きょうは満月。
階段のコンクリートが、月の光に煌々と照らされて白く輝いている。
その月明かりの中を、一匹のシャム猫がすました風情で横切って行く。
「猫の分際で、ずいぶんと気取ったやつだ」
よく見ると、ぴんと立てた細いシッポに指輪がキラリと光っている。
「ははぁ、猫の奴、指に嵌められないものだから、シッポに嵌めてやがるな」
「生意気な奴だ。こうしてくれる」
ひょいとお月様に手を伸ばすと、端っこをちょっとおっ欠いて、
やっとばかりに、生意気な猫めに投げつけてやった。
猫は、キャット飛び上がったかと思ったら、シュポポンと黄色い煙になって消えてしまった。
あとには、シッポから外れた指輪がコンクリートの上に落ちている。
「ははは。ザマを見やがれ。こいつは俺様が頂いてやる」
その指輪を拾ってポケットに突っ込んだ。
さてとタバコを口にくわえると、いつの間にやら子供の薄荷パイプに変わっているではないか。
「あれあれ、猫の奴に仕返しされたぞ」
「まぁいいか、これでお相子だ」
そう思った瞬間、足元がぐらりと揺れて、階段から足を踏み外してしまった。
そのままバランスを崩して階段をごろごろと転げ落ちる。
「これは、たまらん」
転げ落ちながら上を見上げると、お月様が三日月顔で睨みつけている。
「しまった、お月様の事を忘れていた」
これは、お月様の仕返しだったのだ。
「猫の奴からせしめた指輪を差しあげて謝っったら、お月様は許してくれるかしらん」
そんな事を考えながら、私は長い階段を転げ落ちているだった。 <>
Kelp<><>06/08/25 20:32 ID:mFBLD/VYbB<> その中年の男性はもう3日も前から頭を抱えている。
パソコンの画面を見てはため息をついているのだ。
新婚旅行で言ったオーストリアのお土産を渡す機会を待ちながらそっと声をかける。
『課長、何をそんなに悩んでいるんですか?』
『うん…実はね。』
話を聞くといつも遊んでいる掲示板のカテゴリーで三題話と言うのを作っているらしい。
そこで出されたお題が突飛なもので誰も手を出さないと言うのだ。
『何も課長が書かなくても誰かが書くでしょう。』
『私もそう思ってたんだがeさんもkさんもaさんも手出ししない。ここは私が書かないと…』
私は画面を覗き一瞥するとサラサラと書き込んだ。
サイバネティックスは夜食のたこ焼きを冷めた人工頭脳に変える。
その一行を見て課長はようやくデスクを離れ帰り支度を始めた。
『課長、これは皆に配っているお土産なんですけど。』
私はそういってお菓子と岩塩を課長に渡した。
課長が一言…『君は全くそつが無い。』
先生。こんな感じでお許し下さい。
次は「鏡」「カーナビ」「放浪」で。 <>
equilibrium<><>06/08/25 22:28 ID:IzdLfKVgZq<> >>12
うあ、またタッチの差でやられた!
しかし、かぶっても良いということなので、遅ればせながら。
「岩塩」「サイバネティックス」「たこ焼き」
俺は今まで岩塩しか食ったことがない。岩塩は塩化ナトリウムが主成分の結晶鉱物で、鉱物だからというわけではないが、俺の好物だ。お察しの通り、俺は人間ではない。アメリカの数学者ウィーナーによって創始されたサイバネティックスという比較理論を応用して設計された人工頭脳を持つアンドロイドだ。
俺より新しい世代は岩塩でないものも食せるという。彼らは食品の香りや色艶に触発されて、食欲という欲求を起こすらしい。俺にはそんな経験が無い。「美味しそう」とか「食べたい」っていうのは一体どんな思考なのか、俺には全く分からない。
今夜は仕事で知り合った新世代のアンドロイドであるQに誘われて「たこ焼き」なるものを食べに行く。Qが選んだその店はたこ焼きで一世を風靡した名屋台。初めてのたこ焼き。水気の多い粘土の如く柔らかい球状の物体。口に入れた途端それは小麦粉とダシをメインにした物体だと直ぐに見当がつく。中央付近に挿入された蛸の足の一片。
「これ、これ、これなんだよなあッーー!! この独特の味はここでなきゃ到底出せないシロモノなんだよ!」 涙に打ち震えてそう叫ぶQを俺は驚愕の眼差しで眺めた。涙を流すほど素晴らしいものなのか?しかし俺は何も感じない。何故だ?そうか、他に比較研究するものを知らない俺はそれ故にこの素晴らしさに気付けないのだ。
俺はQに他のたこ焼き屋にも連れて行けと懇願した。Qのガイドによって様々なたこ焼きを食してみた俺は、激しい混乱に見舞われた。何だ?どれもこれも同じじゃないか。多少柔らかさやソースの銘柄に違いはあるものの、だからどうだというのだ。涙を流すようなことか?やはり何も感じない。俺は激しくQに嫉妬した。新世代のアンドロイドに感じられるクオリアというものが俺のような古い世代には欠けているのだろうか。それともQはただ演技しているだけなのだろうか。 <>
equilibrium<><>06/08/25 22:41 ID:IzdLfKVgZq<> 訂正:
× 中央付近に挿入された蛸の足の一片。
○ 中央付近に殺害された蛸の脚部の一片が挿入されている。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/08/26 19:48 ID:Ske2L9KL5p<>
技術の進歩は素晴らしいもので、次々と新機能の新しい商品が生まれる。
世に送り出された商品は人の生活を便利で豊かにするのもである。
決して、その商品を使うことで不便を生じることなど考えない。
青年はテスト中のある新商品のモニターをネットで応募していた。
さきほど、そのモニター商品と会社のくどいくどい説明文とが一緒に届いたのだった。
商品名は「未来」と書かれてあった。青年は説明を読んで早速使ってみる。
その商品の用途は「カーナビ」だったが、車への設置を必要としない新しい発想で作られた。
それはシャツのポケットに入れるだけででいい。なんて、簡単なんだと、青年は驚いた。
例えば「東京の青山の・・」と言うと、「未来」は音声で伝えるのだ。
「未来」は音声を人体の骨伝道で伝えるのだ。従って、雑音や騒音の中でも聞き取れるのだった。
最大の特徴は親しい友人が地図を広げて、教えてくれていると錯覚するような親近感にあり、
機械的な一方通行ではないのだ。受け答え可能で、人の暖かい気配りのアルゴリズムが組まれていた。
青年は車を持っていなかったが、すぐにバイクに乗り「未来」を連れて出発した。
今までは走行中に地図を見るなんて考えられなかったが、青年がマイクを通して「未来」に告げると、
騒音の中でも「未来」は青い光を放ち、なんの問題なく人体の骨伝道を使って、青年に進路を伝えた。
「あれ、どっちだろう?」迷った青年の言葉に「未来」はすぐに反応して青年に伝えた。
「未来」は青年に話し掛けてきた。
「走りっぱなしだけど、大丈夫ですか?」
「あぁ 僕は大丈夫さ。」
「頑張ってくださいね。」と伝えた。
バイクの鏡にポケットの「未来」が赤い光を放った。
「困ったぞ〜 また、モニターの青年が行方不明になってしまった。」
「だから、あれほど詳細な説明書をつけたのに見ていないんだな。」
「この商品はナビではなく、機械の長時間の骨伝道による意識障害のモニターなのに。」
青年は「未来」と一緒に放浪を始めた。
ポケットの「未来」は怪しく、赤い光を放った。 <>
Kelp<><>06/08/28 13:11 ID:mFBLD/VYbB<> 玉鬘 06/08/28(Mon) 12:49 [×]
二つに分けます。
『鏡』『カーナビ』『放浪』
ルームミラーに目をやる。続けてサイドミラーにも。一瞬、視線を感じたからだ。
この時間だ。こんな辺鄙な所だ。他に走る車はない。人影もない。当然だ。
僅かに曲がっているミラーを調節する。そうだ。これは彼女の車だった。助手席をちらと見る。
彼女は流れ去る車外に顔を向いている。セミロングの髪が横顔と首を覆い隠しているが、目蓋を閉じた穏やかな表情は窓ガラスに映っている。眠っている。
俺は恋人を殺した。
確かに愛していたし、結婚も意識していた。一度も憎んだ事はなかった。一瞬として憎んだ事はなかった。
すれ違いに始まり、口喧嘩、罵り合い、彼女の死が幕を閉じた。何らかの罵り言葉が俺の意識を吹き飛ばした。彼女の最後の罵言とともに、前後の記憶は消え去った。ただ、助手席でぐったりとして動かない彼女の白い首に、赤い手の跡があるだけだった。
彼女のどのような言葉が俺に彼女を殺させたのだろうか。
久しぶりに交差点が見える。突然の女の声。俺は身を強ばらせ、急ブレーキを踏むが、すぐに気付く。
『100M先で右折します』
カーナビの案内音声だ。抑揚の無い声で誰かに話し掛けている。そうだ。これは彼女の車だった。方向音痴だった彼女の車だ。
路肩に寄せ、停車する。一通りいじるが、カーナビは頑として右折を促す。俺は機械音痴だ。
だが、そうだ。俺はどこに行こうとしていた? カーナビが突然独り呟くまで、俺は半狂乱になっていたようだ。何度も通った、一人暮らしはできても離れられないという彼女の地元を放浪していたのだ。
どうしよう。とにかく、だ。彼女を隠さなければならない。幸いドーナツ現象の外にある土地だ。人目につかない場所はいくらでもある、人がいないのだから。
俺はカーナビに降参し、ギアシフトする。滑るように発進し、流れるように左折する。彼女がどこに行こうとしていたのか知らないが、右折すればドーナツに近づく。
<>
Kelp<><>06/08/28 13:15 ID:mFBLD/VYbB<> 彼女を抱え、薄汚れたガードレールを跨ぐ。さくさくと枯葉を踏みしめ、日々下がる気温に身を震わせた。すぐに現れた下り傾斜の前で彼女を横たわらせる。土色の頬を撫でた途端に彼女の最後の言葉を思い出した。
彼女に言わせれば、俺の言葉は何もかも信じられないのだそうだ。彼女の誕生日に会えなかった事、なかなか彼女の家族に挨拶へ行かない事、ささやかな悩みを打ち明けても気の無い返事。それらの事が、ずっと欲しかったアクセサリーを買うという約束、次に会う日、妊娠したら結婚するという言葉に不信感を持たせるのだ、と。
あんたは口だけなのよ。
そんなつまらない言葉が彼女を殺させたのだ。
本当だったんだよ。
俺は心の中で呟き、彼女の体を一押しして後は傾斜に任せた。振り返り、彼女の車に戻る。この車も元に戻さなければならない。俺は彼女が一人住んでいたマンションに車を走らせる。
確かに安給料の俺には難しいが、アクセサリーは確かに買うつもりだった。妊娠すれば結婚するし、それまでには彼女の家族に挨拶へ行くつもりだった。
カーナビは諦めずにこの車をどこかへ誘う。
彼女が最後に行こうとしていた場所――あるいは行った場所――に行ってみようと思う。案内に従い、交差点を直進する。
俺は未来図を持っている。妻という名の恋人と二人の子供に囲まれた暖かなヴィジョンだ。俺は、彼女の言葉で俺の未来、それはすなわち俺自身を否定されたのだ。
ドーナツの端辺りに着いた時、
『目的地に到着しました』
という案内音声。建物はいくつかある。どこが目的地なのか分からない。所詮は機械、アバウトなものだ。
俺は液晶画面に表示された正確な住所を読み、車外を眺める。助手席側に明かりの消えた煉瓦造りの建物がある。掲げられた看板には電話番号とともに住所が印されていた。産婦人科病院だ。
彼女の罵言を思い出す。俺の暴挙を思い知る。
未来を否定したのは俺だったのか。
玉鬘さんからの代理投稿です。
私もこれから読ませていただきます。 <>
equilibrium<><>06/08/29 07:49 ID:IzdLf8UMap<> 以前、先んじられた作品を。
出遅れ常習犯のequilibriumとお呼び下され。
「猫」 「指輪」 「長い階段」
私の左人差し指に輝くこの指輪、それは私が砂漠で拾ったものだった。
キャラバン隊が一晩キャンプしたリビア砂漠のど真ん中。
青白く光るどこまでも連なる空と砂のシルエットに、それが満月の光を
浴びて輝いていた。
持ち主を失ったその指輪。砂の中になかば埋もれかかったそれを
ゆっくり拾い上げて月の灯りで眺めてみた。珍しいデザインだ。
かなりデフォルメされているが、どうやら猫が形どられているようだ。
右目が緑で左目が青の石で出来た猫の指輪。
スークの中をぶらついている時、黒いヴェールで全身を隠した女性が
すれ違いざまに私の左腕を掴んで囁いた。
「この指輪は不吉。元のところに返すが良い」
私の反応を待たずして彼女は人ごみの中に紛れて見えなくなった。
妙な女だ。こんなに込み合っているスークの中でどうやって私の
指輪に気がついたのだろう?
暫く歩くと、人が全く居なくなってきた。
両側に高く聳え立つ白い壁に圧迫されるような細い路地の白っぽい土。
ぎらつく太陽が白に反射して眩しい。
そんな白だけの空間に一際目立つ黒猫の姿。猫は廃墟となった建物の
二階の窓から此方をじっと眺めていた。あんなに遠くにいるのに、
何故だかその猫の目の色がくっきりと見える。右目が緑で左目が青。
廃墟の扉は開いている。覗くと長い階段が上へと繋がっている。
上方から猫の鳴き声がする。白い石で作られた古い階段を登って行くと、
上方の階段を登りつつある猫が居た。振り返って私を見つめた両目は
やはりこの指輪と同じく、右が緑で左が青。
私はもっとよく見ようと猫を追い掛けた。逃げ出して上へ駆け上がる猫。
猫を追い掛けて、螺旋状に長く続く階段を勢いよく走る私。
しかし変だ。
二階建ての建物にしてはこの階段は長すぎる。
そう思った瞬間、曲がりざまにいきなり途切れた足元に気付く余裕もなく
私はゆっくり落下し始めた。
落ちつつある私の目に映った最後のものは、廃墟の長い階段のエッジで
黒猫を抱く黒いヴェールの女と、眼下に広がる広大なリビア砂漠だった。
何故か誰も次のお題を出さないので、私が。
お次は「図書館」「陰謀」「秘密結社」で宜しく。
<>
equilibrium<><>06/08/29 07:58 ID:IzdLf8UMap<> 訂正:
× 暫く歩くと、人が全く居なくなってきた。
○ 暫く歩くと、人足が完全に途絶えた。
<>
シノプス<><>06/08/31 02:11 ID:OBLt5VvZSL<> 「図書館」「陰謀」「秘密結社」
埃をかぶったテーブルやらパイプ椅子やらをあらかた片付けてしまうと、先輩は宣告通り
清め祓いの儀式を始めた。科学部から借りてきた白衣(狩衣の代わりらしい。
なぜ狩衣と言ったら人は白ばかり思い浮かべるんだろうか)に身を包み、燭台に立てた
いくつものキャンドルの灯りの下(これだけで何かいかがわしい秘密結社のアジトのような
雰囲気が出るのだから不思議だ)、足を引きずるような奇妙なステップを踏みつつ、
小さく何かを呟いている。おそらく呪文か何かだろう。後で聞いた所によると、
それは「ヘンバイ」という、道教だか何だかの呪術儀式の一種だそうだが、正直そんな事はどうでもいい。
先輩は張り詰めた表情で、一歩一歩を踏みしめるように進みつ戻るを繰り返している。
儀式はまだ当分終わりそうに無かった。
それにしても。闇の中、あたり一面に整然と並ぶ書架の群れを前に、僕は思った。
確かに、お祓いでもしておかないと、出そうだ。この場所は。何かこの世ならざるものが。
図書館の地下、ただでさえ薄暗い書庫の、そのまた最奥部の一角というのが、生徒会から
魔術研究同好会に与えられた「部室」であった。
部室棟には何部屋か空きがあったし、無ければ無いで一般の教室を利用すれば良いにも拘らず、
あの生徒会長は敢えてこの人外魔境を指定した。まあ、どこから見ても何かの陰謀、というか、
ストレートな嫌がらせだったのだが、呆然としている僕をよそに、先輩はただ一言、
「カタコンベみたい。すてき」と呟き、それで全てが決まった。
それにしても。再び僕は思った。あれは果たしてウィットに富んだジョークだったのか、
それとも本当に頭がおかしいのか……僕には判断がつきかねる。
先輩がゆっくりゆっくりとステップを踏んでいる傍らで、風も無いのにキャンドルの炎が揺れている。
儀式はまだ終わらない。
次は「金属」「星」「管」で。 <>
Kelp<><>06/08/31 13:37 ID:R8O1fTmsFK<> 長い事、離れた故郷へ僕は戻って来た。
高校時代から軽音部に所属しサックスを吹いていた僕は大学の2年に上がる前に親にも内緒で学校を辞めた。
バイトで吹いていたサックスを見込まれ、仲間達と共に米国へ行ったのだった。
怒る父を母がなだめ、一人前になるまでは帰らないと言う約束で僕は旅立った。
前途には開けた世界が待っている…と信じていた。
ところが現実はそんなに甘くない。
僕くらいに吹ける奴等はウジャウジャいて、どこへ行っても短期の間に合わせばかり…
仲間達とも音楽に対する違いや経済的な理由で次第に険悪になった。
僕は自分の音を見失っていた。
一人、公園で吹くサックス。
命を与えられるはずのそれはただの金属の塊でしかなくなっていた。
「家に帰りたい」そう思う日が続くといてもたっても居られず日本への便に飛び乗る。
そして今、僕はここにいる。懐かしい故郷の空港。
事前に何の連絡もせず家へと戻る。
玄関のドアを開けるつもりで鍵を探すと隣家の主人が急いでやってきた。
「今ならまだ、間に合うかもしれない。早く!」
母が半年も前から入院しているのだという。
誰も知らせてこなかった。もはや助かる見込みの無い病…
病院の場所を聞き荷物を庭先に放り投げたままタクシーを拾う。
病院で母は人工呼吸器と点滴の管を体中につけ、意識は無かった。父が僕の肩を抱く…
連絡を拒んだのは母だった。
母は苦しげでも無くただ息をついていたが僕がそっとその手に触れるとフッと呼吸をし、永遠に去った。
それから一年が過ぎた。
僕はサックスで地元のイベントに参加している。
『星の下のジャズフェスティバル』
母に届けとサックスを吹く。
体中から熱い想いが込み上げてくる。
どこで吹いた時よりもその音は伸び空へこだまする。
今夜の音が最高だ。誰にも出せない僕の音…
そして僕はその夜を限りにサックスを捨てた。
次のお題は『帽子』『瓦』『谷底』で。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/08/31 20:46 ID:SlxHBbXOjS<> 「帽子」「瓦」「谷底」
ニューオリンズは見捨てられたんだ。
そう、昔も今も何も変わっちゃいなくて、そうだと知っていても泣けるのさ。
凶暴なカトリーナだったが、俺達をやっぱり黒人だと知らしめたんだ。
不運の谷底だって? 何言ってんだ、これを不運として片付けたいのか。
大統領は来たらしいが、俺達は誰も「彼」を見ていない。
テレビに映った事だけは事実だがね。
俺達を哀れんでくれたって?そんなもの、何の役に立つと言うんだ。
大事なのは行動で示すべきだし、家の修理に一体いくら援助してくれというんだ。
最初の話から半分以下に下げられて、一体何が出来る?ここに俺達以外に誰がいる。
何、修理の材料の瓦がある? お前は日本人か。なら、白髪の首相に言ってくれ。
エルビスばかりが音楽じゃないと、俺達の音楽を知らないのだろうってね。
まぁ無理だろうね。これだけは言っとくよ。これからはお気の毒になるってね。
何故だって?いやいや君達の親切は筋金入りさ。見てて笑いが止まらない。
あぁ 気に障ったら、許してくれ。笑わなきゃ この状況ではやって行けないのさ。
俺達は帽子をかぶり、壊れた家の前に座り込んではいるが、
ただ哀れみを待ってはいない、いつまでも俺達は待ってはいない。
テレビの映像を見ながら、こんなことを想像する。
吹き出る憎しみが新たな憎しみを生む世界に、平穏な治安とテロの撲滅は難しい。
次は「擬態」「秀才」「無臭」でお願いします。 <>
Kelp<><>06/09/01 07:49 ID:R8O1fTmsFK<> 『帽子』『瓦』『谷底』
昨日訪れた台風は夜のうちに去り、空はさっぱりと晴れ上がっていた。アブラゼミやクマゼミがけたたましく喚き立てる。
仄かな湿気と気怠い雰囲気、降り注ぐ陽光に夏――というよりは夏休み――を感じる。私は濡れた下草を踏み、縁側に腰掛ける。空から聞こえる作業音に耳を傾ける。
台風六号は我が家に甚大な被害をもたらした。人生初の雨漏りだ。原因は屋根瓦の損壊だ。
もちろん大工である父の出番だ。普段は働く姿を見せられないからか、張り切っているようだった。仕事モードなのだろうか、ただでさえ寡黙な父は『話し掛けるな』という雰囲気を作り出していた。梯子を立て掛け、意気揚揚と屋根に登っていった。
私は下草を踏みつつ、縁側に寝転がる。頭だけでも屋根の影へ隠し、ワンピースの襟元で扇ぐ。今時クーラーもない家に住む私は不幸に違いない。手提げ袋を開き、谷底をただ見る。読書感想文か。面倒臭いけど、そろそろ行こうかな。
母がぱたぱたと小走りでスイカとウチワと麦藁帽子を持ってくる。今時麦藁帽子。父と同じ麦藁帽子。スイカのために起き上がった私の頭に麦藁帽子をかぶせた母が言う。
「はい。図書館に行くんでしょ。あんたすぐに熱射病になるんだから」
続いて父にも声をかける。修理を終えてから降りてくるらしい。
スイカにかぶりつき大きく頬張った。よく冷えてて甘い。含んだ種を庭に勢い良く吐き飛ばす。
「じゃあ、行ってきます」
スイカを吹きそうになりながらいってらっしゃいと言う母を残して、私は夏の中に飛び出す。思い立ち、振り返り、屋根の上を見上げ、両手をメガホン代わりに叫ぶ。
「お父さん。行ってきます」
父は麦藁帽子を少し上げて額に浮かぶ汗を拭い、遠慮がちに手を振った。
出遅れましたが…
玉鬘さんからの投稿です。 <>
Kelp<><>06/09/02 08:13 ID:R8O1fTmsFK<> 玉鬘さんからの投稿です。
『擬態』『秀才』『無臭』
僕はイジメられている。気付くのが遅かった。初めに何に何をされたのかは分からない。もしかしたら、あの無くなったシャープペンシルかもしれないし、床に落ちていた上履きがそれかもしれない。
原因はさらに分からない。大して目立つことをした覚えはないし、誉められた事も貶された事も数えるほどしかない。僕は平均的小学生だ。
シャープペンシルや上履きを隠されてもそれほど辛くはなかった。探せばすぐに見つかったからだ。机や教科書に落書きをされても辛くはなかった。誰の机にも落書きはあるし、教科書は先生に借りられる。
実際、誰にイジメられているのかも分からず、クラスメートとは普通に付き合っていた。イジメられているという実感が薄かった。
しかし親に知られた。教科書を見たのだ。早速、教師に連絡をし、教師はHRにそれとなく注意し、僕へのイジメはエスカレートする。悪循環だ。殴る、蹴る、唾を吐きかけられる、脅され金をむしられる。
主犯はクラス一、学年一の秀才。美男子で運動神経抜群、下級生への面倒見もよく、教師連中に大層気に入られている。数種の習いごとをこなしながらも、そつなく友達と付き合える。彼を嫌う者は皆無だ。誰もが彼と仲良くなりたがる。非の打ち所の無い人間だ。格闘技も習っているのだろう、一撃は重く、的確に急所を突く。一度など気を失った。失神する直前の彼の言葉が嫌に耳に残っている。
飽きた。
無視される事がこれほど辛いとは思わなかった。相変わらずイジメは継続されるようだ。誰に話し掛けても返事はなかった。まるで道端の小石に擬態したような気分だ。誰にも影響を与えられない事がこれほど辛いとは思わなかった。まるで無味無臭の空気。僕は存在しないに等しい。
クラスを眺め、僕は思う。
まるで死んだような気分だ。
お題は任されたんですが一応書いた方の特権?なので前回のままで。
eさん、待ってます。 <>
equilibrium<><>06/09/03 09:39 ID:nnouvINeLo<> まいど。出遅れequilibriumです。
『帽子』『瓦』『谷底』
一
私の家は崖の淵に位置していた。崖はストレートに
深い谷底に達していた。庭でボール遊びをしていて、
何度も、ボールを谷底に落としてしまっていたから、
きっと谷底には、何十個もボールが転がっていること
だろう。
弟と私は屋根の瓦の上に寝そべるのが好きだった。
ある夏の日、いつものように瓦に寝そべっていた弟と
私は、ほんの些細な事で口論となった。口論で感情的
になった私は、考えなしに弟を突き飛ばし、それは彼
を瓦の上から谷底へ落下させ命を落とす結果となった。
それから以降、両親は日々泣き暮らし、家庭は上手く
いかなくなった。私は何度も自分もこの谷底に落ちて
死のうと思った。死んで罪を償おうと思ったのか、
この辛い罪悪感から逃れようと思ったのか、本当の
ところは自分でもよく分からない。
しかし谷底を見る度に、また、両親の悲しそうな顔を
見る度に、自分もそこに落ちて消えてしまいたいと
真剣に思った。
何の罪も無い弟を死に至らしめた私が、何故こうして
のうのうと生きながらえているのか、そんな自分が
どうしても許せない。こうして生きていること自体が、
彼の奪われた生への裏切りであるかのように思える。
実際に崖の淵に立ったこともある。だがどうしても、
あと一歩を踏み出す事が出来なかった。死への恐怖、
そして、自分さえも死んだら、両親を更に悲しませる
だろうという思い。
<>
equilibrium<><>06/09/03 09:39 ID:nnouvINeLo<>
二
しかし今日、ついに私は決意した。
これ以上苦しみ続けたくはない。私は最後の一歩を
踏み出した。一瞬身体が軽くなり、光の中に包まれた。
次の瞬間、私は全身打撲の痛みに包まれて、冷たい
谷底に横たわる自分を意識した。酷い激痛だ。
どうやら骨も折れているらしい。
暫くそこでじっとしていると、目線の先に様々なもの
が見えているのに気がついた。沢山のボール。あの頃
の思い出を封印したまま転がっている。
そしてその先に、あの日、瓦の上で弟が最後に被って
いた麦藁帽子があった。
それはあの時以来ひっそりと、ずっとここにあったのだ。
クレマトリアムで焼かれ煙となって消滅したのではない。
それは確かに、ずっとここにあったのだ。もしあのまま
死んでいたら、谷底からずっと私を見守っていてくれた
彼の帽子に、私は永遠に気付かぬままだっただろう。
私はその帽子に手を伸ばし、しっかりとそれを掴んだ。
次のお題は「東京」「ロンドン」「雨」で宜しく。 <>
equilibrium<><>06/09/03 09:53 ID:nnouvINeLo<> 追伸:
第一段落目、「谷底」って語が連続的に
3度も出て来て見苦しいので、以下のように修正します。
書き込みボタン押す前に気付けって(自虐笑)。
私の家は崖の淵に位置していた。崖はストレートに
深い谷底に達していた。庭でボール遊びをしていて、
何度もボールを落としてしまっていたから、きっと
あの谷底には、何十個ものボールが転がっていること
だろう。 <>
equilibrium<><>06/09/03 09:55 ID:nnouvINeLo<> 今度は「ボール」って語が3つも、、、
きりがないので、もう止めた(笑)。 <>
封真<><>06/09/03 14:39 ID:4e8qrf97l4<> 目が覚めると、部屋は薄暗い。外からざわざわとした話し声が聞こえる。おそらく、雨が降っているのだと思う。そういえば確かに肌寒い・・・・・・昨日偶然見た天気予報、気取ったニュースキャスター達は、まだ冬には程遠いというのに、最近は気候がよくおかしくなりますね、一昨日の東京なんて行き交う人達は皆長袖を羽織っていました。温暖化はやはり、確実に悪化しているようですね、などと笑顔で話していた。
枕元においてある時計は、いつからか役に立たない、もう三週間も僕は時計など見ていない。目を覚ますのは時間じゃない、僕が夢に拒絶を現す為だ。
今日の夢はとても楽しかったのに、まだ話は終わっていない。何処かの果てしない浜辺を、僕はたった一人裸足で散歩していた。僕は海が嫌いじゃない。海も、僕を求めていた。
いつかロンドンに旅行に行った時、家族に無理矢理連れて行かれた僕はずっと下をうつむき、長い間気分も冴えずにいた覚えがある。慣れない異国の風景に見入る事もなく、今思えば随分もったいない事をしたと思う。ただ港を見た時、さほど綺麗ではなくとも気分を取り直し、やっと旅行を少しはエンジョイしようという気分になれたのだ。そのあとはアメリカに行ったのだけど、壮大な土地に驚かされた。イギリスの人も日本の人も、まさかあんなに海までが遠いなんて思わないだろうな。
一ヶ月前、医者に鬱病依存者だと告げられた。まだ重度には至ってはいないが、軽視は出来ない、これから徐々にエスカレートしていく可能性は大いにありうるので、処方箋を求めなさい。あなたのお宅のすぐ近くにある病院の住所を載せておきます、ここに定期的にカウンセリングとして、通うと良いでしょう。
薬は必要ない、と僕は言った。薬に頼る気はない、断固拒否するよ。でも、相談は受けさせて欲しい。何しろ僕には話し相手が居なかった。友達とは、誰とも好みがあわず、どいつも思考が甘いんだ。
「君はどうしてそうも、否定的なんだ」
ある友人は言う。だけど、僕が説明してきた事柄、君のその対応の一挙一動を撮ってみても、彼が適切な答えを返していたとは思えないよ。君は知らなかっただろ、なのにわかるように肯いてさ、結局何を話しているかも理解していなかったんだね。
僕が否定的なのは、僕が否定的だからじゃない。今の世の中が、否定すべき事で溢れかえっているんだ。君は幸福な家でぬくぬくと育ち、とりあえず自分の生活にゆとりがあれば笑っていられる。そんな君を、僕は羨めない。これも否定的?いや違う。
貧しきものは幸いなり、ことわざは唯一真理を語っている。独りで過ごしているからこそ、見えてくるものも多い。権力やお金で物事を操ると、現われるのは欲望だけ、僕はそれを嫌悪してやまない。
僕は服を着替える、そして鏡に数字を書き記す。薄暗い中で、鏡の中の僕はせせら笑っている。ふっと表情を戻したかと思うと、差し伸べた手を急いでひっこめるんだ。一昨日は数字を消してしまったから。
部屋をざっと見渡した。生活感のない、殺風景な個室。だけどやりたい事は沢山あった。・・・夢ばかり膨らませすぎてしまったのは・・・・・・・・・まぁ、僕も甘いね。
ここは僕が買い取った部屋だから、当然誰の迷惑にもならない。新しい場所へ引っ越しても、ここが憩いの場である事は変わらない。ただ一つ、僕は両親に言いたかった。言葉を覚えといてくれよ、って。
僕は世界を変えたいと思った。不幸の人々、哀れな若者達、苦しまされた・・・多くの生き物達。母さん、僕は楽しんでいた事なんかないよ。本当に辛かったんだ、いつでも、いつでも。でも、結局はエゴの塊みたいなやつだったのかもしれない。
そして再びベットへ戻る。予定通りに、僕は一分後に首を通す。ロウソクの火のように、僕はどこかへ消え去る。涙を流せたのは、とても嬉しかった。
<>
封真<><>06/09/03 14:42 ID:4e8qrf97l4<> 読み返しても居ない適当さですが勘弁を(汗)
次のお題は「青年」「希望」「猫」 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/03 19:16 ID:SlxHBbXO1A<> 「青年」「希望」「猫」
青年にとって、暮らすというのは希望通りにならなかった。
例えるなら猫、気紛れな猫の性質というのでしょうか。
人を必要とすれば女を思わせる最高の甘え方を見せるが、
不要なら顔すら見せることが無いのだ。
だから、少し距離をおいて付き合うのが利口なのです。
青年は巧みに甘える女に愛想を振りながら、
彼の好みのプラトニックラブには難しいと感じた。
寝室のドアを重たく感じる青年であった。
次は「赤とんぼ」「キー」「香料」でお願いします。
<>
Kelp<><>06/09/04 18:08 ID:R8O1fTmsFK<> 玉鬘 06/09/04(Mon) 17:59
『赤とんぼ』『キー』『香料』
ここに来て初めての秋が訪れた。
私は、座卓の前に座る娘の横顔を見つめる。一年前と比べたら目覚ましい程の変化だ。年中青白かった彼女の血色は暖かみを得た。
彼女は剥いた梨に爪楊枝を刺し、夕日に染まる秋色をぼうっと眺めている。まだ時折集中を途切らせる事もあるが、確実に丈夫になっている。
赤く熟した山陵からそよと吹く風が部屋に薫る。天然の香料も、あるいは彼女の健康の一助になっているのかもしれない。
夕焼小焼の赤とんぼ……
彼女が消え入りそうな擦れた声で赤とんぼを歌い始める。庭に目をやると夕明かりの中、三匹の秋茜がすうっと飛んでいる。時折キーを外した彼女の歌声に心が安らいだ。
「蝉。鳴かなくなったね」
彼女の唐突な言葉に一瞬戸惑った。既に一ヵ月以上前には鳴き止んでいる。私は時々彼女を心配する。
「そうだね。寂しくなる」
彼女は押し黙り、瞳は秋茜を追っている。皿の上の梨は無くなっていた。
何を考えているのだろう。死、だろうか。一時死の淵に近寄った彼女は敏感になっているのかもしれない。思えば、今年の蝉は彼女と同じ年月を生きていた。
私は両手を伸ばし、彼女の小さな手を包む。彼女の瞳は秋茜を離れ、私の瞳を真っ直ぐに捉える。
玉鬘さんからの投稿です。
多作ですね。負けていられない?(笑) <>
Kelp<><>06/09/04 18:11 ID:R8O1fTmsFK<>
三題話を書いたのですが、三題を書き忘れたので。
『フライパン』『ふっくらと』『不意』
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/05 15:10 ID:SlxHBbXO7.<> 「フライパン」「ふっくらと」「不意」
子供が小さかった頃、子供にある友達がいた。それは、ごく普通のありふれた光景だった。
ただ、元々の父親同士が友達だったことを子供は知らなかった。長年住めばそういうことだってある。
私は彼の顔が人よりは大きく思えて、彼に「フライパン君」の愛称をつけた。もちろん、友人は知らない。
当時の人気テレビにアンパンマンがあったのだ。「可愛いね。」妻との会話にのみに出てくる彼の名前になった。
彼は当時からチック症が出ていて、私は彼の過程環境をちょっと心配もした。だが、彼の優しく大らかな
態度に私達はそれ以上の危惧を感じなかった。頑固な私の子供の扱いも上手で、彼の態度は常に優しかった。
それぞれに道はあり、二人にも道は分かれていた。いつか、疎遠になった二人は遊ばなくなった。
親同士が久し振りに会った夜、久し振りに「フライパン君」に会った。もちろん、愛称は秘密にしてる。
以前に比べて顔がふっくらとしているが、目つきが厳しい。それより、チック症が激しくなっている。
私はそのことに何も触れず、昔の事を話し続けた。
数日後、妻に「フライパン君」に会ったと言った。
「あのね。フライパン君なんだけど、受験に失敗して荒れてるんだって。家庭内暴力。」
「え、そんなに酷いのか?」
妻の不意の話しに動揺した。友人が何も語らずにいたことを私は少し考えてみた。
そうだったんだ。疎遠になったのは父親同士の私達だと気がついたのだ。
次は「駐車違反」「窒素酸化物」「メンテナンス」でお願いします。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/05 15:15 ID:SlxHBbXOCM<> 訂正
私は彼の過程環境を ×
私は彼の家庭環境を ○ <>
理子<><>06/09/05 21:06 ID:1k6.lOFCFs<> 「フライパン」「ふっくらと」「不意」
明かりをつけて、テーブルに鍵を置いた。といっても、テーブルの上は空いた酒缶で埋め尽くされていた。
フライパンだけがここにいるよとコンロの上で鎮座していた。
いらないから置いて行ったのか。ないと困るだろうと最後の優しさを見せたつもりなのか。
オムレツを作るのが上手な女だった。
「卵にサラダ油と牛乳を加えるとふっくらと仕上がるの」
フライパンの柄を叩くようにして卵を丸める腕前は、いつも手品を見ているようだった。もう随分前のことだ。
「こんなに広かったんだ・・・」
家具のほとんどがなくなった部屋を見渡す。
女は出会い系かなんかで知り合った男の元へ行ってしまった。
もっと優しくしてやればよかったと今更ながらに思う。
不意に電話が鳴った。すぐに留守番電話に切り替わり、聞き覚えのある声がした。
「千佳いるの?荷物ついたけど・・・。祐さんどうなってるの?連絡して下さい」
義母の声の後ろで、義父が「代われ、代われ」と言っているのが聞こえて切れた。
足元にはくしゃくしゃに丸めた紙がころがっていた。広げてみた。離婚届だ。判もある。
男じゃなかったということか?
つっ・・・頭を抱えて座り込んだ。昨夜の記憶が戻ってきた。
罵る声、鼻で笑う、鬼、悪魔、フライパン・・・
寝室に入りクローゼットを開ける。ごろんと音をたてて千佳が転がってきた。
般若のような顔。
「あなたとはもう死んでもいや」
確かにそう聞こえた。
<>
理子<><>06/09/06 14:42 ID:1k6.lOFCFs<> 「駐車違反」「窒素酸化物」「メンテナンス」
完成だ・・・
立ち上がり、設計図を少し離れた位置から見てみる。
完璧だ。この車が市場に出ると凄いぞ。
オイルもガソリンも要らないから排気ガスなんてものは出ない。つまり窒素酸化物が出ないから環境にもやさしいというわけだ。電気や電池のように充電する必要もない。メンテナンスといっても車検ぐらいのもの。
これは大発明になるかもしれないぞ。
エネルギーは・・・
おっと、企業秘密だ。今はまだ口に出しては言えない。
コーヒーを口に含む。
「旨い!」
至福の時間だ。
明日は実加に会ってやろうとするか。最近は忙しくて、ろくに相手をしてやれなかったからな。寂しい想いをさせてしまった。
そうだ、これが成功したらプロポーズしよう。新婚旅行は世界一周だ。
「・・し、ひろし起きなさい!遅刻しちゃう」
「ママァ〜」
「あっ、またコーヒー飲んだのね。眠れなくなるからダメって言ったのに。すぐパパの真似をして」
「ごめんなさぁい。あ〜ん」
「ほらほら、お顔洗って。」
「車で送って・・・」
「ダメよ。幼稚園の前に駐めると駐車違反になっちゃうから。ほら実加ちゃんも待ってるよ」
机の上にはクレヨンで描かれた車の絵と、コーヒーカップが朝の光を受けていた。
次は「壊れた時計」「橋」「雲」でよろしくお願いします。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/06 18:48 ID:SlxHBtVBYL<> 「駐車違反」「窒素酸化物」「メンテナンス」
男は車のマフラーの排気ガスをホースにつないで窓から車内に引き込み始めた。
昨日の夜、男は飲酒運転で人を殺めてしまった。取調べを終えたのは夜になっていた。
公務員の男は懲戒免職により解雇される。本当に馬鹿な事をした。悔やんでも遅いのだ。
車は高機能と燃費の良さで欧州の新型のディーゼル車を買ったので、国産の排気ガスとは違った。
手元に酒があった。酒が原因の飲酒運転事故で、また酒を飲んでの自殺かと自分を笑った。
やはり自殺は怖いらしく男は酒を一気に飲んだ。車内にガスや窒素酸化物が充満して意識が消えた。
突然、窓ガラスが割られて、男は路上に引きずり出された。明るい朝の日差しの中に警官が立っていた。
「何をしているの、自殺を計ったようだが?」男は黙っていた。
「この車のメンテナンスは排気ガスを有毒にしないので死ねないの。ちょっぴり苦しいけど。知ってた?」
警官の説明に男は自分の車の無知に愕然とした。
警官は書類に何かを書き込んでいった。
「はい、じゃあ これにサインしてください。」
「で、この金融機関に反則金を振り込んでくださいね。」
「なに?一晩中ここに駐車したでしょう、だから駐車違反でキップ切ったんですよ。法規知らないの?」
警官は男は路上に放置したまま、立ち去った。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/06 18:53 ID:SlxHBtVBYL<> >38 訂正
警官は男は路上に放置したまま、立ち去った。 ×
警官は男を路上に放置したまま、立ち去った。 ○ <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/06 21:03 ID:SlxHBtVBYL<> 「壊れた時計」「橋」「雲」
1945年8月6日
元安橋の上空にきのこ雲が現れて。
本通り商店街に壊れた時計を残す。
母の名を冠したエノラゲイを再生。
再生こそ戦火の幕開けに過ぎない。
憎しみは憎しみを生み恐怖を呼ぶ。
恐怖の連鎖には民は耐えられない。
民の恐怖は新たな火種を生みだす。
その意味では世の中は公平なのだ。
下した事実から下されるのである。
<>
Kelp<><>06/09/10 23:28 ID:nHM7OzcQ5j<> この橋の上でまた会おうと貴方は言った…
来年の今日、それまで命があったなら。と私は答えた。
貴方は此処から遠く離れた都会で消防士をしている。
私はこの静かな田舎町で病気療養中。
私たちの結婚は私の病気が彼の両親に発覚した日から暗礁に乗り上げている。
初めての対面時にあまりにも緊張しすぎた私は発作を起こしたのだ。
私の心臓に欠陥があって私たちは多分、子を持てない…
それを隠しとおす約束が両親に知られてしまったのだった。
一年の間、私は自分の体と命を抱くように静かに規則正しく暮らした。
秋には枯葉を、冬には窓の外の雪を、春には花々が咲き乱れるのを
夏には青い空を行く雲を愛おしみ一年後のその日を迎えた。
一年間、一度の発作も起こらなければ彼の両親も許してくれると言うのだ。
そして私は何事もなく一年を過ごした。
9月11日。
約束の橋の上で彼を待つ。
時間には正確な彼がなかなかやって来ない。「遅くなるよ」の電話すらない…
昼が夕方になり夜になり私は彼を待つのをあきらめた。
家へ帰った私はテレビをつけて彼の来なかった理由を知った。
周り中で大騒ぎになっていた。
ビルの崩壊シーンが何度も映し出される
彼はその時、そのビルに居たと私は確信した。
それから1月後、私の元には彼の形見として最後まで彼がしていた私からのプレゼント…
壊れた時計が送られてきた。
私たちが会う、約束の時間でその時計は止まっていた。
次は「雷」「キャンディ」「熱帯魚」で。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/14 20:07 ID:mo2vTbeo3f<> 「雷」「キャンディ」「熱帯魚」
水族館は子供連れの親には好都合なものと思っている。
夏の炎天下をさほど歩かずに済むし、冷房が程よく館内を冷やしている。
ガラスの向こうに涼しそうな顔で水槽を泳ぐ様は見てて飽きない。
できれば地味な魚では面白くないので、やはり熱帯魚あたりが派手で良い。
だが、奇声をあげて走り回る子供やペロペロキャンディを舐めるのは暑苦しい。
不運にも、そういう子供に遭遇したら、直ぐにその場を退散しよう。
子供に雷を落とすまでも無い、その日は涼しい一日を楽しむべきだ。
でも、決してガラスの向こうの魚なんぞになりたくないね。
次は「ベンチ」「影」「マンション」でお願いします。 <>
Kelp<><>06/09/16 21:03 ID:nHM7OzcQ5j<> 二人が住んだマンションを少し行くと、そこには木製のベンチが無造作においてあった。
何年か君と過ごしたこの街は今ではすっかり変わってしまって思い出は欠片も残っていない。
君が去ってから半年の間、僕は君を待ち続けた。
知っているのは君の名前と誕生日だけ…
朝の散歩の途中でよく見かけた君がいつか僕の部屋に転がり込んだ。
ベンチは二人が好きだった場所だ。
『結婚するのよ』
そう言い残して二度と現われなかった君を今でも時々思い出す。
君はどこに住んでいたのか、何の仕事をしていたのか…
聞き出すことが野暮に思えてわかっているふりをした。
あの頃の僕は若くて、未来を両手いっぱいに抱えていた。
他人の悲しみや苦しみには一切の興味がなくて、君には残酷だったかもしれない。
ベンチは今もそこにあった。
経った年月の分だけそれは古びていて、君ではない誰かが座っていた。
その年配の女性に僕は話しかけた。
『ここにはよく来られるんですか』と。
その女性は僕の顔を見上げると驚きを隠さない。そしてこう言った。
『あなたに良く似た人を、何年も待ち続けて…でもその人ももうお爺ちゃんの筈ね』
『ベンチは私が置いた物なの。ここに座るとたいていの人は帰って来ない…』
その女性がゆっくりと立ち上がる
その時、僕は気付いてしまった。その女性もまた帰れない人だったと言うことに。
その女性には影が無かった。
次は「空っぽのカバン」「月」「足音」で。 <>
T<><>06/09/17 09:19 ID:pFNBI12fS.<> 「空っぽのカバン」「月」「足音」
グロイです♪嫌な人はお題だけ目を通してください。
少年は殺人を犯した。被害者は10歳で同級生のある少女。
理由なんて得に無かった。しいて言うなら、顔が気に入らなかったからだ。少年のタイプではなかったからだ。
だからであろう。少年が石のブロックで、少女の顔面を破壊したのは。完膚なきまでに、粉々に砕いたのは。当然、それが死因となった。
「いや、殺すつもりは無かったんですよ」
そう言って、殺人小学生の恭平は、刑事の石田洋助に弁解した。
二人は、取調室の部屋の中で、机越しに向かい合って座っていた。
「ちょっと顔の形を崩してやろうと思っただけなんです。そしたら…なんていうか、死んじゃったんですね」
サラリとそんなことを言う少年の前で、洋助は宇宙人を見るような顔で
「恭平君、キミ、なんとなくで人を殺していいと思ってるのか?」
と、決まりきった質問をする。
「だってね、刑事さん、あいつの顔、満月みたいにまん丸じゃないですか。(笑」
は?と、洋助はフリーズした。
「だからなんか見てるとついむかついちゃうんですよね〜」
洋助が反応を示さないので、恭平は続けた。
「あいつだってあんな顔でこの先何十年も生きるんじゃ逆に可哀想ってもんですよ。だからさぁ…」
そして恭平は言った。
「アンタは死ねよ」
ブシュゥッ!
洋助の視界から光が消えた。一瞬、訳が解らなくなる。
しかし遅れてやってきた激痛によって理解する。
「ぐっ、目をっ、ナイフなんて何処に…」
既に持ち物を取り上げた、空っぽのカバンを思い出しながら、洋助は言う。
しかし、恭平は答えない。聞こえるのは、足跡だけ。
そしてその足跡は、徐々に刑事のもとへ近づいてくる。
「…つまらない質問しないで下さいよ。ナイフなんてケツにでも挟んどきゃあいい話でしょ?さすが日本だよね。そんなことより…」
恭平はナイフを洋助の首にあてた。
「あなた死体を見みたんですよねぇ?」
洋助はその質問の真意が解らなかったが、
「写真だけならな。それがどうした!」
そう答えた。そう答えて、そして叫んだ。
「あ亜アあぁあァ嗚嗚呼あああ亞ァああああ!!!」
ギリッ…恭平は、耳の根元をむしる様に、手とナイフを使って回転させた。
「アンタやっぱダメだ。ダメダメだぁ。アンタみたいなのは、死んだほうがいい」
ボキボキ軟骨が砕ける音、ギュリギュリ肉が裂ける音が、さすがに耳元でよく聞こえる。
「すみませんねぇ。安モンのナイフなんで、うまく切れないんですよ…ねッ!」
ブチッ!!
「ぎゃ嗚アああアあァ亜あィああ亜ぁあァあ!!!」
「ふゥ。やっと取れた♪五月蝿いからこれ咥えててね。」
もぎ取った洋助の耳を口に詰め込んで、恭平はかつて耳だった位置で
囁いた。
「死んだのはアンタの娘。石田真理子さんだよ」
洋助は、反応できなかった。
「あれぇ?聞こえなかったのかな?こんなに聞きやすくしてあげたのに。じゃあもっとよくしてあげる♪」
そう言うと恭平は、洋助の血にまみれた耳の内部を、伸びた爪を立てて、ジュリ…と、えぐるように穿りだした。洋助は悲鳴を上げた。
「ねぇ、刑事さん、ちゃんと聞いてください。何で僕が真理子さんを殺したと思います?顔が月に似ているからって、はは。そんな理由で、人を殺す訳なんてないじゃないですか。そんな理由で人は殺しちゃいけないんですよ?じゃあ僕は何で真理子さんを殺したんですか?それは簡単です。そんなのは簡単です。頼まれたからですよ。父の、アンタの顔に似ているこの顔を潰してくださいってね。真理子さんに、頼まれたからですよ。いいですか、刑事さん、子供はねぇ、自分の所有物じゃないんですよ。奴隷じゃないんですよ。無理やりセックスさせる生き物でもねぇんだよ!」
ザクリ。
最後に恭平は、洋助の頭をナイフで突き刺し、部屋を出た。
粉々にはしなかった。それは、きっと真理子が悲しむと思ったからだ。
「スッキリしないけど、死んでまで同じなんじゃ可哀想だもんな。」
そして恭平は、没収されていたもう一本のナイフを手に取り、今度は自分の胸にあてた。
まさか行き当たりばったりでこんなエグイものになるとは。すみません。
次は「夕日」「アルバム」「死神」でお願いします。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/17 14:19 ID:mo2vTbeo..<> 「空っぽのカバン」「月」「足音」
夜更けの安アパートの廊下を足音も忍ばせて。
腐った木の床が叫ばないようにしよう。
自分の部屋に入る。
何も置いていない四畳半はとても広い。
月の灯りが畳の上に窓の形を映してキレイ。
その窓に空っぽのカバンをポンと放り出す。
仰向けになって、今日頑張った自分を誉めたんだ。
金が出来れば家に帰ろう。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/09/17 14:28 ID:mo2vTbeoBp<> 「夕日」「アルバム」「死神」
幾つものアルバムに目を通していた。
古い背表紙のものは全てがボロボロだ。
そのほとんどに男の記憶は無い。
夕日がテーブルのアルバムを赤く照らし、
死神の無表情な横顔を照らす。
何も語らず。
次は「看板」「酒屋」「先輩」でお願いします。 <>
Kelp<><>06/09/24 22:43 ID:t3NNe2swcH<> 疲れ果てて、いつもと違う道を家へと急ぐ。
仕事にストレスを感じた時にはこうして時々迷子になろうとするのだ。
初めて歩く道なのに何故か懐かしい風景。
学生時代、先輩に連れられて行った怪しげな露地の奥…
その道はそこの景色と類似している。
夕闇の紫の空の下、黒い地に黄色の文字の看板、その明かりに飛び込む虫のように僕はその店に幾度も通った。
そこは母と同じくらいの歳の女性が居る店で、僕はその人の身の上話を聴くのが好きだった。
『若い時にね、とてもわがままな子猫を飼っていて』
『その子猫を置き去りにしてしまった…』
その人の言う『子猫』が本当の猫じゃなかったことぐらいその頃の僕にもわかっていた。笑うと右頬にえくぼの出る可愛らしい人だった。
確かこの先の角を曲がるとその店があったはず。。
胸を高鳴らせながら角を曲がると、あった。あの看板だ。
ところが
意に反してそこはただの酒屋だった。
初老の、もう可愛いとは言えない女の人がシャッターを下ろしている。
僕を見てニッコリ笑った。その頬にはえくぼがあった…!
それが右か左だったか僕は知りたくなかった。
迷子になるのはこれが最後だな。となぜか足取りは妻の待つ家へと急いだ。
次は「すすき」「飛行機雲」「さんま」で。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/10/15 01:25 ID:2wkeBzwPYF<> 「すすき」「飛行機雲」「さんま」
県道から横道に入り、薄暗くて細い杉の木立を通り抜ける。
標識から何処に向かうか、それくらい分かるだろうというのか。
床を両足で踏ん張り、背中を座席のシートに押し付ける。
これから、相当な強さで体が振られる覚悟をしなければならない。
夕暮れの山道を車が駆け下りる。
前に走る車に追いついてしまい、しかたなく速度を落とし始めた。
彼は煙草に火を点けた。
全開にした窓から山の冷たい夕暮れの風がぶつかっていた。
助手席の窓からはすすきが見えている。薄暗いと汚く見えるんだ。
五月までは私も煙草を吸っていた。今は煙草の煙など吸いたくない。
何もかも変わったんだ。しかし、変わらなかったのは君だけだった。
両脇は山に囲まれたまま下りてゆく、僅かに青い空が細く続く。
飛行機雲? そんなものあるかい。
例え見えたとしても、もう会話などにしないだろう。
業務上必要最小限度な会話だけだ。
時間的に差は、ないみたいだね
あぁ、変わらん
山道を選ぶ理由が問題なのだ。それこそ、間違いなく君の答えなのだ。
別の道を選んだとしても時間的にそれほどの差は見つけられない。
そう、迂回路の緩やかな道路をゆったり走ってもだ。
同乗者に負担を掛け続けることなど、君にはどうでもいいことなのだ。
それが、君の答えだ。
誰かに質問をされた事がないのだろう。
抜け出したまっすぐ先は県道と合流していた。
右左折を何度も何度も繰り返して、見慣れた場所を確認した。
直線的な西日は風景を逆光で貫きながらテクスチャーを見せる。
半透明な白い煙があちこちから見える。ここは田舎なのだ。
何処の家もさんまを焼いている訳じゃないだろうに。
相変わらず何本目かの煙草に火に点けている。激しく咳き込みながら。
もう、止めたら
「人を変えることなど、出来はしない。
だけど、自分自身を変えることはできるんだ。」
そして、君は何も変えずに立ち去った。君の答えに反論はしない。
<>
♪亜譜里織♪<><>06/11/07 20:14 ID:yPJNkSTlcg<> 「すすき」「飛行機雲」「さんま」
走れや走れ 旋(つむじ)のように
走れや走れ 街を駆け抜けろ
塀も飛び越えろ 屋根も飛び越えろ
走れや走れ 風をつん裂け
走れや走れ 野原を突き抜けろ
すすきが顔を叩いても 目を閉じるなよ
走れや走れ 目にもとまらず
走れや走れ 音も立てずに
飛行機雲に追い抜かれるなよ
走れや走れ 息が切れても
銜えたさんまは 落とすなよ
サザエさんに 追いつかれるぞ
次のお題は「赤とんぼ」「柿」「紅葉」の赤尽くしでどうぞ。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/11/12 19:57 ID:SDmFPPFQph<> 「赤とんぼ」「柿」「紅葉」
赤とんぼに囲まれた頃
山の紅葉も見えていた
機械音の聞こえる頃
秋の気配を暗さで気付く
おすそ分けの熟した柿
我家の食卓に変らずにある
殺風景な田んぼ
懐かしくて、ならない
次は「酒」「B2」「ライト」でお願いします。
<>
Kelp<><>06/11/12 23:57 ID:JQnwKs41c0<> 長い冷却期間を置いて、別れようと決めた彼女と会う約束をした。
約束の場所はホテル最上階、夜景の見えるバー。
彼女は先に来ていて僕が近づくと軽くグラスを上げた。
いつものフローズン・マルゲリータ。
ダウンライトの明かりにキラリと輝く。
お酒を飲むといつも饒舌になる彼女も今夜だけは静かに僕の話を聞いている。
「君とこれ以上は続けられないよ…」最後の言葉に君は頷く、微笑みながら。
罵倒する言葉も涙も無いことに僕は何故か傷つく。
「送るよ。」
先を歩く君にそう言うと君は首を振ってこう答えた。
「この後、約束があるの…あなたと違って私を自分の世界にちゃんと連れて行ってくれる人と。」
彼女はその後、小さなビルのB2にある、およそ彼女には似合わない居酒屋に消えた。
別れの本当の理由はお金が続かなかったからだ。
君の世界に近づこうと無理に無理を重ねてしまった。
そんな僕が真実を晒すのを君はどこかで待っていたのかも知れない。
別れを切り出した筈の僕はなくしたものの大きさに、振られた男みたいに肩をガックリと落とした。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/11/24 21:17 ID:jXtrWrPXl8<> 「酒」「B2」「ライト」
酒を水のように飲む頃もあって、その後は酒に飲まれる事が無かったり、
馬鹿をする時代があって、その後は案外とまっとうな生き方をしてたりする。
身の不幸を「運が無い」と耳にするが、ご立派な身分でいらっしゃる。
人生は山在り、谷在りですよ。良い事も悪い事もあるんです。
地上の50階や100階に上がることもあれば、B2まで下りることもあるはず。
自分の都合の良い解釈はお止めなさい。みっともない。
スポットライトは貴方の為にあるんじゃありませんよ。
だから、非を認めなさい。彼は裏切ったんじゃない。君に裏切られたんだ。
君は知っていながら、彼に命じたはずだ。その時に君の裏切りを彼は確信したんだよ。
君は彼にそう仕向けたんだ。「運が無い」のではなく、君が不運を招いたんだよ。
残念だ。
次は「ダウンタウン」「土曜日」「コーヒー」でお願いします。
<>
好誠<><>06/11/25 22:58 ID:EXhmTNmlc1<> 「酒」「B2」「ライト」(遅れ)
男は喫茶店で小さなノートにさらさらと何か書いていた。こうしていることが彼の学生時代からの
ちょっとした愉しみの1つだった。アベールという比較的大きな喫茶店で、様々な人種が行き交う
(例えば空港のような)こういったスペースにいると、自分の中の余白あるいはそれ以外のもの、
を、自然と素直に受け入れられるような気がした。
ノートは大きくても両手に収まるくらいのやや小さめのものが好ましいのは既に述べた通りだが、
ボールペンではなく鉛筆でもなくシャーペンを使うのも彼が心掛けていたことで、それも種類は製
図用の筆記時に線や文字が見やすいもの、芯は0.5のHBとまで決まっていたのだったが、この日は
訳あって少し濃いめのB2を使用していた。また、下敷きを使わないということも彼の以前からの流
儀だったが、社会に出てみると「下敷き」なんてものはほとんど存在していないも同じで、特に気
にする必要はなくなった。それを彼は少し淋しいと思った。
5時頃になると店内の明かりがふっと一段階暗くなり、すこし長居してしまったな、という気持ち
と、いい感じに時間を潰せたな、という気持ちが交錯する。ここで店を出るのが男にとって最もよ
くある行動パターンだ。さて今日はどうしようか、むろんいつも鬼のように筆記してるわけではな
く、持ち込んだ数冊の文庫をぱらぱらと読んだり、携帯を眺めたり、アイスコーヒーだって飲む。
コーヒーは残り3センチぐらいで、飲もうとすれば飲めるし、まだ居ようとするなら放っておくこ
ともできる。学生時代は、よく授業中にノートの端にいろいろ書いたものだ。恋愛や、正義や、自
由、虚無、なんてことに対する自分なりの考え、行く宛のない思想、詩、あるいは消しゴム、前の
席の人のパイプ椅子の素描、空想上の植物、幾何学模様。とても小さな字で、なんてことない内容
だったけれど、あの頃に書いたものが、今自分の血となり肉となっている、そう感じられるのだっ
た。幾分水っぽくなったコーヒーのグラスをカラカラと揺らす、と、天井の明かりが乱反射して、
茶褐色の水面(コーヒー面)に吸い込むような光の輪がてらてらと離れては繋がり、またひとつ
になる。それをストローですいっと飲み干して、彼は店を出た。
路上に出るとなんか肩の辺
りが双曲線を描いてクラウチングされるような気になる。みんなすっかんぴんで武装しているのだ
、あるいは武装しているのにすっかんぴん。男は少しフィルターを抜いて、一歩ずつ確かめる風に
街を歩く。ドラッグストアコンビニTSUTAYA雑貨屋イルミネーション100円ショップ銀行下着屋花屋
本屋ハンバーガーモスバーガーファミレス。否応なしに斬られていく、彼のすっかんぴんな肉体も。
けれどもう彼はそれを厭いはしない、ただ悠然と、チャコールフィルターの煙草を吸って、ひとつ
ひとつの気配を感じてる。流されない限り、どこまででも昇華することができる。今は無理でも。
そのときは無理でも。一人だけ白い息を吐く、キャミソールを着た美しい女がいる、だぼだぼのズ
ボンを履いたガラの悪い男がいる、香水の強烈なばあさんがいる、やせ細ったサラリーマン、ダン
ボールを運ぶホームレスがいる。昇華の氷雪で胸が締めつけられるのを感じて、彼は思わずニヤッ
と笑ってしまう。そうこなくっちゃ。自分の周りを歩く、すべての人たちに彼は、等しく親愛の情
を禁じ得ない。人間は混ざり合うと酷く退屈で残忍で下品なくだらない「集団」なのに、個々の人
格は何故こんなにも素晴らしく夜空の星のようにそれぞれが輝いているのだろう。
なんてことをぐだりぐだり考えながらたこ焼きを食べていると、友人の知也に出くわした。知也は
いつものようないやらしい笑みですぐに冗談を言った、それが彼には水を差したように(たこ焼き
を一個、取られこそしたが)好ましく思えた。なんでも貴史がミリオンゴットでミリオネアだから
飯を奢ってくれるのだそうだ。圭介やら和美やらを誘って魚民あたりで一暴れする心算らしい。
もうずいぶん日は暮れてきている。考える間もなく、男は「行こう」と答えた。私達は人間の魂に
ついて考えなければならない、それによってー
奢りならば行こう、どこまででも。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/12/02 20:18 ID:Ske2L9KLxd<> 「酒」「B2」「ライト」
「ここがそうです。」案内された目の前にトイレとも思えるドアが並んでいて、公衆便所じゃないかと思えた。
エレベーターを降りて、階段をあがって屋上にあるなら、ペントハウスじゃないかと思った俺は馬鹿だった。
ペントハウス=マルの「レフト・アローン」どころか、ジャッキーのサックスが耳元で頼りなく燻った。
ドアを開けると狭くて窮屈な寝床が見えた。間口1.3m奥行き2.55mの場所に錆びたベットが置かれてある。
案内した男は「ここが君の部屋さ、お好きにどうぞ。」と言って、さっさと何処かに消えてしまった。
中に入って、座ってみればさらに狭く、トイレではないのは確かだった。しかし、夏とはいえ男の体臭が鼻につく。
気になっているのは左の4枚の戸板。そっと開けてみると不細工な男が寝ていた。最悪な事に目が合った。
男は俺をじろっと見ながら「なんだ?新人かよ、用が無いならさっさと閉めろや。」と不機嫌そうに言った。
戸板の間仕切り越しに鰻の寝床に男達が寝るのだ。ま、カーテンの間仕切りよりはマシなんだろう。
俺は男達の体臭に吐きそうだった。今日からここの住人になるのだ。俺の心臓は不整脈になった。
B1の事務所はコダックの本なんかがズラリと並んでいる。立ち入りは許可されているが、俺以外に本を読む奴はいなかった。
B2の暗室は誰もが自由に使えるのだが、モノクロフィルムを扱う暗室なんかには誰も入ってこなかった。
ペントハウスは酒の匂いもしている。月1万ちょっとでどうして手に入れるのか不思議だった。
得体の知れない男達と仲間になるには勇気が必要だった。だから、俺は酒は飲まなかった。
しかし、心配はすぐに無駄になった。得体の知れない奴等と同類になるのに時間は要らなかった。
同じ道を選ぶのだから、話が合わないはずはないのだから。
白く塗られた壁の隅々までシャッター音が鳴り響く。「お疲れさま」と仕事を終える。
眠い目を擦りながら白いペンキを塗っていると、自分の足まで塗りたくった事を思い出す。
何も知らずにこの世界に入った俺はスクープライトを最初に教えてもらった。今も鮮明に覚えている。
未来に何も見えなかった頃だ。 <>
花木ユウ<><>06/12/03 12:58 ID:/kIb0MtWrR<> 楽しそうなスレですね。
「ダウンタウン」「土曜日」「コーヒー」
土曜日の喫茶店。窓の外は相変わらず賑やかなダウンタウン。カップルだとか女子大生だとかが煉瓦造りの函館の街を抜けていく。
「ごめん、待った?」
「いや、たった今来たところだよ」
…嘘。俺は既に1時間17分も待たされていた。
「良かった〜。ごめんね、遅くなって。」
彼女…由紀子はコートを椅子に掛けると、いつもの笑顔を向ける。…瞬間、怒る気も無くす。
「何飲んでるの?」
「…ココアだけど。」
「じゃ、私アメリカン・コーヒー!」
「…自分で頼めよ。」
と言いながら、結局俺がウエイトレスを呼んで自分の苺パフェと一緒に彼女のコーヒーを注文してやる。
「あ、コーヒーは彼女に。」
運んで来たウエイトレスは一瞬不思議そうな顔をしてから微笑むと俺の前に苺パフェを置いた。
「…なんだよ。」
見れば、由紀子もくすくすと笑っている。
「だって、見るからに『俺はブラック・コーヒーだ』って顔してる男が、注文はミルク・ココアと苺パフェなんだもん」
「るせぇ、悪いか!」
「ふふふ…」
一喝して多少照れながらココアに口をつけると由紀子も笑ってコーヒーをすすった。
黄昏の港町にはクリスマスのイルミネーションが灯り始めている。
「クリスマス、どこか出かけましょうよ?コンサートがいい?オペラ?…夜ご飯は港の見えるイタリアンで。ね?ちょっと聞いてる?」
優しい明かりに溶かされた由紀子の笑顔を眺めていた俺はハッと気付く。
「え、ああ、…何でもいいけど」
「良くないわ!もう、ちゃんと聞いておいてよね!」
わかったわかった…真剣になる由紀子をつい可愛いと思えてしまう俺はやはり今年も最後までこの調子なのだろうか。
笑いながら由紀子のコーヒーを無断で一口すすって、あまりの苦さに・・・むせてしまった。
次のお題→『紅薔薇』『ピアノ』『愛の狂気』
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/12/04 21:16 ID:Ske2L9KL19<> 紅薔薇 ピアノ 愛の狂気
土色の顔が彼に僅かな命しかない事を物語っていた。
息子はその父が死ねば、自分が後追い自殺をすると言う。
その、下手な芝居に付き合わなければならない。
愛の狂気を演じる息子の声が更にトーンを上げた。
「君の気持ちが痛いほど知っているつもりだ。だが、
癌の進行は君の父上を乗っ取ってしまったんだよ。」
息子の大粒の涙がこのシーンを大きく飾ることになる。
その彼のクライマックスは荘厳なピアノ曲によって奏でられた。
息子は・・ 実行に移すチャンスを失った様に振舞ったのだ。
枕元で日本酒を抱えて、朝を迎えた時。
彼の右唇下に小さな紅薔薇を確認した。
冷たい12月の朝だった。
<>
Kelp<><>06/12/05 10:21 ID:ASxEHiL.dW<> いつも君と待ち合わせるレストランでは今夜も彼女がピアノを弾いている。
白いピアノの上には黒に近い色の紅薔薇…
そこだけにライトが当たってピアノを棺のように感じさせる。
遅れてくる君を待つ時間、一人でそのピアニストを見つめる機会が何度もあった。
その女性の弾く曲はビートルズだったりスマップだったり戦場のメリークリスマスだったりした。
「彼女は今夜で終わりなんですよ」と、食前酒を持ってきた黒服が僕に囁く。
「何故?」と問うと遠くへ行くのだという。
君はまだ来ない。
もう約束の時間を1時間も過ぎている。
ピアノの前に大きな花束が置かれる…多分これが彼女の最後の演奏なのだろう。
初めて聴く彼女の本気の演奏。曲名はパッション。
その長い曲が終わるまでに君が来なければ僕も去ろう。彼女の演奏に惹きこまれながら僕はようやく心を決めた。
ピアニストは愛の狂気を、女の情念をその曲に込めてたっぷりと奏で最後の指をキーに置いた。
立ち上がると誰もが拍手をした。
ピアニストはピアノの上から紅い1本の薔薇だけをスッと摘んでお辞儀をする。
階段を2段上がりそのピアニストは僕の方へやってきた。
「彼女、来たわよ。」そう言って薔薇の花を僕のテーブルに置く。
遅れてやって来た彼女はピアニストと交差するように僕の目の前に立つ。
「遅くなって……あの女性、知り合いなの?」
悪びれないその顔に、嫉妬。と書いてあった。
次は「凍る」「イルミネーション」「橋」で。 <>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/12/05 20:09 ID:Ske2L9KLGl<> 「凍る」「イルミネーション」「橋」
師走の繁華街の夜は凍るように冷たい。
僕はこの橋であの娘の出てくるのを待ってる。
馴染みのうどん屋の爺さんは早く所帯を持てというが、
そんなこと一人では決める事も出来ないさ。
だって、僕の気持ちを知っていながら、はぐらかすんだ。
それが何回もだと、結構辛いよ。
あ、来た。
「待った?」「いつもと同じさ。」「それは、どうも。」
「ねぇ 私、店を辞めちゃった。」
「え、どうして。何か理由があるの?」
「ねぇ 私を拾ってくれるかな?」
「・・・。いいよ、君を拾ってあげる。」
「そう、ありがと。」
あの娘は小さな胸を僕に預けてくる。
僕はどうしていいか判らず、おでこをぶっつけた。
小さく君は笑ったね。
見上げても繁華街の夜空に星は見えないけれど、
僕の瞳の中でイルミネーションの星が輝いていた。
<>
花木ユウ<><>06/12/08 19:49 ID:MbNNcQBlsh<> 「イルミネーション」「凍る」「橋」
…ガチャ…
「…はい、もしもし。」
「もしもし…祐子か?」
「お父さん?どうしたの。」
「なんだ、父が娘に電話したぐらいでそんなに驚かんでもいかっぺ。」
「いや、そうじゃないけど…ちょっと驚いたわ。」
「冬期休暇はこっち帰ってこねえのけ。」
「年内は忙しいからムリ。でもお正月に帰る。」
「そうか…祐子もそんな年になったのさなぁ…」
「……え?なに?」
「どうせあれだろ、クリスマスなんか、なんとか橋の上でヨコハマのイルミネーションを見ながらいい男と過ごすんだろ?ちゃんとお父さんにも紹介しなぁいかんべ。」
「やだ、そんなわけないでしょ。まだ…いないわよ、そんな人。しかもなんとか橋って、ベイ・ブリッジのこと?」
「なぁんだ、素直じゃないのはかわいくねえど…おうおう、それだそれ。“ヨコハマ、ブルーライトヨコハマ〜♪”…っと」
「…………。」
「なんだ、黙って」
「…あのね、お父さん。そもそもベイ・ブリッジは車が渡る橋よ。」
「細けえこと気にする女だなぁ。んなんじゃ嫁の貰い手なかっぺ?」
「大きなお世話よ。…そっちは?風邪ひいてない?お母さんも元気?」
「こっちは寒くて昨日は裏の池さ凍っちまったんだ。ばぁちゃんは元気だよ。代わるか?」
「あーっ、いい、いい。話長くなりそうだから。じゃあ、多分新年明けたら帰るから。」
「ん。ばぁちゃんに頼んでお節と餅さ用意しといてもらうかんな。」
「あ、全然気にしないで…じゃあ、栗きんとんがいい。」
「なんだ、相変わらず食い意地張った娘だな。」
「……うふふ、お父さん譲りよ。じゃあ、お母さんによろしく。」
「あったかくしとけ。風邪ひくなよ。」
「わかったわ」
「ベイなんとか橋から海に落ちんじゃねぇぞ。凍るかんな。」
「わかった、わかった」
「早く男つれてこいな。」
「…わかったわよ。それじゃ。お父さんも元気で。また近くなったら電話するから。」
「おう。それじゃあな。」
「…………」
「…………」
「……なによ、お父さんから切って頂戴。」
「わかった。それじゃ。」
「…………」
「……切るぞ?」
「はいはい。」
「…………」
「…………」
「……切るからな?泣くなよ?」
「泣かないわよ。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
…ガシャン…
<>
理子<>3OptlDHXuiR<>06/12/12 23:17 ID:flyXFHLgeX<> 「凍る」「イルミネーション」「橋」
渡月橋
恋人と渡れば必ず別れると云われている
夜にはライトアップされて
浮かび上がる幽玄な姿に魅了され、恋人達は何も知らず渡っていく
凍りつくような空気に吐く息が白い
それでもあなたのポケットは温かかった
ずっと一緒にいられると信じて疑わなかったあの頃
クリスマスソング
街のイルミネーション
去年は手を繋いでここを歩いたね
手が凍るように冷たい
立ち止まり、振り返る
最後の夜
コートのポケットに、片方のピアスを落とした
返すわね
憎んでもいいから忘れないで
次は「雪」「ピアス」「飛び立つ」
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>06/12/23 21:52 ID:mo2vTbeoSt<> 「雪」「ピアス」「飛び立つ」
「ピアスなんて大嫌いだ。」と心に呟く。
男:なかなか見つからないなぁ。
女:ゴメン、何処にあるんだろう。
男:「何処にあるんだろう」って、君が落としたの。
女:ゴメン、ゴメン、でもさぁ、あれは高かったんだよ。
「そんな高いもの着けて来るなよ。」と心に呟く。
男:この広い雪の何処に落としたか。覚えてない?。
女:何処に落としたかわかるなら、とっくに見つけてるわよ。
男:ハイ、ハイ。その通りですねぇ。もちっと探しますかね。
女:ゴメン、ゴメン。
「今日は別れ話だったんだが・・ 今度にするか。」と心に呟く。
「もう少し、あなたと一緒にいたい。」と心に呟く。
突然何かが飛び立ち、女は雪の中にしゃがみこんだ。
女は左のポケットに隠したピアスを服の上から押えた。
次は「カード」「マイク」「リボン」でお願いします。
<>
Kelp<><>07/01/12 20:37 ID:gzSdHEsvr/<>
今日が彼女の誕生日だと気付いたのは降り始めた雪を会議室の窓から見かけた時だった。
昨年の彼女の誕生日に僕らは出会った。
君は雪の中で誰かを待っていた。
その姿が見えるコーヒーショップの窓から僕は何気なく様子を見ていた。
青いマフラーをリボンに結んだ君の肩に雪が降っては溶けた。
君は時間ばかりが気になる様で、時折駅の方角を振り返ってはため息をついた。
そうして雪の中に、1時間も待っていただろうか…
本を読みながらの長居を時計で確認した僕は店の外へと出た。
「さっきから誰かを待ってるの?」
透明のビニール傘を差しかけながら僕は彼女に尋ねた。
「もう、来ないでしょうけれど…彼を。」
君はそう答えて差し出した傘の中へ入ってきた。頬が凍っている。
「誕生日でした。今日が、私の。」
僕は君がこれ以上濡れないようにそっと肩を寄せた。
彼女は駅前の大きなデパートの受付でインフォメーションの仕事をしていた。
マイクを通したその声は、優しく澄んでいて美しかった。
誕生日を忘れた彼とはその後自然と疎遠になって、時々会うようになっていた僕らはその分親しくなった。
その彼女の誕生日が今日。
勿論、忘れていたわけではない。
けれど昇進した僕は昨年とは違い、本当に忙しかった。
抜けられない会議が長引き、たった1本の電話すらかけられない。
焦っても、時間は意地悪なほど早く過ぎて行く。
君はまたあの時のあの場所で今度は僕を待っているだろう。
植え込みを取り囲む冷たいレンガに1人、座って…
君を待たせて1時間。
走ってて約束の場所へ行った僕はそこに隠すように置かれた1枚のカードを見つけた。
『今年も誕生日に終わっちゃったわ。』
カードにはそう書かれていた。
携帯はもう繋がらなかった。
次は「つかまえる」「幻」「オレンジの屋根」で。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>07/01/13 21:27 ID:l/OBlkjUTj<> 「つかまえる」「幻」「オレンジの屋根」
その人の仕事場はオレンジの屋根なんだ。
二人のペアーでやってるらしい。
ガラス越しにお客さんがやって来るお店。
財布からお金を出して、大きな夢を買うんだ。
「幻になる金だって?買わなきゃ、当たらないよ。」
運が来ますようにって、その人はいつも言うんだ。
「オレンジの屋根」のお話しはとても短かった。
閉じてしまったHPは何も映し出さなくなった。
痕跡は過去に埋もれた掲示板。
自分の書き込みが寂しく残ってる。
つかまえることのできない思い出ばかり。
切ないね。
次は「水」「ガードレール」「凍結」で、お願いします。
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>07/01/24 18:30 ID:2wkeB7sB6n<> 「水」「ガードレール」「凍結」
深夜の帰宅途中だった。五差路を東に真っ直ぐなんだが、冬のこの時間帯が嫌なんだ。
すぐ先の飲み屋街には客待ちのタクシーが二重駐車していて、実にうっとおしい。
ほらほら、やっぱりだ。客の居ない歩道を見つめる停車のタクシーが膨らんで通りづらい。
ここを抜けてしまえば、後はスイスイだ。T字路のひとつ先の信号が赤になった。
ブレーキに足を掛けながら、きまぐれにハンドルを左に切って停車してしまった。
左車線をこのまま走れば、いずれは先で右に入らなければならないのに。
擦れまくったガードレールを見ながら、眠っていたかもしれんと思う。
その時、サイドミラーにタクシーがカーブを描きながら右隣の車に追突した。
「ドーン!」ラジエーターの水は噴水のように上がり、ヘッドライトで照らし出された
水が霧のように辺りを覆った。後方のスタンドの出る所で水が撒かれてあったのを覚えている。
「プロらしくない、道路の凍結で滑ったか。」どちらの運転手も降りてきた。
「関係ない。」私は車を出した。バックミラーに2台の事故車両が置き去りにする。
「偶然にも左にハンドルを切った俺は運が良かったんだ。ラッキー!」
しかし、気のせいか。さっき見たようなドライバーだったような・・・
残された二人の運転手が微笑んだ。
次は「ブラックペッパー」「明太子」「ガソリン」でお願いします。 <>
も も も<><>07/02/09 16:19 ID:rTbS4snUny<> 「ブラックペッパー」「明太子」「ガソリン」
「おい!てめぇふざけてんのか!!」
悟の怒りは収まらない。
「明太子にブラックペッパーかけただけのものを酒の肴にしろってか?ぁあ?」
そして部屋にガソリンまいて火をつけた。
次は「ねこじゃらし」「宇宙戦争」「ローション」でお願いします。 <>
Kelp<><>07/02/10 22:17 ID:Fk0dM1IOb4<>
悪戯好きの僕は今夜、野良猫を相手に罠を仕掛けてみた。
1、まず猫じゃらしで猫をおびき寄せる。
2、映画の「宇宙戦争」よろしく予め地面に埋めた明太子を猫に気付かせて猫がどうするかを見る。
野良猫はいつも何かと手なづけていた親分のクロ。
作戦開始。
大きな図体をしているくせに簡単に猫じゃらしに喰いつく。
明太子を埋めた場所までおびき寄せると…
案の定、地面を掘り返し始めた。
もう彼の頭からじゃれると言う行為は消え去っている。
やっと掘り返した明太子を一度大きくふるって齧り付く。が辛い筈…
ご丁寧にブラックペッパーまでかけてあるのだ。
クロは何度かのチャレンジを試みたが、結局半分だけ引きちぎると僕の方に恨めしそうな顔を向けた。
思った通り…
僕は納得して今夜の作戦を終えた。
それから何日か後。
部屋へ戻ると大きな声が聞こえる。
「どうしてローションの入れ物にガソリンなんか入れておくのよ!」
一緒に住んでいる彼女だ。危うく顔に塗りそうになったらしい。
「あれだけ匂う物だから気付かないとは思わなかった」
それは次の悪戯のネタだった。
「信じられない」そう捨てゼリフをして彼女は出て行った。
それきりあのクロも彼女も僕のところへは近づかなかった。
悪意のない、ただの「悪戯好き」なだけの僕なのにこうして誰もが去っていく。
次は「凍らない」「野菜ジュース」「ホーム」で。
<>
MGENN<>3d8ZSoyfxW.<>07/02/20 15:13 ID:LZMPPCJfEN<> 駅のホームで思い出の野菜ジュースを飲む。
上京する時に、体の弱い俺の為に、妹から貰った野菜ジュース。
優雅とは決して言えないBreakfast≠セが、シティーボーイを自称する俺にしてみれば、何の事は無い。
都会を生きる社会人の嗜みのような物だと、思う。
久しぶりに帰ってきた北海道はやはり寒かった。
たった二年。それだけの年月だというのに、空から音も無く舞い降りる粉雪が至極懐かしく思えた。
電車が来る。田舎へ向けて走る特急もやはり懐かしかった。
勢いで都会に出た時乗った特急だった。
東京での就職はやっぱり失敗した。
温度の無い絶望感が心を支配し、ため息が零れる。
義妹はどうしているだろうか。
義母さんはどうしてるだろうか。
義父さんはどうしてるだろうか。
「迷惑をかけたくない、大丈夫、もう負担かけないからさ」
何て豪語して出て行った俺を、家族は迎え入れてくれるだろうか。
最悪の状況を考えて、背筋を震わす。
電車がトンネルに入る。
耳が詰まって、音がくぐもる。
現実感が消えうせる。
可愛い妹の事を思い出す。今も可愛いままで、純粋なままで居るだろうか。
東京に行くからと、凍らせた感情が今になって凍解してく。
心臓が一際力強く、脈打った。
愛してる。凍らせた感情が再び蘇り、心臓を絞る。
がら空きの車内。力なく椅子に腰掛け、項垂れる。
怖いんだ。妹に否定されるのが。
ただ一人、手を繋いで助けてくれた人間だから。
家族から捨てられた僕≠家族だけが支えてくれた。
ここがお家だと教えてくれた。
感謝してるし、自分の全てを彼らに捧げても良いと思っている。
けれどそれ以上に、彼女、妹を愛しているんだ。
無垢な笑顔が懐かしい。愛しい、可愛らしい。
その笑顔が、二度と見れなくなる。そう思うと、凍らせずには居られなかった。
狂ってしまいそうなんだ。妹の笑顔を見ると、抱きしめたくて、仕方が無くて、でも、それ以上に、怖くて、恐ろしくて、嫌われたくなくて。
お兄ちゃんって呼ぶ声が、何度も何度も心を刺して、大好きだって叫びたくなって。
怖かった。恐ろしかった。
いいや、それは今も同じだ。
これから家族に会いに行く。これから一緒に暮らしてく。
そう思うと、そう思うと、心がさび付いた車輪のように、動かなくなって。
終点、終点。電車が死刑を宣告するように、ブレーキをかけた。
おぼつかない足取りで、駅の改札を抜け、バスに乗る。
家の近くの停留所で降りて、三キロほど歩くと、懐かしい家が見えてきた。
改札は変わりなくぼろぼろで、裕福そうな感じはしないのに、貧乏そうな感じもしなくて。
温かいなんてわからないのに、温かそうに見える。
チャイムに指を乗せる。
指が震えているのが、自分でもわかる。恐ろしいんだ。
ゆっくり、ゆっくりと、チャイムを押して行く。
カチッと小気味良い音がして、中でチャイムの音が鳴った。 <>
MGENN<>7kVNe1rDxNy<>07/02/20 15:13 ID:LZMPPCJfEN<> 漏れ出した音に続けて妹の声が聞こえる。
体が大きく震えた。
逃げ出したくなる。
持った鞄が、大した重さも無いのに重く感じられ、逃げたいのに足は地面にくっ付いた動かない。
叫び出したくなる。けれど、喉は音を発しない。
扉があけられ、そこには変わらぬ妹が居た。
驚いて、呆気にとられたような顔をして、泣きそうな顔になって、取り繕うように満面の笑みを作った。
「お帰りなさい」
声は温かかった。
心配は杞憂だった。
母親は元気で、父親は楽しそうで、皆で酒を飲んで楽しんだ。
母さんは相変わらず酒に弱くて、妹はそれを受け継いでいて、二人が酔いつぶれた頃に、父親は嬉し涙を流した。
「良かったよ。元気で。こっちで暮らすんだろ? 良かったよ。本当に。良かった」
鼻水をすすって、涙を袖で拭って、そして真剣な顔をして問いかけた。
「彼女は、向こうで出来たのか?」
俺は苦笑して、いいやっと首を振った。
そうか、と。それだけ父親は言って、頭をかいた。
暫く酒を飲むだけの時間が来る。
気まずい雰囲気ではなく、そうするのが正解であるような、そんな雰囲気。
そして父親は、言い難そうに。だけどはっきりと、言った。
「アイツは、まだ……彼氏を作って無いんだよ」
父親らしい、優しい瞳で妹を見て、父親は呟いた。
そして、『なんでだと思う?』と楽しそうに問いかけた。
わからないな、と苦笑いをする俺を見て、より優しい瞳を見せて、父親は、懐かしむように、答えを言った。
「お前が、好きだからだよ」
笑えない冗談だった。
まさか、と言って笑ってみるが、父親は真面目な顔をして、座りなおした。
正座をして、面と向き合って、問いかける。
「お前は、アイツが好きか?」
問いかけは、何処か確信めいた物を持っていて、思わず息を呑む。
「いつでも良い。だが早い方が良い。お前から、アイツに、告白してやってはくれないか?」
昨日までの俺なら、何て答えただろうか。
凍らせた感情を抱いたまま、無理だ、と言うだろうか。
良いや、違う。
この感情は、暖かすぎるんだ。
だから氷があっても、雪をかけても、凍らす事なんて不可能なんだ。
妹を見る。雪のように白い肌には、染み一つ無く、東京で見た誰よりも美しかった。
俺は、ふっと微笑んだ。
頬を指で撫でると、柔らかく、弾力のある、肌をしていた。
ゆっくりと、妹は手を動かして、赤ん坊のように指を握った。
兄さん、と呟いて。
「理由が無いよ」
酒を一気に煽って、父と向き合う。
「今度、お茶にでも誘うよ」
安心したような、父の笑みは優しかった。
ポケットに入れてあった、もう一つの野菜ジュース。
これはもう要らない。
だって彼女が、いつだって俺を見ていてくれるんだから。
凍ってしまった、凍らない心が、溶け始める。
All of this home are warm. <>
MGENN<><>07/02/20 15:16 ID:LZMPPCJfEN<> 長々と申し訳ないです^^;
次のお題は「小説」「ハンター」「人間力」
で、お願いします。 <>
equilibrium<><>07/03/07 06:40 ID:J7vbAIGNdc<> 「ねこじゃらし」「宇宙戦争」「ローション」
交渉が決裂し、宇宙戦争勃発がいよいよ確実となってきたことを
ニュースキャスターが淡々と伝えた。僕は猫じゃらしを持つ手を
止めた。
戦争だって? まさか。今まで何十年間も戦争は起こっていな
かったんだ。今回だって何とか上手く回避されるだろうさ。
戦争なんて野蛮なものは、もう21世紀で終わっちまった筈だ。
進化した僕達は、肉だけで思考していた古代人と比較して
そこまで愚かじゃないだろう。
突然遊びを放棄されたキティが不満に満ちて僕の手に噛み付いた。
「いてっ、何するんだ、痛いだろ!」
僕は思わずキティに平手打ちを食らわせた。彼女は怯えて身を
縮め、恐怖に怯えた目で僕を見据えた。
何てこった、そんな積りじゃなかったのに、、。
あんな小さな生き物を叩いてしまうなんて僕はどうかしている。
「ごめん、キティ。謝るから、こっちにおいで」
僕の手を拒否して彼女は勢いよく棚に飛び乗った。
棚が揺れ、置いてあったローションが安定を失った。
それは遣り掛けのジグソーパズルの上に落下した。
割れたローションの瓶から液体がはみ出し、パズルも絨毯も
台無しになった。
「何てことしてくれたんだ、キティ!
世界に二つとない国宝物のアンティ−ク絨毯なのに。
あのパズルだって、完成直前だったんだぞ。
このbloody猫、もう許さないからな」
僕の背後でキャスターの悲痛な声が響いた。
「… 開戦 … !」 何だって? 宇宙戦争が、か? まさか。
「… 何てことだ! あいつら本当に、、本当にやりやがった!
Jesus Christ!」 何だ、何をだ!?
あの号泣は本当にニュースキャスターの声なのか?
猫の虹彩が糸のように細くなった。辺り一面眩しく輝く光線に
包まれ、急激に僕の体中の分子が振動し……
<>
いのどん<><>07/03/08 09:58 ID:YbZfrNovyo<> 「小説」「ハンター」「人間力」
○到来のものの饅頭があるんだけど,食べないかい?
●いただきましょー,いただきましょーせっかくですからいただきましょー。 (小説)
○ぼくは甘いものは苦手でね,もっぱら辛党一本槍。
●つまみなら食べるんだろう?
○つまみもほとんどいらない。鼻つまみながらでも,一升飲めちゃうタイプ。
●ぼくはお米が大好きでね,おまんまに日本酒かけて,お米の佃煮といっしょに食べるのが好き♪
○酷い食べ方だ,言語道断。絶対はんたーい! (ハンター)
●ウソだよ,冗談。
○なんだウソか。ウソつくのよくないアルヨ。
●アルヨって,何人だよおまえ。
○インド人。
●インド人だったかとは知らなかった。てっきりインディアンかと思ってた。
○インド人ウソつかない。
●このまえインド旅行して,さんざん騙されぼったくられたんだけど。
○ソレ貧乏ナ人。貧乏人,何トカシテ稼グタメ,時々ウソツク。
●ぼくを騙したインド人,けっこう良い身なりしてたんだけどなあ。
○ソレハキット企業家カ政治家。
●インドでも政治家や企業家は民衆を騙すんだ。
○ソウソウ,ソウアルネ。インド人権力者,デカイウソツク。(人間力その1 ちょっと苦しい)
●日本人権力者もウソツクアルヨ!!
○アレ,何デ アナタマデ ソンナ コトバヅカイスル?
●ワタシモ ジツハ インド人アルヨ。オマエ カレー食ウカ?
○ジャア,ピーマンーカレー食ウヨ。緑ノモノ,体ニイイネ。
●イイ,イイ。デモ,減量中ダカラ,アマリ食ベラレナイネ。
○ヘエ,ナンデ減量シテルノ?
●今度カバティ ノ 試合アル。減量シテ動キ良クスル。
○減量ハ辛イネ。
●耐エ忍ブアルヨ。忍忍。忍,減量苦。 (人間力その2 これもお粗末)
つぎのお題。
「花見」「喧嘩」「番頭さん」 <>
理子<>3OptlDHXuiR<>07/03/12 22:50 ID:SXui3U681E<> 「小説」「ハンター」「人間力」
「ニートよ人間力を高めましょう。・・・講習会の案内?」
は?人間力?
そんなもん、俺には関係ない話だ。
第一俺はニートではない。
小説家だ。
あいつ、こんなもの机に置きやがって・・・
男はくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。
今にみてろ。
あっと驚くものを書いてやる。
大体小説家ってぇのは、どいつもこいつも下積み生活が長いってぇもんだ。
10年や20年経ってから認めてもらえるヤツがいるんだもんな。
俺なんか絶対そのタイプだ。
今の審査員がどうかしてるんだよ。
「おい、金」
「お願いだから・・・」
「よこせ!」
母親を突き飛ばし、バッグから財布を抜き取った。
ネタ探しには金は必要。
そんなこともわからないのか、あいつは。
バカなヤツ。
繁華街はネタには尽きない。
喧噪、闇、暴力・・・
酔い潰れた男が道で寝そべっている。
スーツにネクタイ。
こんな男に人間力があるとでも?バカバカしい!
「どうかしましたか?」
ふんっ!ちようどいいや。
ハンターの目になった男は、ずるずると獲物を引きずって闇に消えた。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/16 03:32 ID:V6Fq8MQA/v<> 「花見」「喧嘩」「番頭さん」
(回ェ回)は、焦っていた。
もう夜の10時をまわって、約束の時間から
2時間も経っている。
待ち合わせ場所の、小料理屋・へちまの閉店時間は11時だ。
(回ェ回)は、ゆっくりと煙草に火をつけ、思い出していた。
3年前のその日、
ダーツ仲間の、番頭さんが、ある発見をしたと、
興奮しながら(回ェ回)に、話しだした。
「こんな画期的な発明は人類史上でも類をみない!
その薬は、飲めば、その薬が変わりに運動をしてくれる。
代謝がよくなるんではない。
薬の成分が、体中で、運動を始めるのだ。つまり、細胞の
一つ一つが暴れ出す。じっとしているだけで、
一錠でフルマラソンと同じ運動量になる。
お好きなように、痩せるなり、筋肉をつけるなり、健康になるなり、
もう何でも、手に入る!」
(回ェ回)は、一瞬、戸惑った。
「そんな、楽をして、手に入れていいのだろうか…
そんな薬が出来てしまえば…全てが変わる…」
以下に続く。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/16 03:32 ID:V6Fq8MQA/v<> しかし、その気持ちも、すぐ吹き飛んだ。
開発が終われば、ざっと、100億は手に入る。
その日から、番頭さんと、(回ェ回)との、合同の研究は
始まった。
まだ理論しか出来てなかったのだ。
悪戦不当の日々が、始まり、はや3年。
花見の季節で、うきうきするこの日。全てが完成する。
(回ェ回)の持つB薬。番頭さんが今日、持って来るA薬を
混ぜれば、完成だ。
しかし、番頭さんは、来なかった。
なんと、喧嘩に巻き込まれて、手がすべり
A薬を道路にぶちまけてしまったのだった。
落胆した(回ェ回)…
ふと、(回ェ回)は、身体の中で暴れて動くようなものだったら、
別にガソリンでもいいのではないか?
何をとち狂った事を!
疲労と絶望の為、判断力が低下したのか、(回ェ回)は、
自分の開発したB薬とガソリンを混ぜてみた。
試験管でブクブクと泡が立ち始めた。
「よし!いいぞ!」
ブクブクブク
ドッカーーーーーン!
その日、地球は消滅した。
しかし、次の日、
薬の持つ、驚異的運動能力で、たった一日で、地球は、
回復して、皆も元気になった。
めでたし、めでたし。
(回ェ回)は、英雄として、語られることになったのである。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/16 03:33 ID:V6Fq8MQA/v<> 次のお題 「狂気」「みずたまり」「掛け時計」 <>
いのどん<><>07/03/16 16:07 ID:YbZfrNovyo<> 「狂気」「みずたまり」「掛け時計」
昔から,男の楽しみの三大スターというと,「飲む」「打つ」「買う」。
ヘロインを買い,コカインを飲み,モルヒネを打つ。
というのではない。
酒を飲む。博打を打つ。女郎を買う。
戦前は遊郭などというたいへん結構な場所があったそうだが,いまは残念ながらない。ではどうするかというと・・・・・・どうしましょうか。
銀座の老舗の時計屋さんの若旦那,真面目の国から真面目を広めてきたような真面目な人で,飲まないし打たないし買わない。商売熱心で,勉強熱心で,時間があるとあれこれ本に没頭している。
あんまり真面目なものだから,親父さんはかえって心配だったりして,ある日,大のお得意である金さんと会話の折りに,ちょっと愚痴などこぼした。うちのは真面目すぎてねえ。商売人なんて,少しは遊びも知らないと・・・。
そしたら金さん,大の遊び人だったようで,自信たっぷりに請け合った。
「遊びならわたしの専門分野だ。よs,ひとつわたしが若旦那をキャバクラにでもお連れいたしましょう」。
「そうかい,そうしてくれるかい。すまないねえ」。
「若旦那! 若旦那!」
「おや,金さん,こんにちは。きょうはどちらへ?」
「ちょっと天使の顔でも拝んでこようかと思って。どうですごいっしょに」。 「天使ってなんなんですか?」
「おや,ご存じない? 天使って,エンジェルですよ。森永のチョコやキャラメルでみたことあるでしょう」
「はあ?」
「わたしはね,毎晩のように天使に会っているんです。もう天使にやみつき。」 「あのう,よく話が見えないんですが。天使がほんとうにいるわけじゃあないんですよね」
「いますよ」
「いますよって・・・」
「百聞は一見にしかず。じゃあ,いまからいっしょに会いに行きましょう」。
金さん,とまどう若旦那を強引にタクシーに乗せると
「とりあえず新宿に向かって」
そこをまっすぐ,そこ右に曲がって,なんてキビキビと指示を出す金さん。着いたところは歌舞伎町。
「ちょっと金さん,ここ,歌舞伎町じゃないですか」
「よくご存じで。そう,歌舞伎町です。天使はすぐそこにいますから」
強引に若旦那の腕を引っ張って,とあるビルに入るとエスカレーターに乗せてしまった。
チーン。
扉が開くと,看板が目に入る。「天使の館」
「ちょっと,金さん,ひどいじゃないですか。ここ,もしかしてクラブか何かでしょう。わたし,クラブになんて行きたくないんですよ。何が天使ですか。ホステスのことでしょう? 嫌です。興味ありません。」
「なに言ってるんですか若旦那。ここはクラブなんかじゃあありませんよ」
「だったら何なんです?」
「キャバクラ」
「キャバクラって,キャバレー・クラブの略称でしょう!!」
「へぇ,そうなんですか。知らなかった。何だ若旦那,お詳しいですね。コノ,コノッ」
「ちょっと,つっつかないでくださいよ。引っ張らないでください。ちょっと,ちょっと・・・」
若旦那の運命やいかに。
あ〜おしい切れ場だ。別に惜しくもないな,こんなツマラナイ話。
<>
いのどん<><>07/03/16 16:07 ID:YbZfrNovyo<> (つづき)
無理矢理キャバクラ「天使の館」に連れ込まれた若旦那。
金さん,天使の館にはちょくちょくくるらしく,しかもいつもずいぶん散在するらしい。下にも置かぬ,という感じの歓迎ぶり。お店自慢のきれいどころが集まってきた。
若旦那の隣には新垣由衣ソックリの天使がご降臨。若旦那も所詮は男,飛び切り可愛い笑顔に一発でコロリ。モジモジしながらもうれしそうです。
「マリでーす」
「ああ,マリさんですか。よろしく。わたくし銀座で時計店を営んでおります柳時三郎ともうします」
「へえー銀座の時計屋さんなんだ。かっこいいー。もしかして社長さん?」
「いいえ,社長は父です」
「じゃあ次期社長だ。若旦那さんだ。すごーい」
「あのう・・・名字はなんておっしゃるんですか?」
「えっ? 名字?」
「わたくし,女性を名前で呼びつけにするの,慣れないもので。話をするにしても,なんてお呼びしてよいやら・・・」
「じゃあ,特別に教えてあ・げ・る。ミズタでーす。ミズタ・マリ」
「善いお名前ですね。あっ,でも本名じゃないんですよね」
「本名だよ。マリは違うけどほとんど本名。ほんとうの名前はマリイ。こう書くの」
「はあ,水田真理衣ですか。真理衣って本名はあんまりいないでしょう?」
「ママがフランス人で,フランスではマリアさまのこと,マリイっていうんだって。そこからつけたみたい。 それより,今度お店に行ってもいい?」
「あー。どうぞどうぞ。どんな時計がご入り用ですか?」
「ブランドものの腕時計とか欲しがると思うでしょ。違うの。部屋に掛け時計が欲しいの。ただの掛け時計じゃなくって,本物のカッコウ時計。」
「カッコウ時計もいろいろ置いてありますよ。是非おいでください。でもなんでカッコウ時計なんですか?」
「それが聞くも涙,語るも涙の話なの。聴いてくれる?」。
いったいどんな話なのでしょう。つづく。
<>
いのどん<><>07/03/16 16:10 ID:YbZfrNovyo<> (つづき)
「姉がいるんだけどさ,もう長いこと入院していてね。地元の病院。あっ,まだ話してないよね。実家は山形なの。姉が入院してるのって,じつは精神病院」
「お姉さん,おいくつなんですか?」
「24。15歳の時に入院したから,もう10年になるのか」
「ずいぶんお悪いんですか? あっ,すみません。お悪いなんて言い方,失礼ですよね・・・」。
「そんな気を遣わなくてもいいよ。姉はね,ちょっと変わった精神病でね」
「どういうふうに変わっているんですか?」
「ダジャレ病なの」
「えっ,ダジャレ病?」
「ふざけているみたいでしょ? でも違うの。けっこう深刻なんだ。自分でいつもダジャレを言っていないと気が済まないの。でもいつもダジャレが思い浮かぶとはかぎらないじゃない? それで,思い浮かばないと,キャーッと大声で叫んで,暴れ出したこともあった。いまじゃぶち切れちゃって,笑いっぱなしだけどね」。
「なんか,お伽噺のような,夢のようなお話ですね」
「若旦那,変わったセンスしてるね。夢のようどころか,悪夢だよ。いまでも忘れられないなあ。姉が入院した日のこと。 最初は調子が良かったんだよ。良かったといってもダジャレの調子のことだけど。《マリイおはよう。開高健の本はオーパよう。マリイのここにあるのはオッパイよう。ようようよう,レモンガス。あそこにいるのはモモンガっす。モモンガ・・・ももがはち切れそうでピーチピチ。ピチニイサンシ,サンニッサンシ。サンシのイラッシャーイ。イラッシャイ木村。みなさんこんばんわ,ラッシャイ木村です。キムラルタル海峡。ジブラルタルでジョン・レノンとオノ・ヨーコが結婚式を挙げたってね。パパはハゲたってね〜ダンチョネ。チョネ・・・チョネ・・・チョネチョネチョ・・・チョ・・・チヨチヨ。ああ思い浮かばない・・・思い浮かばない・・・気が狂いそうだ,おうおうおう・・・ほんうに狂いそうだ・・・キャーッ!! ギャーッ!!!! ギャオーッ!!!! 狂気が今日きたー!!!! ワーッハッハッハ ワーッハッハッハ・・・》」。
「・・・・・・・・・・・・」
「そのまんま入院したの」
「いまどんなご様子なんですか?」
「朝から晩まで笑いつづけてる」
「それはある意味,お幸せかもしれませんねえ。笑うことは体にも良いそうですし」
「でも顔色なんてすごく悪いんだよ。血の気まったくなくて」
「言われてみればそうだ。ダジャレだけに白けますでしょう」
「卒業式」「花吹雪」「れんこんの甘煮」なんてどうでしょう。他のでもいいけど。
<>
equilibrium<><>07/03/20 00:21 ID:xF7562hoDn<> いのどんさんの話、笑い転げました。
駄洒落好きな私のツボにスッポリはまりました。 <>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:25 ID:QLGVWL1tBo<> 「卒業式」「花吹雪」「れんこんの甘煮」
(回ェ回)は、朝早く、起きて、
真新しいスーツ姿に身を包み、鏡にブイサインをしてみせた。
顔がほころぶ。
今日は、西暦2030年に
NASAが開設した、スペーススクールの卒業式。
(回ェ回)は優秀だったといえ、卒業までに、
4年を要した。
NASAスクールは、卒業するまでに、
平均で6年はかかるスクールなのだ。
どんなスクールなのだろう。
NASAスクール…それは、そのスクールを卒業すると、
宇宙基地に配属されて、そこで研究や仕事をするというものなのだ。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:26 ID:QLGVWL1tBo<> 宇宙基地は、木星の軌道上にある。
現在宇宙基地には1800人の、人員がいる。
皆、NASAスクールの卒業生だ。
(回ェ回)は、2週間後に、出発をひかえていた。
卒業生は、10人。
卒業生と言っても、特殊訓練を、積みにつんだ、ものである。
宇宙基地についたら、すぐ、配属され、仕事は始まる。
出発の前夜、
(回ェ回)と、同じ卒業生の、バラバーラは、
地球で最後の、バーで飲んでいた。
「なぁ、バラバーラ…なんか、憧れてた、宇宙だけど、もう地球には
あんまり、来れないよな…見慣れている景色だけども、愛おしく見えるんだぜ…」
「なんだよ!(回ェ回)!おまえが一番、宇宙こそ神秘とか言ってたんじゃん…でもな…分かるよ…俺も…同じ気持ちだ…」
外では花吹雪が舞っていた。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:26 ID:QLGVWL1tBo<> 当日になり、スペースシャトルが発射するのは、PM1:30。
早朝にはもう、10人の全員が待機している。
管制塔:「こちら、シャトル基地。応答願います!」
木星の基地と、交信をしようとしている。
・・・・・木星の基地からの応答がないのだ・・・・・
管制塔リーダーのロバートは、
「何なんだ?いったい?」
その後、3週間、木星基地からは、応答はなかった。
ロバート「何があったんだ?」
何かあったとしか、考えられない。
10人の卒業生がいくしかない。
(回ェ回)も、何が何だか、分からなかった。
とにかく、木星基地で何かがあっている。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:27 ID:QLGVWL1tBo<>
急遽、木星基地探査隊として、卒業生達は、木星に向かうことに
なった。
バラバーラは、
「連絡も、取れない、基地に行くのか?
いったい、何があっているのだ?」
不安は皆、一緒だ。
10人の探査隊は、PM1:30に、地球を出発した。
・・・・・・・・
木星の軌道上に到着した、シャトル。
「木星基地、応答願います!」
何の応答もない。
木星基地に降り立った。
入り口も、開かない。シャッターを溶解して、入ることが出来た。
中は…
なんと…皆、寝ていた…
原因は、基地隊員の
ドンバーの作ったれんこんの甘煮に、間違って、
強力な睡眠薬が、混入してしまっていたのだ。
10人の卒業生は、急遽、解毒剤を作り、
皆を起こした。
<>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:27 ID:QLGVWL1tBo<> (回ェ回)は、ちょっと、木星人に侵略されたとか、
考えて、いて、ホッとしたが、
前途多難。
ビービービー
その時、緊急ブザーがなった。
ドドドドドと何かが、入ってくる。
木星人だった。
3週間前に、地球からの、木星基地を心配する、管制塔の
メッセージを受信していたのだ。
ずっと、木星人は、心配していたらしい。
しかし、シャッターが閉まっていて入れなかったのだ。
木星人は可愛らしい感じだった。
木星人は、記念に木星特産の、キーホルダーをくれた。
地球人は、れんこんの甘煮を渡した。
もちろん、何も混入していないやつをね。
お騒がせな騒動でしたね♪
<>
( ・ェ・)<><>07/03/22 02:32 ID:QLGVWL1tBo<> 注意:木星基地とは、木星の軌道上にある、宇宙基地を言っています。
次のお題
「シャープペンシル」「葉っぱ」「サイダー」 <>
Kelp<><>07/03/23 23:15 ID:4VRaOBN3ki<> ( ・ェ・) 読みやすい、面白い…
「シャープペンシル」「葉っぱ」「サイダー」
変則、即興にて失礼します。
葉っぱは旅する
新緑のままの色で
サイダー飲んでるあの子の肩や
春の風に触れようと
窓を開けた長い髪
テストが近づく新入生の
クルクル回す
シャープペンシルにも
葉っぱは思いの全てを込めて
旅する
旅する
誰もが幸せを感じるように
それを運ぶ…
<>
Kelp<><>07/04/06 22:30 ID:L0a5iwIgWS<> 桜が咲いている4月に、時ならぬ雪が降ったその日
君は大学生活を始める為、長い時間を過ごしたこの家を出て行った。
「次に帰ってくるのは新緑の頃」ゴールデンウィークには戻ると言った。
君の居ないこの家には作りすぎた味噌汁や君の好物が残る…君の不在をふと感じる時。
やせっぽちの君をいつも僕はからかった
「葉っぱばっかり食べている」と。
心配なのはそんな君の食事、ちゃんと食べていけるんだろうか…
出かける時、大人びた顔で振り返って「飲みすぎには注意だよ」と君は笑った。
そんな君から3日ぶりに電話が来て風邪気味だと言う。
喉が痛いんだよ…
「喉の調子が悪い時はサイダー」いつもそう言っていた様に君はきっとサイダーを飲んでいるだろう
何の解決にもならないけれど。
今は何もない机の上に置き忘れられたシャープペンを、僕は今日ポケットに入れて、会社へ出掛ける。
桜はもう散り始めている。
次は「交差点」「流れる」「高い」で。 <>
理子<>3OptlDHXuiR<>07/04/08 20:02 ID:oYj/SLlInl<> 「交差点」「流れる」「高い」
いつもの交差点。
信号が青に変わると一斉に流れ出す。
夢や希望にあふれる顔。
苦しみや辛さを抱えてる顔。
様々な顔、顔、顔が流れていく。
いつもと変わらぬ光景。
何人にもいろんな形の生活がある。
私もその中のひとりなんだ。
いつもの交差点。
上昇を続けるエレベーターから見る。
高いところから見ると季節の移り変わりがはっきり読み取れる。
人々の動きは魚の遡上にも見える。
私もその中のひとり。
どんなに重く感じていても、ちっぽけな存在。 <>
理子<>3OptlDHXuiR<>07/04/08 20:06 ID:oYj/SLlInl<> ごめんなさい。
5行目訂正
流れていく→流れる <>
いのどん<><>07/04/09 10:30 ID:bUtlgKcOzC<> 「交差点」「流れる」「高い」
タクシーに乗っていて渋滞にひっかかると,まことにイライラするものだ。
さして動きもしないまま,時間ばかりが経過して,料金メーターはいっちょまえに上昇をしつづける。
信号待ちも不愉快だ。ようやく青になっても,たいして進まない。何度目に青になったら,この交差点を渡れるのだろう。交差点は,こう,サッと行くべきポイントだからこそ交差点だ。これではジリダラ点である。
退屈だからボーッと外をみている。こうしてみると,タクシーの窓から眺める都会の景色も,なかなか趣があるものだ。林立するビルの間に広がる青空を,薄雲が流れる。
ボードレールの詩に出てくる異邦人ではないが,雲っていいな,いっそ人間辞めて雲になりたいな,なんてつまらぬ妄想。妄想というより逃避願望か。
あの雲はこれからどこに行くのだろう。山に行くのか,郊外の住宅地にむかうのか,それとも大海原へ。まず山にぶつかって,雨になって,川になって,いつか海に流れだすのか。けっこう雲も波瀾万丈だな。ただ安楽にいられるものなど,この世にないのかもしれない。
もしのんびり気ままに安楽に生きるなら,飼いネコなんか,けっこうよさそうだ。裕福な家庭の広い庭で暮らすビーグル犬なんかも憧れるな。
窓から空を見上げながら,犬の生活などぼんやり夢想して,ふと気づくと,さっきからほとんど動いていない。数台先にはすっかりおなじみのあの交差点。
見たくないなあと思いながら,おそるおそるメーターに目をやってがっくり。これでは高い料金払って,ぼんやり物思いにふけっているようなもの。なんてぜいたくな月曜日。
*******
ランドセル,ともだち,もんしろちょう なんていかが。 <>
シノプス<><>07/04/16 00:01 ID:U5sCZoZ4/p<> 「ゆきちゃん、これはなんの絵?」
「んーとねえ、んーと、もんしろちょう!」
綾香が相手をしている間、僕はこの迷子の少女の身元を探るべく、
勝手にランドセルの中身をあさっていた。
結果として分かったこと、名前は「むらのゆきほ」、
通っているのは「なつめざか小学校」、先生の名前は「かしや」さん。
それだけ。
これはいよいよ警察に任せるしかないかもしれない。
僕はそう思った。思っただけで、決して口には出さなかったのだが、
少女はそんな僕の心理を嗅ぎつけたのか、
「ゆきちゃん、おまわりさんのところには行かないからね!
さっき言ったでしょ!」と、鋭く威嚇してきた。
ああ、これがなければ、こんな面倒な話は官憲に押し付けて、
今頃自分の家でごろごろしているはずだったのに、
何が嬉しくて、綾香の家でわがまま娘のお守りなんぞ……。
「大丈夫。おまわりさんの所には行かないからね。
あのお兄ちゃんが無理やり連れて行こうとしても、
そんなのお姉ちゃんが許さないから。だから安心して」
挙句の果てに僕は悪者扱いか。いい加減うんざりして、
僕は居間の前の廊下に寝転がった。ふて寝だ、ふて寝。
「ところで、この子はだーれ? 学校の先生?」
「んーん。ゆうくんだよ。ゆきちゃんのおともだちなの。
せがたかくって、おさけやさんのひとなんだよ」
ああそうですか。ゆう君、背が高い、酒屋、
なるほどねえ。……ひらめいた、ひらめいたよ。
僕は寝転がったまま、顔だけ綾香のほうに向けて言った。
「なあ、もしかしてそのゆう君って……」
「雄介さんだよ! ほら、学校の近くの酒屋さんの!
ほらこの絵見てよ! 茶髪でしょ! 絶対そうだって!」
先に言うな、くそ。僕は何となく不愉快だったが、
このわがまま娘からもうじき解放されると思うと嬉しくて、
通常の1.3倍の速度で飛び起きた。
次は「大吟醸」「新宿」「ネコミミ」の3つで。 <>
プラチナ<>9ccRE0pSjzi<>07/05/08 11:31 ID:iHqqJnO2k0<> 眠らない街、新宿…と人は言う。
あの街に近寄らなくなってどのくらいが経つだろう。
あの頃の新宿はまさにバブルの真っ只中
誰もがいつまでも続くであろう好景気に浮かれていた。
そこで出会った人たちはみんな一風変わっていて、路上でアクセサリーを売ったり、似顔絵を描いていたり。
夜になる何処からとも無く現われ、朝になると消えているといった幻のような人たちばかりだった。
その中の一人に、車椅子に座った彼が居た。
彼がどうして車椅子の生活になってしまったか、聞いたことは無かった。
ただ、気づいたらアクセサリー売りの仲間たちと一緒にソコに居たのだった。
もうすでに顔見知りだった私は、独りで居たときの彼に聞いたことがある。
「トイレはどうしているの?」と。
彼は後ろのビルを指して「ここの裏から入れてもらっているんだよ」とニッコり笑って答えた。
それだけが私が覚えている会話の全て。
その頃の私は客の立場から売る方の人間になっていた。
もちろん、ボランティアだったけれど。
その車椅子の彼が恋をしていると仲間たちから聞いた
相手が誰か、いくら聞いても誰も教えてくれなかった。
どんな小さな声も聞き漏らさないネコミミを持つ私にも見当がつかない。
<私はドウセよそ者だから…>
そのうちに私は飽きてしまい次第にソコに近づかなくなっていった。
何ヶ月か後、ソコへ気まぐれに寄った私は彼の姿が見えないことに気づいた。
顔見知りの仲間に声をかける。
「彼はどうしたの?」
帰ってきた答えはこうだった。
「好きな子の後姿を見た。と言って車椅子をこぎだしてね、車道で轢かれて死んだんだよ。」
「その人に思いは通じたの?」
と重ねて聞いた私に、仲間たちは言った。
「鈍感の大吟醸、今もまだ気づかないらしい」と。
それ以来、一度もあの街には出かけていない
あの街にも一瞬だけ、音のなくなった瞬間があった。
彼の車椅子の後姿だけが今のあの街には残っている。
次は
「水平線」「転がる」「邪魔」で。 <>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>07/05/15 20:25 ID:/tYnJixYux<> 「水平線」「転がる」「邪魔」
さっきから気になるのは着替えを持っていないことだ。
夜行のフェリーで現場まで行かなければならない。
まったく・・ 突然の命令には往生するぜ・・
夜の海に地平線は・・ まったく見えん。
取りあえず風呂に入ったが、悲惨な修学旅行を思い出したぞ。
飛行機のケースは考えられなかったのか、不信が残る。
ビールを片手にデッキに出れば、煙草が飛ばされ火の粉が転がる。
初めてじゃないが、やはり船は簡単に慣れるもんじゃない。
風は恐ろしく強く、我が身は心細く、時間の経つのが遅すぎる。
携帯はアンテナの線が一本もなかった。
「おい、今からフェリーで帰りは二日後だ。」
「なんで、早めに言わないの。」
「仕方ないだろ、さっき言われたばかりだ。」
フェリーの乗船まで3時間で準備に追われていた。
そう、着替えの下着を持っていないのだ。
そう、さっきの風呂でパンツを洗わなければならなかった。
そう、デッキではズボンの下は何もはいておらず、風が寒かった。
しかし、乗船では女性と一緒である。
船内のビールはやたら高いが、盛り上がらないと夜は長い。
最初はぎこちなくても、お酒の勢いで会話が弾んでくる。
人間アルコールを飲めば、必ず酔っ払うものだ。
うっかり、ズボンの下にパンツがないのを喋ってしまう。
女性の顔が下品とはっきり拒否する。
「どうも、お邪魔しました・・」
<>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>07/05/16 11:02 ID:/tYnJ7C3Fl<> おっと、忘れ物
次回は「空間認識」「経歴詐称」「労働基準法」でお願いします。
<>
Mr.G<><>07/06/05 04:25 ID:.MMqV6sMYO<> 「空間認識」「経歴詐称」「労働基準法」
小さい頃から キャッチングもバッティングも、みんなより上手くなかった。
かといってフライもなかなか捕れなかった。
打率も悪いし野手にも向かないのに、野球をやめるのは俺にとって満塁ホームランより難しかった。
こういうの、知ってる。下手の横好きって言うんだ。
小学校3年生のある日、コーチは俺をグラウンド横の木々の前に連れて行った。
「お前、木登りしたことあるか」
首を横に振ると、コーチは課題を出した。
「お前は空間認識能力が低い。だから木登りで鍛えろ。」
説明の内容も繋がりもよくわからなかったが、とりあえず特別メニューらしい。さっさと終わらせて普通の練習に戻ろう。そう思っていたのに、コーチの次の一言に、くらりとめまいがした。
「全部うえまで登ったら言いに来い」
全部とは、この本数を知っていて言っているのだろうか。
ゆうに50本はある。高さも、・・・・・・高い。
いったい何日かかるだろう。
みんなが練習をするのを横目に、一人黙々と木と格闘していた。
一日がすぎ、二日が過ぎ、はじめはそれなりにがんばっていた木登りも、そろそろ飽きた。
野球がしたいのになんでこんなことしなきゃなんないんだ。しかも一人だけ!
もともと得意分野じゃないだけに進むペースは遅かった。しかも隣でみんな練習をしているから、なおさら意欲はそがれた。まだ半分も登りきらないうちにノックをしているコーチのもとに行った。
「コーチ、できました」
コーチは手を止めて俺を見た。
「全部登れたのか」
俺は黙ってうなずいた。ささやかな経歴詐称。
だって、はやく野球がしたい。
「じゃあ早速入れ」
コーチはグラウンドを示し、ノックを続けた。
久々に練習に加わった気がした。そんなに日にちは経ってないのに、とても長い間はなれていた気がする。相変わらず上手くさばけなかったがすごく楽しかった。
しかし、コーチの顔はすぐれなかった。何球か球を出して、考え込んでしまった。
次の日からまたコーチは特別メニューを出した。その次も、そのまた次も、課題を出しては練習に加え、様子を伺っていた。
そのうちに、コーチが真剣に自分のことを考えてくれているのだということにやっと気づいた。目の下のくま、色々なメニュー、かばんの中の専門書やプリント類。
「お前は今でも野球が好きだし楽しいだろうが、今より上手くなったらもっともっと楽しくなるぞ」
そういったコーチの顔は子供たちに負けず劣らず汗と砂にまみれて汚れていた。
俺が木登りを再開したのは、言うまでもない。
野球好きが功を奏して、トレーニングになるものは一見関係がなくてもつづけるようになった。
日々常に練習。そしてそれが趣味。
それが仕事になるのは、初めて木登りをしてから10年後の春だった。
前年のドラフト?まあ それは何位だったかはよしとしよう。
体を鍛えるのは当然のこととして、生活のほとんどが野球のために費やされた。
世に言う労働基準法なんてのは軽やかに無視。だって労働だけど、労働じゃない。
確かに 実力社会。日々常に練習。
でも それが趣味。それが悦び。
もっともっと 野球を楽しむために。
え〜、長くてすみません。しかも駄文の羅列。
がんばることを覚えたやつはすごいことになる、
それが好きなものなら尚更。といったところだろうか。
コーチの真剣さに心打たれたのがきっかけで、
周りに応えようとする想い、的なかんじ。
あしからず。
↓次は「バイク」「2人」「道」 <>
理子<>3OptlDHXuiR<>07/06/16 11:31 ID:SXui3J5GLo<> 「バイク」「2人」「道」
「お前が先に乗ったら、俺が乗れないだろ?あのさ、女乗りってぇ〜のは男は出来ないの!」
「え〜!!そうなの?」
私の髪をくしゃっとして笑った。
初めてのデートで緊張しているのに、初めて乗るバイクに動揺してしまった。
背中にしがみつき、流れる景色をただ見ていた幸せな時間。
ずっと、ずっとこのままでいたかった。
お元気ですか?
あなたが都会の大学に行ってから1年が経ちました。
私は相変わらず上手くもない絵を描いています。
友達はたくさん出来ましたか?
勉強とか忙しいのでしょうね。
私のことは気にしなくていいのよ。
連絡がなくても、元気でいてさえくれればそれでいいの。
2人で歩いたポプラの並木道、覚えてる?
秋になったらまた一緒に歩きたいな。
ポストにストンと落ちたとき、後をバイクが通り過ぎた。
見覚えのあるチェックのシャツが、風にふくらんでいた。
次は「かたつむり」「灯台」「揺れる」
<>
yassan<>Y1gESPhTjUy<>07/06/17 00:43 ID:Ske2L3di49<> 「かたつむり」「灯台」「揺れる」
梅雨初日の海を晴天の真夏日とは予想外犬。
白い雲は空を海と区別して、梅雨空を消去する。
だからって、君が青と白の水玉の服を着る事はないよ。
目の前の擦り切れたジーンズの僕への弁明どうなの。
着ていく服の打ち合わせもしたのに。
携帯の液晶に髪が揺れる君よ。
いつまでも笑ってないで、何とか言ってくれ。
え、灯台が見えるって?
どれどれ、振りむいても見えないじゃないか
液晶の中で笑う、君の青い目がかたつむり。
次は「土曜日」「8時」「出勤」でお願いします。 <>
春寝るさー<><>07/07/09 19:55 ID:hiw3aYA3AU<> はじめまして。お邪魔します〜。
「土曜日」「8時」「出勤」
土曜日が目を覚ましたのは火曜日のことだった。ゆっくりと体を起こして部屋を見渡す。七つ並んだベッドに火曜日の姿だけが見当たらなかった。だから今は火曜日だと分かる。今日は彼の出勤日なのだ。
それにしても自分の番までは、まだまだ時間がある。こんな時間に目を覚ますなんて。できることなら金曜日のギリギリまでぐっすりと寝ていたかったのに。土曜日はそう思いながら、右側でぐっすり眠っている月水木金曜日や左隣でいびきをかいている日曜日を見てため息をついた。
――『赤い靴』。そうだ、先週の赤い靴の少女はあの後どうなったのだろう。土曜日は不意に自分の出勤日のことを思い出した。
その娘はとびきり素敵な赤い靴を履いていた。エナメルのピカピカ光る綺麗な赤い色。嬉しそうに歌を口ずさみながら、ブロンドの髪をまるで踊るように弾ませて歩いていた。
土曜日はその日、ずっとその少女を眺めていたのだ。家族と買い物に出かける様子を、子犬を連れてお散歩するところを、友達と遊ぶときでさえ、少女はその素敵な靴を履いて歩いた。たぶんお出かけ用の特別な靴だろうに、少女はとても気に入ってずっとずっと履いていたのだ。
土曜日はベッド脇の床にきちんと揃えられた自分の靴を見下ろした。紺色のさえない紐靴。私の靴もあの子のような、ピカピカの赤い靴ならよかったのに。
「眠れないの?土曜日」
すぐそばで管理人の声がした。土曜日が顔を揚げると微笑を浮かべた管理人が静かに立っていた。
「ねぇ私の靴、こんな紺色のじゃなくて、赤いエナメルの靴とかにならないかしら」
土曜日にとっては切実な願いだった。しかし、管理人は聞き入れてはくれなかった。
「規則ですから。あなただけ特別という訳にはいきません」
声こそやさしいが厳しい口調の管理人の言葉に土曜日はふてくされて顔をぷいっとそむけ、毛布を掴んで頭までベッドにもぐりこんだ。
管理人はしばらく毛布に包まったままの土曜日を眺めていたが、動く気配のないことを見ると諦めて歩き出した。
「管理人」
部屋を出ようとする管理人の背中に土曜日の小さな声が聞こえた。
「はい?」
「……次の土曜日は、一日中雨にしてちょうだい」
「……雨ですね。分かりました。金曜日の夜8時にまた起こしますね。……おやすみなさい」
ドアの閉じる音を聞きながら、土曜日の胸はチクリと痛んだ。
――次の土曜日、雨が降ったら、あの子は赤い靴を履くのを諦めるかしら。
すみません。無駄に長くなった・・・。
次、「困ったとき」「準備」「コーディネート」で。 <>
Kelp<><>07/07/13 22:14 ID:S7QIjGPGv8<> 僕の彼女はフード・コーディネーターをしている。
今日の仕事は、雑誌などに載せるあの料理をコーディネ-トする事…
一緒に目覚めた朝に雑誌の仕事に出かけるのは初めてだった。
朝からゴソゴソと撮影の為の準備をしている。
自分の包丁やら鍋やらを持っていくわけではない。
霧吹き、マニュキア、バーナー、ドライアイス…?
『荷物が多いので送って?』と言う。
いつもの事だが朝食は抜き、部屋にはコーヒーの香りだけがしている。
僕が彼女に惹かれたのは実は仕事柄、料理が上手だろうと踏んだからだ。
僕の母は料理が下得手で友人の母さんがケーキなんかを手作りしているのを子供ながらに羨ましく見ていたものだった。
『その荷物、何に使うの?』
聞かなければよかったと今では思う質問を何気無く口にした。
彼女は首を傾げ一番魅力的に見える笑顔を僕に向けた。
『これ?撮影のときに使う道具よ。』
『霧吹きは新鮮に見えるように、マニュキアは艶出し…バーナーは焦げ目をつけるため、ドライアイスは湯気よ?』
『じゃぁ食べられないの?』
と尋ねた僕に、そうよ。と軽く笑って言った。
そういえば彼女の作った料理を食べたことが無い…
それどころかこの部屋にはおよそ料理をしている形跡も無い…
『フード・コーディネーターって料理は作らないの?』
そう尋ねると君は困った時に見せる前髪を引っ張るしぐさをした。
『私は、しないの…有名なお店の料理をテイクアウトして、それらしく飾るだけ、料理は苦手よ。』
…どうやら僕は自分が料理上手になるしか無いようだ。
次は「黒」「夏祭り」「スッキリ」で。 <>
振ると面食らう<><>07/07/21 08:59 ID:D-h.xdE<> 俺は浴衣には黒髪が一番似合うと思っている。
いま俺の隣で林檎飴にかぶりついている裕美子を見てそう思った。
すっきりとした輪郭に、切れ長の目、小さくまとまった鼻梁、やはり浴衣には日本人らしい顔が一番似合う。
裕美子の浴衣は俺が買ってやったやつだ。
夏祭りが近いというので、是非欲しいと俺にせがむのだ。
裕美子はピンク色のけばけばしい金魚のついた浴衣をかわいいといって気に入っていたが、俺は白地に水色の筋のはいった涼しげなやつを買ってやった。
裕美子は案外素直にそれを気に入ってくれて、今こうして袖を通している。
「金魚すくいがしたいなぁ」
「まだ林檎飴が残ってるじゃないか」
「後で、あーとーで!」
裕美子は小さな口で林檎をかじった。
次の題は「バイオリン」「タクト」「燕尾服」
<>
振ると面食らう<><>07/07/28 16:34 ID:D-h.xdE<> テレビの画面に《トスカニーニ指揮/NBC交響楽団 ワルキューレの騎行》の文字が出てくる。
ホールに燕尾服を着たトスカニーニが現われる。
トスカニーニは観客に軽く会釈してタクトをあげる。
振り下ろした瞬間、おどろおどろしい音楽が始まる。
ホルンが飛び跳ねる。
バイオリンの弓がまるで上下する剣のように見えてくる。
金管群がワルキューレのライトモティーフを勇壮に鳴らす。
勇壮だけではない、悲しみもまじっている。
この場面は戦場に舞い降りたワルキューレたちが戦死した勇士をワルハラ城に誘う場面なのである。
トスカニーニは腕をきびきび動かし、バイオリンの弓はそれにあわせて上下する。
まるで弓が戦士の剣のようにみえてくる。
「金魚」「シャネル」「木登り」
<>
Mr.G<><>07/08/01 19:42 ID:AmwvWMxTTL<> 「金魚」「シャネル」「木登り」
金魚を見て、君を思い出した。
女の子なのにやんちゃで、よく俺たち男子組にまじって遊んでた。
小学校5年の時 一度だけ君も一緒に、みんなで行った夏祭り。
浴衣を着ていておどろいた。
「似合ってんじゃん」「んな格好で遊びまわれんのかよ」まわりは思い思いに言っていたけど、
俺はソレにあえて触れずに早く見てまわろうと言った。
みんなで相変わらずはしゃぎまくって祭りを楽しんでいたけど、
なんとなく隣に行けなかった。浴衣の金魚の模様がやたらと目に残った。
祭りでにぎわう中で、一組のカップルとぶつかった。
浴衣のオネエさんの持ってた金魚の袋がこぼれる。
シャネルのバッグが水に濡れた。君の金魚も、水に濡れた。
ほがらかに金魚を空の袋へ入れなおすカレシの隣で
浴衣のオネエさんは怒るでもなくただ嘆いて、
謝る俺たちを気遣うと しとやかに、紳士なカレシと人ごみに姿を消した。
しばらくして君は泣きはじめた。
きれいに着飾ってたのに、お母さんに怒られる、・・・・・・
いろんな原因はあったのだろうけど 俺にはどうにもできなくて、
はじめて見た君の涙に 小さな肩と金魚の模様がゆれるのを
気の利かない言葉しか出てこないこの口をうらみながら見ているのが精一杯だった。
あれからなんとなく遊ばなくなった。
6年になったらお互い受験で忙しくなったし、
まして専ら女子とつるむようになったところへ
俺一人で入っていくなんてできなかった。
あれから何年経っただろう。
ずいぶん会ってないけど、相変わらず活発で、元気にしてるだろか。
彼女にせがまれて久しぶりにきた祭りで、たまたま金魚を見かけた。
そこへ彼女が何かに気づいて袖を引くのでそちらへ目をやると
一組のカップルがこちらへ来ていた。
女性のほうが話しかけた。
「うわ〜、久しぶり!元気だった?」
久しぶりの再開と 大人になった浴衣姿にまた驚いた。
バッグはシャネルじゃなかったけれど、
彼氏の持っていたディオールはどこか清楚なデザインのもので
違和感から同じ人物とは思い難かった。
化粧してやさしく微笑む顔も、どことなく遠くかんじた。
身振り手振りで話すその浴衣の袖から3cmくらいの傷が見えた。
4年の頃みんなで木登りして、落ちたときにできた傷だ。
なんか笑えた。
お次の方「青い空」「暑中見舞い」「旅行」 でお願いします。 <>
Kelp<><>07/08/04 22:29 ID:LTAOx/qRZW<> お題「青い空」「暑中見舞い」「旅行」
梅雨が明けたというのに真夏とは程遠い空だね
白い雲が幾重にも空を覆って、ただ暑いだけの毎日だよ…
貴方からの暑中見舞いが届いた。
今年からはハガキではなく携帯のメール…
私は旅行の仕度をしながら貴方への返信を考える
あの山なら。
青い空が広がっているだろう
ロープウェイに乗って青空に出来るだけ近づいたら貴方に写メを送ろう。
沈んだ気分の私に届けられた梅雨の合間の青空の写メのお礼に、本当の夏空の写真を送ろう。
今は遠くに住む、貴方からの暑中見舞いは
結婚したばかりの私を少しだけ感傷的にする。
次は「ささやく」「岩」「消える」でお願いします。 <>
日本ミニ漢字能力検定<>jhi7yNho6tY<>07/08/07 16:46 ID:mZZ0biuaoE<> ミニ漢検1級、腕試しに受けてみましょう!kentei.cc/modules/kentei/detail.php?kid=3669 <>
souya<><>07/08/25 23:32 ID:jWFfdmCJoo<>
黒々とした髪を揺らし、君は笑う。
「早くおいでよ、始まってしまうよ」
いつも、何故か文学的な物言いをする君。
そんな君のしゃべり方に、初対面の人は、たいてい驚く。
「……夏祭りは、七時からだ」
けれど、僕は驚かなかった。
何故だかは、知らない。君が、どこか僕に近い匂いをしていたから――かもしれない、多分。
「だからなんだというの? 始まってしまうという思いがあることは、わたしの心にとっては事実だよ」
もともと寡黙な性質(たち)の僕は、そういわれるともう、頷くしかない。
「君の言い方に、僕はいつも負けている」
言うと、君はふふ、と笑った。
「いいのだよ、君はそれで。釈然としないという君の横顔が、わたしは大変好きだ」
――どこかスッキリとしない思いを抱きつつ、僕は、
お次は、「明日」「階段」「体育倉庫」で。 <>
Kelp<><>07/08/28 09:49 ID:ryPMOVf5BO<> 久しぶりに田舎の匂いを嗅ぐ。
乾いた土と日向水の匂い、妙に懐かしいその匂いを熱い風が運ぶ…
この階段を登ると其処には町を一望できる場所があって
家に帰るより先に僕は此処へやってきた。
遠くに今降りたばかりの駅が見えて、帰ってきた道筋にバス停。
キラキラと輝く河口に近い川…
そのそばには中学生の頃の記憶のほとんどを占める艇庫があって
川では今日も部活の生徒がボートを漕いでいる。
卒業式の終わった午後、体育倉庫の前でボタンをねだったあの子は今もまだ一人でいるだろうか
明日、10年ぶりの同窓会がある。
次のお題は
「電線」「拾う」「その内に」で。
<>
NULL<>NULL<>NULL<>NULL<>NULL
林檎<>BItHid6EBSU<>07/12/14 00:36 ID:D-zBGQb<> 新参者ですが、宜しく。
ふと 見上げた空には雲一つ無い。
澄みきった青い空を
電線が二分する。
懐かしい思い出の一場面と同じように、足元に光る小石を拾って、川に向かって投げてみる。
その内に今日の事も、思い出の一つになるのだろう。
次のお題は
肩 涙 クリスマスで
<>
林檎<>BItHid6EBSU<>07/12/23 10:17 ID:D-zBGQb<> 肩 涙 クリスマス
今日の日も、きっと・・・。
そう思いながら、もう一度空を見上げて見る。
もう、西の方が赤くそまりかけていた。
まるで、長時間この河川敷にいたはずだと私に知らせているかのように・・・。
何十年もの思い出を、振り返っていたのだから、当然よね・・・。
そう思うと、また涙が溢れだしてくる・・・
「ねぇ、ママ。今日のケーキ、サンタさんとトナカイさんがついているのがいい!」
「えー。僕いちごが沢山のってるやつがいいなぁ・・・」
「嫌だぁー。ゆりはサンタとトナカイのケーキがいい!」
「だって、サンタもトナカイも食べられないじやないか!いちごのケーキは、全部食べられるんだぜ」
「お兄ちゃんの意地悪!」
「なんだよ!ゆりのバカ!」
「あらあら、二人とも。ケンカしてると、サンタさん、来てくれないかもよ。」
「そんなの嫌だ!ゆり 嫌だよな」
「うん」
「じゃあ、どうすれば良いかしらねぇ」
「わかった!今日のケーキはサンタとトナカイのやつにしよう。でいちごのケーキは、僕の誕生日にすれば良いよ。」
「いいの?ありがとうお兄ちゃん!お兄ちゃん大好き!」
「良かったな、ゆり。これでサンタさんもきっと来てくれるぞ」
「うん!」
「ハハハハハ・・・」
「まって、お兄ちゃん」「ねぇ、ママ。それでいいよねー」
少し先の方から、男の子が叫んでる。
優しく微笑みながら、うなずく母のもとに、かけもどってきては、「約束だよ。きっとだよ。誕生日はいちごのケーキだからね。」
「ええ、きっとね。」
「やったぁー」
そう言うと、また駆け出していった。
兄を追い掛けて、行ってもどりかけていた妹が、「ゆりが一番〜。」と言いながら、またくるりと向きをかえて走り出した。
「ずるいぞ、ゆり〜。まてよ〜。」
二人のこどもの声が、遠くになっていく。
『お兄ちゃん』『約束』その言葉が何度も胸の中を駆け回っていく。しだいに、苦しくなった私は、声をころして泣いた。
川向こうの広場には、大きなクリスマスツリーに、ライトが着いた。
次は、
ケーキ 音楽 思い出 <>
林檎<>BItHid6EBSU<>07/12/23 10:26 ID:D-zBGQb<> <109に追記>
*声をころして泣いた
から
*肩をゆらして泣いた
に変更します。
お題は109ラストのままで・・・。 <>
rs<><>07/12/23 14:18 ID:GoRGEoUS<> わたしも、新参者ですが、宜しくね。
貧相な中年の男が少女の前にしゃがみ込んで、口ごもりそうになる口をやっと開いて言った。
「ほらっよ、、」
不器用な手つきで差し出したのは桃色のリボンのついた小さな箱。
(俺を恨んでいるだろう、、、)
男にとって5年前に捨てた幼い娘に会うために、クリスマスというイベントと、
自分に恨み言を吐くはずの娘と話のきっかけになるプレゼントが必要だった。
9歳に成長した少女は黙ったまま、手にしたプレゼントと男の顔を見比べた。
小首をかしげて訳も分からず不思議そうな様子である。
(俺のような父親は忘れられても仕方がない・・・・・・)
男が自嘲的にそう思ったとき、、、
少女は男の背にくるりと回って男の首に細い腕を回した。
(あっ、、、)
伝わる暖かさと共に男に蘇る記憶がある。
それは幼児の頃の娘が父に肩車をねだったときの仕草である。
男は少女を抱き上げて、そっと肩に乗せて立ち上がった。
(お父さん・・・・)
言葉に出せない戸惑いの思いが少女の微笑からにじみ出している。
クリスマスの街は灯と喧噪取り戻して、二人を父娘として包み込んだ。
ただ、その街の灯がきらきらと煌めくのは、父親の涙のせいである。
次のお題は、「手」、「笑顔」、「お正月」でお願いします。
<>
rs<><>07/12/23 14:21 ID:zqGS5ELFxj<> あっ、、、リンゴさんの投稿とかさなっちゃったよ。
私のお題は無かったことにして
リンゴさんのお題、ケーキ 音楽 思い出で続けてくださるようお願いします。
<>
rs<><>07/12/23 14:22 ID:zqGS5ELFxj<> 林檎さんごめん、、、
リンゴさん、じゃなくて林檎さんですね。 <>
林檎<>BItHid6EBSU<>07/12/24 15:15 ID:D-zBGQb<> ケーキ 音楽 思い出
そう・・・。それぞれのクリスマスを、それぞれに過ごし、また一つ思い出を作っている。
私は一人で、小さなケーキにロウソクを飾り、アロマキャンドルを部屋に灯しながら静かな夜を過ごしている。
そう・・・。あの思い出の音楽を流しながら・・・。
では、次のお題はsrさんの
「手」 「笑顔」 「お正月」でお願いします。 <>
rs<><>07/12/28 06:40 ID:zqGS5ELFxj<> 林檎様、フォローありがとうございます。
勝手ながら、他のスレの住人のHNを使って三題噺を書きました。
*************************************
ぼく、、稲荷神社のお使いのキツネです。まだ、見習いです。昨日まで、新年を迎える準備で社をぴかぴかに磨き上げました。
もう疲れてくたくたです。それでも社の奥で、神社にやってくる人間を観察しながら勉強中です。でも、、人間って、とってもヘン・・・・
ぼく、見習いでも神様のお使いなので人の名前や考えてることは分ります。
最初の参拝客はトニアさんという女の人でした。
「今年も美味しいものがお腹一杯食べられますように。」
ぼく、思いました。(ふっ、、いくらでも自分で作って食べたらいいんじゃない?)
2人目はピンポンダッシュという肉体派の男の人。
「今年こそ、ザビビでrsをギャフンと言わせてやれますように。」
ぼく、首をかしげて思いました。(えっ、人間関係のトラブルを持ち込まないでよ。)
3人目はヒキちゃん・・・・
「今年も創価学会が発展していきますように。」
ぼく、びっくりしてひっくり返って、社殿の床に頭をぶつけてしまいました。(おいおい、、この人、、、まじめな顔で神社に喧嘩を売りに来てんの?)
4人目はおにぎり山さん
「今年こそ、、、○○さんとの禁断の愛が報われますように。」
ぼく、ぽかんと口を開けました(あのっ、、、禁断??? 愛はもっとずっと清らかなもんだと思いますけど、、)
5人目はハンザキさん
「今年も旨い酒が飲めますように、、、」
ぼく、ため息をつきました。(元旦から、飲む事ばっか考えて、、、)
こうやって、、、まんまさん、kさん、ruiさん、、、いろいろな人がやってきました。鈴を鳴らして拍手を打つ人が増えるたびに、ぼくの疑問は増えるんです。
(あーあっ。人間ってどうして自分のことしか考えないの?)
こんな小さな神社でも元旦の午前中はちょっと参拝客があって慌しいんですよ。でも、午前中を過ぎると、小さな神社は赤い鳥居を風が吹き抜けるぐらい暇になります。暇になって、ぼくはちょっとがっかりして考えました。(人間ってわがまま、自分勝手・・・・えっ、、、)
突然、驚いたのは誰かの雰囲気を感じたせい、、、
なぁーーんだ。
社殿の外にちらりと見えるその雰囲気の主は小さな女の子でした。元旦なのに着古した服を着ているのを見て、ぼくは女の子の願いを想像しました。
(どーーーせ、お菓子がたくさん食べたいとか、、、)
午前中の参拝者の願いを思い出すと、女の子の願いも想像がつきました。
(お年玉が沢山もらえるようにとか、、、)
ぼく、寝ころんだままで思いました。
(どーせ、この薄汚いガキも、自分のことしか考えてないんだ。)
女の子が大切そうにポケットから出して投げ入れたお賽銭を見て、ぼくは思いました。
(たった、10円ぽっち?)
女の子は遠慮がちに鈴を鳴らして小さな声で2つのお願い事をしました。
「フラッピーがちゃんと天国に行けますように、、、。」
女の子の考えている事は分りました。フラッピーは去年の冬に亡くなった女の子の友達のハムスターの名でした。
(えっ、、、、)
女の子は2つめのお願いをしました。
「それから、いろいろな生き物がこの世で幸せに暮らせますように。」
その言葉を聴いたときのぼくの気持ち分ります?
ぼく、この子にとっても悪いことを考えちゃった。何か、何か、お詫びをしなきゃ。
その時に、女の子が頭に描いたフラッピーの姿が見えました。真正面からみたハムスターは太りすぎのネズミのようでした。ぼくは今まで見たことの無いハムスターに化けました。天国のフラッピーになったつもりです。ぼくは社殿の奥から駆け出して、女の子の足元から肩まで駆け上がりました。
そして、耳元でそっと、、、
「ぼくたちは いつまでも ともだち だよ。」
フラッピーのぼくは、女の子に微笑みながら優しく姿を消しました。
突然の出来事に女の子は驚いたようでしたが、
やがて、顔を上げてフラッピーがいるはずの空を見上げた女の子の笑顔は透き通って青空に溶け込むように素敵でした。
ぼく、笑顔で振り返りながら帰っていく女の子を見ながら、とても嬉しかったです。女の子を見守っていた神様が言いました。
「あの女の子と、今のお前はとてもいい笑顔をしているよ。その笑顔を忘れないようにしなさい。」
「うんっ。」
「でもね。今度ハムスターに化けることがあったら、お尻の尻尾は隠すんだよ。ハムスターにそんな長いネズミの尻尾はついてないから、、、、、」
「えっ? そうなの?・・・・・」
*******************************************
このスレの皆様も良い元旦をお迎えくださいね。 <>
rs<><>07/12/28 12:45 ID:Fk/yn45H3W<> すみません、お題を出すのを忘れてました。
実は、私、正月も仕事です、正月休みは遅く、正月休みに入って朝日を仰いでも初日の出ではなく、酒を飲んでも祝いの酒ではありません。
こんな私からのお題「遅い正月」、「朝日」、「酒」でお願いします。 <>
林檎<>BItHid6EBSU<>08/01/16 08:30 ID:D-zBGQb<> 遅い正月・朝日・酒
世間では、正月気分はすっかりぬけて、仕事モードに切り替わっている。
私は忙しい年末年始を過ごし、やっと休みになった。とはいっても世の中は成人式を含めた連休気分。挨拶も、通常に戻っている。
私は、一人寂しく酒をのみながら、年賀状に目を通している。遅い朝食は鏡開きの終わったもちを焼いて、きな粉をまぶして頂きましただいた。七草がゆを食べる余裕もなかったから、昔からのしきたりや時期を守るなんて到底無理な事・・・。新年を共に祝う仲間たちも、仕事・・・。なんだか、ふてくされた心境で一人酒に溺れている。
ダラダラと過ごした三日間。明日から又仕事。何だか、気分が落ち込み気味だが、大丈夫だろうか・・・。そんな気分で床につく。
チュンチュンチュン・・・。鳥の声でうっすらと目覚めた私に、東の窓から差し込む朝日が妙に清々しい。昨夜の思いとは、うってかわってやる気がみなぎる。
さぁ、仕事だ!
今年も1年頑張ろう!
次は
★スケジュール張
★灯台
★笑顔
で・・・。
<>
林檎<>BItHid6EBSU<>08/02/02 10:30 ID:D-zBGQb<> スレ主さんは、元気なのでしょうか・・・?
皆はどこへ、行ったのでしょうか?
久しぶりに来てみたけれど、あのままだとは・・・。
とっても林檎です。 <>
林檎<>BItHid6EBSU<>08/02/02 21:14 ID:D-zBGQb<> 118の最後の行
『とっても林檎です。』は
『とっても淋しい林檎です。』の間違いです。 <>
rain<><>08/02/24 00:48 ID:/We56L9FPZ<> 新参ですがよろしく。
★スケジュール張
★灯台
★笑顔
家の中で見つけたスケジュール帳。それには少し前に別れた彼女と作った二人の今年の簡単な予定が書いてあった。スケジュール通り進むと今日は二人で灯台に行って夕日を見るなんてドラマみたいなことが記されていた。
そして居ないと分かっているのになぜか車を飛ばして示された灯台に来てしまった、自分の馬鹿さ加減呆れつつも夕日を一人で眺めていた。
スケジュール帳に二人で書き込んでいたころは二人とも笑顔だった。それがいつの間にか彼女と共になくなってしまった。
それからずっと連絡は無く、愛想を尽かされてしまったんだと気づいた時にはもう彼女の痕跡はまったく残っていなかった。
それでもまだ彼女の事を愛している。
しかしもう会うことは出来ない。
それならばもう彼女幸せを願うしか出来ることはなかった。
だから僕は海に沈んだ夕日を背に車に歩みを進める。
このスケジュール帳どうりに進まなくなった、今でも彼女の笑顔が保られていると願いつつ……
以外に難しいですね^^;
次「パスタ」「マッチ」「カーテン」 <>
振ると面食らう<><>08/03/01 23:22 ID:vSUZ/Y8z1b<> 妻は自分の作るスパゲティにただならぬ自信を持っている。
どうもスパゲティに関しては一言居士のようである。
なにかとスパゲティのうまい作り方などをいうのだ。
一緒になってもう2ヶ月経つ。
今夜はカルボナーラだ。
渾身の出来である。
ソースとパスタがねっとりと絡み合い、もつれ合い、溶け合い、それでいてしつこくない。
黒胡椒のスパイスがぴりりとしたたかに自己主張している。
絶妙である。
妻は自慢げに「どうや」
と訊くので素っ気なく
「うまい」
と答えてやったら、
「お店でも開いたろか」
などと調子に乗るものだから、
「まだ5年早いな」
と言ってやった。
妻はフォークを置いてナプキンで上品に口をぬぐい、
「あンなぁ、女ってなナァ、お世辞でも、そうだねって言って欲しいもんやで」
と言って笑った。
「せやなぁ」
「あかん、こころがこもっとらへん、もっぺん言ってみ」
「せ、や、な、ぁ」
「アホとちゃうかコイツ。あのなぁ、女ってのはなぁ、“こころ”を一番に男を選ぶんやで。あー、いろんな意味で損したわ」
私は苦笑してマッチをとって煙草に火をつけた。
「せやろか」
「せや、アホ」
私は煙を吐きながら、
「かわいいなぁ」と言った。
「なんや今更」
「今夜も愛したるわ」
と言ってテーブル越しにキスをした。
「煙草クサっ。アホ、丸見えや、カーテン閉め・・・」
私と妻ももつれ合った。
次「エレベーター」「バラ」「家」でお願いします。
<>
snw<><>08/03/03 02:11 ID:oht4n09w86<> 新参です。よろしくおねがいします。
「エレベーター」「バラ」「家」
なんで私はここにいるんだろう。
エレベーターの中で点灯している最上階のボタンを見ながら考えた。
昨日、駅で財布をなくして、それで交番までいって・・・・・・・。
霞んだ空のように記憶があいまいになっている。
それで、それで・・・・・・。
そうだ。そこに男の人がいたんだ。
その人が私の財布を届けてくれて・・・・・・。
どう頑張っても思い出せない。
私には三日前の記憶はない。そういう病気なのだ。
でも一般常識や知識などは忘れることはめったにない。
だからこの病気のことも自覚している。
そんな私は一日前の記憶でさえも片鱗でしか思い出せないときがあるのでいつもメモ帳を持ち歩いている。
そして何故か昨日のページには真っ赤なバラの花びらが挟まっており、ともに挟まっていた名刺にこのマンションの住所が書かれいた。
そして一言きれいな字で、明日ここにきてください、と。
香るはずの無い薔薇の香りがしたような気がした。
何故か懐かしさがこみ上げてきて気づくと一筋の涙が流れていた。
ポーン。
エレベーターが到着の知らせを告げる。
私は鏡を見て涙を拭く。良かった、化粧は崩れてない。
ワンフロアに一つしかない家。
その家のインターフォンを鳴らす。
「はい」
低くても重くない美しい声が聞こえる。
「あ、あの。私のメモ帳にここの住所と、メッセージが残されていたので来ました」
ガチャリ、と音がしてゆっくりとドアが開く。
ドアが開ききるとともに花の香りが広がってきた。
目の前には大きな薔薇の花束を持った私と同じくらいの青年が立っている。
その瞬間に、今まで思い出せなかった過去がフラッシュバックしてきた。
赤い薔薇を一本両手に大事そうに持つ少年。
「薔薇の香りって『あろませらぴー』ってやつに使われるくらいすごいんだぜ」
また別の場面が頭の中に広がる。
「お前薔薇が好きだろ?じゃあ薔薇を見たら絶対に忘れられないような思い出作ってやるからな」
また同じ少年だ。
「いつか手に持てないくらいの薔薇の花束でお前に結婚しようって言うからな。断るなよな」
恥ずかしそうに言う少年の笑顔が私は嬉しかった。
思い出した。
私、思い出した。
嘘みたい。
そしてその少年が少しばかりあどけなさを残して目の前に立っている。
私の大好きな花、薔薇。
私の大好きな人、目の前のこの人。
「おかえり」
彼は昔と変わらない笑顔でそういった。
「ただ・・い・・・ま」
堰を切ったように涙があふれてくる。
止まらない。今まで流せなかった涙を、この瞬間全て流すかのように。
「さあ、今日からここが君の家だ」
しばらくの間の後ただドアの前で立ち尽くす私に向かっていった。
「結婚しよう」
持ち上げたら顔が隠れてしまうほどの薔薇の花束を私に差し出しながら。
難しかったです^^;
次は「雪」「信号」「星」でお願いします。 <>
振ると面食らう<><>08/03/03 05:27 ID:r0Kc8DiIcR<> 私はさびしき独り者である。
今日は大晦日。
紅白が終わって、スーパーでかってきたかまぼこを肴に独り酒を呑んでいたら、どことなく、むらむらとやるせなさが襲ってきて、アパートから思わず街に出た。
雪が降っていた。
「雪・・・か」
真冬にしては少々薄着だ。歩いていないと体温が逃げていく。
「歩こう」
目的地も決めぬまま夜風にあたるつもりでふらふらと彷徨った。
ひっそりとした街並み。いつもとは違う顔を見せる。
いつもならとうに電燈を消してしまっている家がまだ明るい。
マンションなど見るとほとんどの家が明かりをつけている。
そんな事を考えながら歩いていると信号にぶつかった。
空を見上げると満点の星。
さっき聴いた第九のシラーの詩が頭をよぎった。
「互いに抱け合え、諸人よ。全世界の人々とくちづけを交し合うのだ!
はらからよ!満天の星々のかなたにかならずや父なる神はおわしますのだ。さすればひざまずくかもろびとよ。この世の者達よ、汝を創造した神がわかるか。満天の星々の彼方に神を求めよ!星々の彼方に必ずや神はおわしますのだ」
家に帰ろう。
今年もいい年になりますように・・・。
お次は「リンゴ」「お皿」「道」でお願いします。
<>
振ると面食らう<><>08/03/13 23:28 ID:D-v8Y8V<> 憂鬱を晴らすために街に出た。
もう陽は西に傾いている。黄昏時のドヤ街である。
排水溝からは立小便のねっとりと甘く、塩辛い臭いがムッとする。
蚊柱が立っている。
小汚ない中華飯店は洗ってある清潔な白いお皿を積んで、お冷やのグラスをならべている。
歩道に落ちているしわくちゃのピンクチラシを踏みつけ、電柱に貼ってある商売女の電話番号が剥がされているのをみて嘆いた。
だいぶ暗くなったが街は明るい。
いつも気にかけない八百屋で青い樹脂製のかごに入った甘くみずみずしく主張する林檎をみつけた。
明日の朝飯は無い。
ちょうどいいので3玉買った。
色艶が実にいい、ビニール袋から甘い匂いが蒸したように香ってくる。
帰りにさっきの小汚ない中華飯店に入って中華そばをすすった。
ドヤ街を出ると夜道は真っ暗になる。
それでも星は見られなかった。
お次「梅」「酒」「芝生」でお願いします。 <>
勝美。<>KT2xKFQNy/i<>08/03/24 02:53 ID:D-NywJK<> お初です。
よろしくお願いいたします。
「梅」「酒」「芝生」
庭付き一戸建て
理想的なマイホームだった時期に私を庭に芝生と共に植えられた。
近くの公園は子供連れや、カップル等で賑わっている。
私にはどーでも良い事である。
彼らが、幸福ならば、それもよし。
我が家は私、以外は家に、いつの間にか人が寄り付かない様になって行った。
事業に失敗し、酒に溺れ男性は、病院にいるらしい。
その連れ合いは、仕事に追われて夜にしか寝に帰らない。
子供は、大学にも行かずにバイトに明け暮れ、ぎりぎりの単位で進学を考えているらしい。
私は、その庭に根をはり、この家族を見つめているだけで、毎年来るウグイスだけが、唯一の友達で、今春も、誰にも気付かれず、梅の花を咲かせているのだが、気付いてはもらえてないようだ。
お次の方、
「現在」「過去」「未来」でお願いします。 <>
振ると面食らう<><>08/04/06 00:50 ID:M0ws76tgZV<> 過去を振り返ること、それは時として自分を苦しめることがある。
フラッシュバックがそれだ。
昔の出来事を回想していくうちに、過去の出来事が現在おこっているかのような感覚に陥る。
それは一度や二度ではない。
過去をふりかえることが無くなったら、なにも得る物がなくなる。
考えるなというのが無理なのだ。
回想は意図しなくともおきる。
ふとしたきっかけで、いつでも爆発するフェザータッチの爆弾なのだ。
これが未来に向かっていればお得なのだが・・・。
お次「牧場」「山」「湖」(順不同)でお願いします。
<>
↑うんこ<><>08/04/12 19:49 ID:X5Ly7dh0/2<>
牧場を歩いていたら、間抜けが牛が草をはんでいました。
で、牛に名前を聞いたら、牛さん「振ると面食らう」なんちゃって。
山の向こうにはカケスも嗤っていました。
その牛は湖に写った自分の顔を見て悶絶死したそうな。
お次「振ると」「糞」「食らう」でどんぞw。
<>
NULL<>NULL<>NULL<>NULL<>NULL
タンタン<><>08/04/13 16:54 ID:xt.BB1zDPX<>
私は、仕事の帰り道に必ず寄る場所がある。
スーツのままで駆け寄った先は、バッティングセンターだ。
ちなみに、野球の経験はいまだかつて一度もないのだが、
何だかこの場所にやってきてしまう。
緑色の芝に両足をのせ、練習程度にバットを構えて大きく振ると
当然、糞をしたなった。
「……なんで、こんな時に!」
途中の駅のドトールコーヒーでコーヒーを飲みすぎたのが原因らしい。私は、会社の鞄を芝の上に置き、一先ずトイレに向うことにした。
便座に腰をおろすと、ある事を思い出した。
昨夜、起きた殺人事件のニュースである。
だが、面倒臭くなりそうな予感がするので考えるのをやめた。
そう言えば、糞をするのは三ヶ月ぶりだな、と水に流れる
糞を見送りながら思う。
個室から出て、手を洗おうと蛇口を捻った。
すると、いきなり老人が口を押さえてきた。息が出来ない。
そして私は、糞を食らう。
「やめてくれー」
「いっひひひひひひひ」
けたたましい笑い声が響いた。苦しくて恐怖で逃げ出したかった。
でも、私には、そっちの趣味があったので快感を感じていた。
目の前の鏡に茶色い私の顔が映る。老人の顔も映る。
「……まさか!」
私は、掴まれた手を振り払って、後ろを向いた。
老人と目が合い、呼吸が苦しいことも忘れる。
「お父さん……」
運命の再会を果たした私たちは、そのまま昨日、殺人事件が起きたホテルへと向った。
私は、今日この日を待ち望んでいた。
バッティングセンターで盗んだバッドを片手に、
昨日の殺人事件のニュースを見るバストローブ姿の父の元へ走った。
この日の為にバッティングセンターに通っていたので
振りかぶる力もとても強かった。
<>
振ると面食らう<><>08/04/15 03:04 ID:3TQzJc7sOv<> 悪乗りするなよw
空気読めwww
お題が出てないので、お次「牧場」「山」「湖」(順不同)でお願いします。
<>
↑うんこ<><>08/04/15 07:29 ID:X5Ly72g8GW<>
あさ、牧場を歩いていたら、横合いから牛が出てきました。
「ウシシシ」って嗤ってるように見えましたが、勘違いでした。
どんな掲示板でも山師っているもので、ここにも頭を振っているお脳の弱い方がいるみたいですが、気にせずにどんどん歩いていくと、
足下に湖が横たわってたよ。
お次、「振る」「面」「食らう」でどうぞw。
<>
振ると面食らう<><>08/04/15 15:55 ID:D-v8Y8V<> 消えろ。
お前では相手にならん。
やめとけ、逃げろ、降参しろ、勝ち目は無い。
振ると面食らう
お次「鳩」「公園」「三輪車」
今後悪質レスはスルーで宜しくお願いします。
<>
NULL<>NULL<>NULL<>NULL<>NULL
Kelp<><>08/04/17 23:54 ID:1OVvZu1Y9.<> その時、僕は一人で…
公園のベンチに横になっていた。
三輪車に乗った小さな女の子とお腹の大きいお母さんが道を塞ぐ鳩を気遣いながら歩いている。
女の子は鳩に先を塞がれ三輪車から降りた。
周りを囲まれても嫌でもなさそうに鳩を追いかけて遊ぶ事にしたようだ。
お母さんはこの世の幸せを一身に受けたような優しい顔で、微笑んでそれを見ている。
僕はその人にベンチを譲ろうと体を起こした。
「お母さん…どうしてこの人はこんな所で寝ているの?」
女の子が不思議そうにお母さんに聞いた。
幸せそうに微笑んでいたお母さんはその子よりもっと不思議そうに言った。
「ベンチには誰も居ないわよ?変な子ねぇ。」
そうか…僕はもう死んだんだった。
ただ満開の桜を見上げることだけが僕の最後の望みだったのだ。
それが叶ったから僕はもうここを去るよ…
女の子の上に咲く桜の花が風と一緒に舞った。
その女の子は言った。
「早く弟が生まれてくるといいな…」
次のお題は「オルゴール」「地図」「分ける」で。 <>
いいじゃん<><>08/04/18 06:19 ID:bSK6yYziQ.<>
オルゴールの中に地図がありましたので、みんなで分けました。
次、「振ると」「面」「ドーナツ」でどうぞ。
<>
振ると面食らう<><>08/04/18 20:38 ID:3TQzJc7sOv<> >オルゴールの中に地図がありましたので、みんなで分けました。
日本語にもなっていない。
理解不能の駄文。
ヒネリも無ければユーモアもウィットも無い。
だから文才の切れ端さえも見出せない。
スルーでよろしく。
次のお題は「オルゴール」「地図」「分ける」で。
<>
Kelp<><>08/04/18 20:49 ID:1OVvZu1Y9.<> 「ねえ…風の盆って知ってる?」
付き合いだして3年目の夏、彼女は突然僕に聞いた。
「知らないよ…何それ?」
知らないの?割りと有名なお祭りよ?
富山の八尾市で毎年9月1日から三日間、町中がお祭り一色に染まるのよ。
今では観光客でいっぱいになって幽玄な雰囲気は薄れてしまったけれどそれはそれは静かなお祭り。
町内ごとに揃いの浴衣を着た町流しの踊り手たちが、通りのところどころに立って
観光客に踊りの手ほどきをしてくれるんだけど…
面が見えないように下向きに…俯いて、ドーナッツみたいな大きな輪になって踊るのよ。
たった一度行っただけのところだけど、あの町では時間が止まるわね。
「面白そうだね、でもただの盆踊りだろ?何か違うの。」
何を言ってるの?(ここでクスっと笑う)
あの胡弓の音色、草履の擦れる音、神経の全てが凝縮された指先…
小さな子どもにだって私たちの付け焼刃の踊りでは敵わない。
まあ、簡単に言うと収穫の踊りなんだけどね。
今度一緒に行ってみない?
僕は軽く首を振ると隠れてそっと舌を出した
あやうく引っかかるところだったのだ。
確かそこは彼女の生まれ故郷の近く…ニッコリ笑ってもだまされない。
まったく適齢期の女性の話にはどんな詭計が隠されているかわかったものじゃない。
次は「悪霊退散」「古い」「愛」で。 <>
Kelp<><>08/04/18 20:51 ID:1OVvZu1Y9.<> 失礼。書いてるところだったらしいですね…
まぁ、あんまり気にせずに。 <>
振ると面食らう<><>08/04/18 21:03 ID:3TQzJc7sOv<> ああ、いいんですよ^^
次は「悪霊退散」「古い」「愛」で。
これでいきましょう。 <>
↑コピペ馬鹿<><>08/04/19 09:51 ID:X5Ly7dh0mM<>
古い悪霊が愛汁で退散しました。
つぎ、「振ると」「面」「食らう」
はい、どんぞ。
<>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>08/04/19 19:33 ID:OU9TDW.Vlf<> 「振ると」「面」「食らう」
指揮者がタクトを振ると演奏者は指示に従うのか。
どうも、そうじゃないらしい。
曲を指揮者の解釈として、演奏者に面と向かってイメージさせる。
演奏者はプロ、ヘタな奴は混じっていない。
指揮者は演奏者の力量を見下して、存在はないと聞いた。
もし、見下したのなら・・
演奏者からの残酷なしっぺ返しを食らうらしい。
タクトは指示を与えるのではなく、演奏者の信頼で振られるものだという。
たぶん、理解不能だろう。 <>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>08/04/21 00:06 ID:Ske2L1X1T/<> 「悪霊退散」「古い」「愛」
男は女に未練があった。
だからさ、僕はいつも君を心配しているんだ。
昨日だって、何時に家に帰ったんだと思ってる。
ずーと玄関で君の帰りを待ってたんだよ。
なのに、僕を見ても無視して家に入っちゃうんだから。
僕の気持ち、わかってくれよ。
古い人間だから、ストレートに言えないだ。
・・・・・
ねぇ、いつまでも無視しないで、何とか言ってよ。
「いつまでダラダラ喋ってんの。ストーカーのくせに!」
あ、悪霊退散ってことね。はい、はい、了解しました。
次は「魔よけ」「後塵」「醤油」でお願いします。 <>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>08/04/21 00:08 ID:Ske2L1X1T/<> >>142 訂正
「悪霊退散」「古い」「愛」
男は女に未練があった。
だからさ、僕はいつも君を心配しているんだ。
昨日だって、何時に家に帰ったんだと思ってる。
ずーと玄関で君の帰りを待ってたんだよ。
なのに、僕を見ても無視して家に入っちゃうんだから。
僕の気持ち、わかってくれよ。
古い人間だから、ストレートに言えないだ。
だって、僕は君を愛し・・・・・
ねぇ、いつまでも無視しないで、何とか言ってよ。
「いつまでダラダラ喋ってんの。ストーカーのくせに!」
あ、悪霊退散ってことね。はい、はい、了解しました。
次は「魔よけ」「後塵」「醤油」でお願いします。 <>
Kelp<><>08/05/07 21:56 ID:r9hfPzcaBC<> 課の新人歓迎会に遅れる…外回りの仕事が思ったよりずっと手間取った。
僕はこの三月に寿退社をした上司の女性に、その妹が入れ替わりに入社するから…
と彼女の魔よけになる事を頼まれていたのだった。
この上司には可愛がって貰った。
凛とした美しい人だったが35を過ぎても独り身で、周囲では秘かに結婚する意志がないのだろうと噂しあっていた
だからその上司の突然の寿退社のニュースには誰もが驚いたものだ。
魔、とは僕と同期の奴でちょっと可愛い娘と見れば必ずモノにするという鬼畜な奴だ。
なびかなかったのは辞めていったその上司だけではなかったろうか?
僕は今夜、そいつの後塵を拝するわけにはいかなかった。
歓迎会はすでに佳境に入っていて、僕が遅れて席に着いた事に気付く者も居ない。
彼女を探すと思ったとおり…魔の隣に居た
彼女の周りだけが白く浮き上がって見える。
奴は彼女に自分が一番イイ男に見えるだろう角度から話しかけている。
魂胆はミエミエだった。
隠れるようにして彼らを見ていると奴が彼女にしょうゆのビンを差し出した。
その時、しょうゆのビンは傾き彼女の白いシャツの袖にシミをつけた。
「あっ。」
僕は思わず声をあげた。
彼女に一部始終を見ていたと知られてしまっただろうか
奴がその場から彼女を連れ出すに違いない…と僕には見えた。
ところが、彼女は奴に笑いかけながら大きく首を横に振ると奴のそばから離れ歩き出した。
袖口を抑えながら僕の後ろを通る時、彼女は立ち止まり僕に言った。「アナタは私の魔よけじゃなかったの?」
「姉に言われたのよ。私の様にはなるな、とね。」
そう言ってクスっと笑うと彼女はそっと女子トイレに消えて行っ
た。
次は「野菜」「募集」「教える」で。 <>
へのへのもへじ<><>08/05/10 21:30 ID:uTJIjmsb<> はじめまして。新参です。よろしくお願いします。
幼い頃からこの街の、この商店街の、この交差点の角にある、この中華料理屋が好きだった。
豪華な本格中華料理の店などとは程遠い、大衆向けの安っぽい店だ。
大体、本格中華料理の店は、こんな流行らない商店街の片隅などに門を構えたりはしない。
若者の感覚に迎合する気の全く無いおやじさんが営む靴屋とか、マーデティング戦略の重要性を理解する事を放棄した金物屋とか、カラーリングといえば白髪染めしか経験したこの無い床屋とか、そんな廃退的な雰囲気の立ち込めた商店街の一角に、
中華料理屋 『幸楽』 はあった。
何よりも名前が好きだった。なんていい字だろう。
宇宙を構成する内のポジティブな部分だけを凝縮して、全ての無駄を省いたようなその名は、どこにも文句を付ける処が無い程に完璧な名だと思えた。
もう一つ、店内のポスターが好きだった。
若い水着の女の子が、ビールジョッキを持ってこちらに微笑みかけている。胸とビールを強調している。
何年たってもこのポスターは張り替えられることが無く、いい具合に色褪せていた。
その色褪せ具合は幻想的で、若い女の子のポスターなのに、一種の歴史を背負っていた。
隣に申し訳なさ程度に張ってある、『従業員募集』の紙が、嫌に現実っぽくて、ポスターとのコントラストが魅力的だった。
オヤジさんの趣味に一致していたのか、それとも単に面倒くさくて忘れ去られていたのか、どちらかは今でも分からない。
どちらにしても、女の子がエロスと健康を、色褪せ具合が哀愁と時の経過とを表現していたことには疑いようが無かった。
こんなポスターに、年少時代に出会えた事は、間違いなく人生の幸運の一つに数え上げておくべき事だ。
その頃の商店街は、減少の一途を辿る客足に悩んでいた。
お客さんを呼び戻すにはどうしたら良いか、という問いに対し、彼らは、福引を定期的に開催する、という解を導き出したようだった。
経済のグローバル化や金融ビックバンなどのマクロの現象を考慮に入れれば、地元の商店街に客が集まらないなどと云う事態は、
福引などという手段では根本的な解決になり得ないということが今なら明瞭に理解できる。
これは時代の現象であり、被害者も加害者も居ないのだ。
しかし、当時中学生だった私はその様なことを商店会長に教えることができたはずも無く、
「駅前にできた大型スーパーが悪いのだ。」という彼の主張を漠然と信頼していた。
十年前の時点であれ程に全力で時代を読み間違えていた我が愛する商店街が、この新世紀をみごと乗り切り、今も活況を呈しているとは、もとより期待していなかった。
だから、十年ぶりにこの街に帰ってきて、まだ『幸楽』はある、と聞いた時は、単純に嬉しかった。
<>
へのへのもへじ<><>08/05/10 21:31 ID:uTJIjmsb<>
大事な話をする時は『幸楽』で、とは昔からの自分なりの決まりごとだった。
午後七時に母と『幸楽』へ向かった。私が誘ったのだ。
母と会ったのも十年ぶりだ。
突然の息子の帰郷に驚いたようだったが、彼女は詳しい事情を何も問いただしたりしはしなかった。
十年ぶりにこの中華料理屋ののれんをくぐる。
店内を見渡す。
あのポスターはもう貼っていない。従業員も募集していない。客はまあまあ賑わっている。
中国の歴史・文化・政治的問題などに一ミリも感心の無さそうなオヤジが、奥の厨房で餃子やチャーハンを作っている。相変わらずだ。
母はラーメンを、私は野菜炒めを頼んだ。
「野菜炒めだけ・・・?」
母は上司から意味不明な冗談を言われた部下のように、
相手を傷つけずに真意を汲み取ろうとしているみたいだった。
「いま必要なのはこういうものだと思ったんだ。」
「こういうモノとは?」と母。
「普通で具体的なものだよ。毎日の野菜とか、挨拶とか、お金とか。」
「うん。そうね。」
「逆に、偉そうで抽象的なものはいらないと思ったんだ。きっと。」
「例えば?」
「『正義』とか、『芸術』とか。」
「・・・うん。そう・・・・」
「俺、高校の美術教師になることになったんだ。凄い倍率だったんだよ。大変だったんだ。今まで心配かけたけど、もう平気だと思う。」
「そう。すごいじゃない。頑張ったのね。やっとあんたも落ち着いたわね。母さん嬉しいわよ。本当に。」
母は本当に嬉しそうにに云って、十年前にポスターが張ってあった壁の辺りをぼんやり眺めてから、少し悲しそうに厨房のオヤジに声をかけた。
「餃子の追加お願いできるかしら。」
:長文すみません。
次は、 『蛙』『CD』『ヘアピン』でお願いします。 <>
飛鳥<><>08/05/15 17:49 ID:E-M81Nl<> 「来たれ職人!芸術作品募集中、ついに最優秀賞発表!」
ふいに目に止まったそんなニュース。
自分には縁の無い話だ。もしあったとしても、テレビという情報媒体を通した傍観者としてのものでしかない。
しかしそれも、今だけはかなり自分の興味を向ける対象になっていた。
巨大な暗幕に隠された「最高の芸術作品」。その不可思議なシルエットだけが、こちらの興味をより一層引き付ける。
その形は朧気にしか見る事はできないが、少し横に広めの球体。しかも上部には飾りのようなものが無造作にくっついている感じだ。
やがて天をつんざくような轟音が辺りを支配する。
その効果音はその場の観客たちと、画面の向こうの自分にまで興奮と高揚感と期待を抱かせる。
まだか、まだか、まだか。
誰もが待ちわびた瞬間は一瞬。
暗幕は重力に従って落下していく。
そこにあったものは。
みずみずしさを残した赤い赤い、美味しそうな・・・
トマト。
「私たちのトマトを見た人、食べてくれた人が笑ってくれるような、そんなトマトをいつも作りたいと思っていました」とは投稿者の弁。
いつも消費者の事を考えた農家の人々の心。
そんな気持ちの結晶というべき大きなトマト。
野菜とはなんたるか。芸術とはなんたるか。
今こうして食べる赤い果実に教えてもらえた気がする。
溢れ出る果汁はなんとも酸っぱかった。
駄文っすね(;・ω・)精進します
さてお次は「時計」「夕日」「恋心」
結構難易度は低いと思います <>
飛鳥<><>08/05/15 17:52 ID:E-M81Nl<> 俺KYすぎるww
スルーの方向でよろしくです <>
Kelp<><>08/05/16 20:35 ID:Ad.B3Dpxdz<>
隣に誰も座っていない車の助手席を携帯電話と上着で塞ぐ。
昔は確かに、君が隣にいた。
走り始めた車の中を冷たい闇とCDの音だけが支配する。
もう10年…
今夜は初めて、君の最後の地まで走ってみようと思うんだ
上り坂のヘアピンカーブを抜けて、車ごとダイビングしたあの場所へ。
完全なる誤解を解く暇もなく飛び出した君の後姿…
ヒステリックな車のエンジン音に後を追うこともしなかった僕。
あれ以来、路肩が広くなった道路は今ではもう危なくは無い。
君の命が何人かの危機を救ったんじゃないだろうか…
車を停めて外に出たらガードレールには一匹の蛙。
君の車と同じ緑色をしてた。
次は「時計」「夕日」「恋心」で。
<>
へのへのもへじ<><>08/05/16 23:04 ID:5cazUA9M<> ねえ!? 桃子もそぉ思うでしょ!?
あの課長、女だからって私のこと舐めてかかってんのよ。絶対そう。
なに?あの言い方! こっちは真面目に考えてたんだっつうの!
良い感じじゃないの!! 『夕日色』の色鉛筆。
お洒落じゃない? 絶対 売れるって。
ヒット曲はの題名は『夏色』で、かき氷の味は 『ブルーハワイ味』よ?
どんなっ色でどんな味なんだ、っつぅの。
そんなんに比べたらさぁ?私の新商品のアイデアの方がよ?
具体的に色をイメージできるのに、なんだか詩的な響きを奏でつつ、
さらに哀愁を漂わしてるあたりが そこはかとなくお洒落じゃない?
だいたいさ、『山吹色』とか『群青色』とか、何の色だかわかんないんだよね。
そんなんだからこの業界、若い世代の顧客が減る一方なんだよ。
『群青』ってなんの名前よ? 見たこと無いっつの。
桃子ある?
景色なの? 生き物なの?
『ネッシー』とか『恋心』とかと同じたぐいだよね。 絶対そう。
名前だけ皆が知ってるのに、その実体は誰も見たこと無いの。
え?
コウブツ? なに? 好物?食べ物なの?
違う?
ああ。 鉱物ね。 へえ。 群青って石の色なんだ。
あ。!!
ナニ人と話してる最中に時計なんか見てるわけ!?
そんなに私との食事はツマラナイですか!?
なによ。。。私ばっか、愚痴っててさ。。
どうせカッコよくてオカネモチでヤサシイ彼氏の自慢話したいんでしょ。
いいわよ。
聞いてあげるわよ。さあ! 話せば。今度は私が聞く番ね!
え?
なに。。 べつに、、、そんな、、、
そう?
じゃあ、、
そんなに言うんなら、、、。
話すわよ。
私が企画した新商品はね、今までの色鉛筆とは全然違った配色の12色なの。
ほら、わたしクレヨン王国とか好きだったから。小学生の頃。
でね、『夕日色』の他に、いま流行りの『マンゴー色』とか、、
::次回は 『権力』『考古学』『振り子』でお願いします。 <>
rs<><>08/05/18 06:48 ID:nLOvvodZjN<> 「韓国における出土品と日本の九州沿岸における遺跡の出土物の類似点を見るときに、」と、韓国人のA教授は日本人と日本文化が朝鮮半島に由来するとの自説を誇った。
「韓国における出土品と日本の遺跡の出土物の差異を見るときに、」と、日本人のB教授は具体的な事例をいくつかあげて、A教授の説を頭ごなしに否定した。
その否定に怒りに近い感情がこもっているのは、韓国人A教授の主張の表現に日本人を見下すニュアンスを感じ取ったからに違いない。
しかしながら、日本人B教授も怒りに流されて、自説の展開に意図して韓国人A教授個人を蔑むニュアンスを込めている。
二人の怒りは沸騰し、醜い罵倒合戦に発展した。
両国の考古学専門誌は毎号この二人の中傷合戦を学術として掲載し続けることになった。
当然のことである。この二人はそれぞれ韓国と日本を代表する出土物研究の第一人者なのである。己の国の考古学会の権力を背負い君臨しているという自負が、負けられない!、相手を打倒してやる!という意識を生み出すに違いなかった。
両国を代表する識者の罵倒の都度、日本人のルーツは振り子のように朝鮮半島由来か否か、どちらか一方に揺れ動いた。
十数年の時が流れ、若い研究者がふと手を挙げて発言した。
「あの、、、世界の人々の遺伝子を解析してみたとき、、、」
出土物の調査解析という古典的な権力の主流から離れ、考古学者の癖に遺伝しなぞとバカにされていた研究員の発言である。
世界という大きな視野、アフリカにおける人類誕生から世界各地への人類の広がりという数千年の時のスケールを踏まえた研究員の地道な調査結果に対して、朝鮮半島や日本に限定された知見に頼った罵倒合戦の醜さが浮き彫りになる。
研究員は続けた。
「日本人が誇るべき物は、世界の人類、世界の文化の一つの合流点として異なる物が和合していると言うことではないでしょうか。」
権力者たちを黙らせてしまったものは、研究員が提示する真理のすばらしさに対する感動だろうか、それとも己の姿の矮小さだろうか。
*********************************************
実はこの話、半分実話です。
数十年前、考古学専門誌を読んでいて私はあきれ果てて考古学に興味を失いました。
でも、その後、別の科学誌で遺伝子研究と人類の伝播に関する研究を読んで、なんとなく部外者ながら、面子を失った権力者に対して「ざまあみろ」って思ってしまいました。(笑)
では、次のお題、『世界』『生命』『遺伝』でお願いします。 <>
Mr.G<><>08/05/18 14:11 ID:E-JGXAW<> 世界で一番、いゃ、
宇宙で一番、君を愛してる。
「ねぇパパ、宇宙人ってほんとにいるの?」
小さな体の 大きな瞳が、キラキラと私に問いかける。
「お前はどっちだと思うんだ?」
「うんとね、うんとね、……わかんない!」
娘はとなりに座って私の顔を見上げた。
私の顔は思わずほころぶ。
「そうだな。パパにもわからない」
小さな体を抱き上げると、とろけそうなくらいの微笑みがかえってきた。
どうやって伝えようか、この宇宙の無限なる可能性を。
どうやって伝えようか、この生命の連鎖の素晴らしさを。
映画のセリフでも借りようか。
君はどう思うだろう。
「でも、この広い宇宙にいるのが私たちだけだなんて、もったいないと思わないか?」
いつまでも君を見守ろう。
愛すという遺伝子が、宇宙のどこかにも存在していてほしいと思う。
>>151
俺も知ってますその話(笑)
日本の方のほうは近郊の大学でまだご健在でらっしゃるので、
どのようなお人柄なのか一度 草場の陰から拝見したいです。
もしよければ次は
「バント」「アクセ」「えんぴつ」でお願いします。
<>
へのへのもへじ<><>08/05/19 20:31 ID:qvhy.qDX<> 『・・・不愉快だな・・・』、Kはさも愉快そうにそう言って、白い歯をのぞかせた。
『ありがちな結論であることの一体どこが悪いんだろう。
当たり前で正しいことは何度でも主張しなくちゃいけないんだ。
こういうね、わざわざ奇抜な意見を言う輩は、本当は話し合われている内容になんて興味ないんだよ。
”人と違う事言ってる自分”に興味があるだけなのさ。
嫌だろ?こんな奴に、自然保護論は人間のエゴだ!とか適当なこと言われるの。』
Kは、先日買ったばかりのアクオスの液晶画面の美しい映像を見つめ、
笑いながら 『そう思わないか。』 と私を横目でにらむ。
テレビ画面の向こうでは、一般人から識者まで入り混じったトーク番組が催されている。
一本のえんぴつが我々の手元に届くまででさえ、多くの資源とエネルギーが消費されている、
我々は大量生産・大量消費という社会構造を今こそ改め、循環型社会に移行し、
豊かな自然を守り未来に残さなければならない。
そんな内容のVTRに、会場に居た一人の若者が異を唱え、持論を披露しているところだった。
シルバーのアクセを右手首と左手中指にきらめかせ、
胸元の大きく開いたシャツを重ね着している銀髪のその青年は、
自然保護の運動など人間の勝手な偽善に過ぎないと指摘していた。
誰も彼を追い詰めていないし、そそのかしてもいないのに、
高説をのたまわっている内に高揚が絶頂を向かえたのか、
ついに彼は、人間のエゴイズムの救いようの無さを嘆き、糾弾し始めた。
明らかに我々一般人がするには、身の程をわきまえない高尚過ぎる話題だったが、
彼は誰にも頼まれていないのに自分からその話題を選んだのだ。
彼は会場のインテリ達に向かって意図的に毒を吐き散らし、意図せずに口から唾を飛ばしていた。
『ほら。コイツは環境のことなんかには関心が無いんだよ。
環境の悪化は止めなきゃいけないに決まってるだろ。考えるまでもない。でなきゃ皆が死ぬんだから。
けど、人間のエゴなんて、本当にどうでもいい瑣末な問題だよ。
環境問題にまで人のエゴを見てとろうとする奴なんてね、つまるところ、エゴが好きなんだろ。
見たいから見えるんだ。敵は外側になんていないんだろうね。』
Kは、もう何度も繰り返し見て内容を暗記してしまった映画をまた見させられる人みたいに、気だるそうだった。
私はチャンネルをまわした。
東北のプロ野球チームの選手が、スリーバントを失敗し、数少ない得点のチャンスを潰し終わったところだった。
その選手はなんの言い訳もせずにカメラのフレームから消えた。
『こういう場面が好きなんだ。』
Kはたいして面白く無さそうにアクオスの液晶に向かって感想をもらした後、
今度は私に向かって、楽しそうにその理由を説明し始めた。
次回は:『坊や』『猫』『門』 でお願いします。 <>
Mr.G<><>08/05/20 02:54 ID:E-JGXAW<> かつて一人だけ俺のことを"坊や"と呼ぶ人がいた。
古くて広い日本家屋に住んでいたお婆さんだ。戦時には疎開にくるような田舎だった。
彼女の長男はすぐ近くに住み、次男は都会のほうに家を構え、末の一人娘は二つ隣の県の酒屋に嫁いだ。
とても優しいお婆さんだ。
たまに訪ねて腹が減ったと訴えればやおら自分の食事を分け、物寂しいと思うときにはそっと頭をなでてくれた。
俺がはじめてお婆さんに会ったのは米寿も間近の頃だった。
夫はすでに亡く、広い家に彼女は一人で居た。
目に見えて痩せ細った体。
床に居着く時間は日に日に長くなっていった。
坊や、坊やと俺を呼ぶ。穏やかな顔で。
とても優しいお婆さん、だった。
彼女には三男がいた。
出兵した先で行方知れずとなり、遂に帰らなかった。
彼の年はまだ満ちたばかりだった。
家が空になって数年ののち、長男が家を壊しに業者と来た。
いい加減、俺もここから去ろう。
「ん?まだいたのか、この猫」
長男がすれ違った俺に言った。
きょうはよく晴れている。
俺はもう二度とくぐることのない門をくぐった。
振り返ると、門の中で涙をこらえながら万歳を言う弱々しい女性の姿が見えた気がした。
俺は一言、「みゃあ」とだけ泣いた。
次は「ケータイ」「駅」「CD」でお願いします。 <>
らっこん<><>08/05/22 20:00 ID:UcNuwwYz0n<> もう歩き疲れているのだが、ケータイは鳴らし続けなくては
ならない。まだ今日の泊まる先が見つからないから。
何人もの友人にかけているのだが、何故だろう?今日は誰も出ない。
ネットカフェ難民になってから、もう2年になる。
だが昔はカフェ難民であっても何かが違った。
夢があった。希望で目がキラキラしていて、自分の中に満ち溢れていた。ショップの店員をしていた。大好きな仕事だった。
でも忙しすぎたのだ。
友人にと連絡が取れないので、今日はネットカフェで過ごすことにした。駅のほうへ向かった。個室を取り
薄汚れた鞄から、化粧品を出したが、かなり汚れている。
そして持ち歩いているCDを聞きながら
スナックを食べた。今日の晩御飯だ。
どこで間違ってしまったのだろう。あの希望に燃えていた日々。
給料は少なかったが、生きていた。
今は死んでいる。
今はキャバクラの仕事をしているが、殆ど休みがちで
やる気がしない。給料もその日暮らし。
答えは、そう・・・
胸の中の炎が消えたら駄目なんだ。
希望に燃えてなくては生きてはいけないのに・・・
希望を捨ててしまったのは私だ。
辛くても、希望の輝きが私を生かしてくれていた。
もう消えてしまった私にはエネルギーが枯渇して
再出発できそうもない。
今日も、そんな都会にのまれた人たちが、街を彷徨っている。
明日に希望をもつことなく。
<>
らっこん<><>08/05/23 00:49 ID:UcNuwwYz0n<> 次のお題
「スーツケース」「水筒」「鳩」 <>
おっさん<>Y1gESPhTjUy<>08/05/23 01:32 ID:l/OBl9ltHq<> 「スーツケース」「水筒」「鳩」
老人は古びたスーツケースを持っている
そこから、乗りそこねたフェリーが見えている
仕方が無いか
薄暗くなる乗り場で老人は朝まで待とうと思う
財布の中身が少ないのだ
ベンチに座り水筒に入れた酒を飲みだした
あいつに酒での嫌みを言われたなぁ
その妻に先立たれた
上着のポケットから豆の袋を取り出す
歯の少ない老人はひとつずつ唇に押し込んだ
夜の海が深い闇に溶けてゆくのが見えた
鳩が老人の手をついばむ
驚いて立ち上がった老人の前に妻が立っていた
優しく微笑んでいる
老人は喜んで妻のいる場所へ歩き出した
夜の海と深い闇に老人が消えた
次は「田植え」「都会」「雨」でお願いします。
<>
Kelp<><>08/06/06 19:50 ID:nnsvrIXviR<> 「田植え」「都会」「雨」
六月に入って梅雨らしい日々が続く。
ビルに降る雨は音も無く地面を濡らし、人々の足を少しだけ速めさせる。
君にはそんな都会が似合っていた。
ふらり、と言う感じで重たい木の扉を押して君はこの大音響の部屋に入ってきた。
僕はちょっとだけ扉に視線を送るとギターを弾き続ける。
つまらない歌のコードを毎夜押さえるだけの仕事。
カラオケで歌われる曲なんて同じようなものばかりだから…楽な仕事だった。
君が一人でカウンターに腰を掛けていると、まるで磁石に吸い寄せられるかのように数人の常連客たちが寄っていく。
そうして君は週末にだけこの店に顔を出すようになった。
歌は一度も歌わなかった。
仲間たちが歌えばそれなりに聴いているのだが少しでも音をはずすと君は顔を顰めた。
君が何処に住んでいて何をしていてどんな声で話すのか…
僕は知りたいと思ったけれど二人で話しをする機会は一度も無いままに半年が過ぎた。
3月になると君はぷっつりと店へ来なくなった。
気づいたのは4月も半ばの頃、彼女はどうしているのだろうと店の常連たちも僕もそれを気にした。
去年の6月…ちょうど今頃の季節に君は初めて来たときと同じ様に、ふらりと店にやって来た。
ちょっと陽に焼けて、ちょっと痩せて…
誰かが君に「海外にでも行っていたの?」と尋ねる。
君は可笑しそうに笑って言った。
「いいえ…3月から5月って田植えの時期でね…忙しいのよ」
冗談だと誰もが思っただろう
けれど君は真剣で、みんなに種明かしをして見せた。
「私は此処まで1時間以上もかけて通ってるのよ?」
「去年の稲刈りが終わった後、たまたま此処に来たんだけれど、忙しくしていると忘れてしまうものね」
初めて聴く君の声…
君は僕に視線を向け、近寄ってくると、言った。
「ギターを弾いてくれる?曲名は・・・・・・・」
それは僕の弾けない曲だった。
あれから1年、今日も雨が降っている。
そろそろ君がふらりとやってくる頃だろう。
僕が此処をやめて君の田舎に行く決心を固めたのか…
それを僕から直接聞き出す為に。
次は「砂利」「永遠に」「ルール」で。 <>
理子<>3OptlDHXuiR<>08/07/04 21:11 ID:kZP87vLr6G<> 「砂利」「永遠に」「ルール」
ザッ、ザッ、ザッ・・・
砂利を踏む音だけが聞こえる。
まるで侵入者が来たことを知らせるように。
神々が宿る森の中。
立ち止まると、木々の息づかいまでが聞こえてきそうだ。
鳥居の前で一礼。
鳥居の中央は避けてくぐる。
手水舎で心身を清める。
お賽銭を入れて二礼二拍手。
何の下心もないことを神様に証明するためののものだが、いつもここで迷いが出る。
下心があるからここに来たのではないのか・・・
そして一礼。
鳥居の外に出て一礼。
こんなにきちんと参拝のルールを守る自分が時折可笑しくて仕方がない。
なぜなら、守らなければ御利益が薄れるような気がするからだ。
周りを見ていても、みんな同じ。
こうやって神社参拝の儀式は永遠に守られていくのだろう。
次は「朝顔」「落ちる」「飛行機雲」で。 <>
振ると面食らう<><>08/08/25 20:00 ID:80fXYqYv4H<> 明朝・・・
太陽をのぞく全てが蒼い。
朝顔の花びらをすべり落ちる露が美しい。
飛行機雲を追うと、数機の編隊。
畑に落ちた紙には「日本は降伏せよ」
次「山頂」「池」「寿司」 <>
奈々 <><>08/08/26 16:54 ID:E-TWjWH<> お爺さんは狸山の
池の女神に,毎日働いている褒美として,願いを2つ叶えてもらった。
1つは山頂まで登山できる力を与えてもらった。
そしてもう1つ。
山頂に寿司屋を建てた。
<>
奈々<><>08/08/26 17:07 ID:E-TWjWH<> 次のお題は
[着物]
[畳]
[蜩]
<>
振ると面食らう<><>08/10/02 18:00 ID:D-b3P./<> 「来たようだネ」
ふすまがパッと開くと鼻の低い女中が膳を運んできた。
「これだよ、待ってました、これが珍味なんだ」
彼は着物の袖をたくしあげ、畳の上に膝をついて膳をのぞき込んだ。
「おい、なんとも言えないぞ、ここまで来た甲斐があったな。よそ見してないで見ろよ」
無茶いうな、お前がヨダレを垂らしているのはセミだよ。
お題「ドナドナ」「玉ねぎ」「デミグラスソース」
<>
がりがり<><>08/10/03 06:40 ID:H8/szSTaCD<>
>無茶いうな、お前がヨダレを垂らしているのはセミだよ。
よ、こんなドナドナ頭がさあ、玉ねぎで涙をこらえながらさあ、デミグラソース頭からぶっかけたそうじゃねえかw
お題「クルクルパー」「留年」「個室ビデオ」
<>
蘊蓄才女<><>08/10/03 12:28 ID:E-k5mjS<>
あらぁ じぃじったら
またこんな所で油売っちゃってぇ
クルクルパーばっかりいる老人大学も留年したんだって 本当?
あたしと一緒に個室ビデオ行かない?
いいとこよん
お題
「耳」 「紫」 「雨」
<>
がりがり<>zHTEiLZlSGW<>08/10/03 13:02 ID:zYRQ6p7kSJ<>
耳なし阿呆一がさあ、紫の雨に打たれたんだってよw
お題
「阿呆」「成りすまし」「風俗店」
<>
蘊蓄才女<><>08/10/03 14:04 ID:E-k5mjS<>
もぉじぃじったらぁ
短気なんだから
あたしも阿呆ね
じぃじの彼女に成りすましたのに
ばれちゃったのね
またあの風俗店でお会いしたいわぁ
お題
「ごま」 「菓子」
「禁欲」
<>
がりがり<>zHTEiLZlSGW<>08/10/03 15:47 ID:zYRQ6p7kSJ<>
ごま塩あたまのおヴァカさんがねえ仮死(菓子)状態で発見されて、よくよく調べたら、禁欲生活が長すぎたらしいわw
お題
「塩」「華氏」「金曜」
<>
振ると面食らう<><>08/10/03 18:35 ID:D-b3P./<> 金華ハムは肉の塩漬けを燻したものである。
その汁が瓶詰めにされて売っていたがあれをチャーハンの隠し味に使うと最高である。
お題「大」「中」「小」
<>
総評<><>08/10/04 20:24 ID:qnTKHep0eM<> 金大中は肝っ玉が小さいぜ
お題「空」「ラーメン」「バス」 <>
振ると面食らう<><>08/10/14 21:48 ID:D-b3P./<> 昼下がりに目覚め、空腹を覚えた。
街に這い出て、入ったラーメン屋には無愛想なオッサンと若干ボケ始めたオバン。
手垢と脂で虹色に光るグラスに水を注ぐオバン。
小さなポンコツのテレビでおどけるつまんない芸人の声。
半年前の漫画誌に飛び散ったラー油の跡がパルプを透かす。
無言で近づきラーメンを置いてはレジにほほ杖をつくオバン。
脂の浮いた何の変哲もないスープに沈むカンスイで黄色っぽい麺は歯応えが軟弱であった。
申しわけなさげに漂う焼き海苔の磯の香りが邪魔。
ああ480円
文句は言えぬ。
手汗でネチョッとなった五百円玉をオバンに渡すとレジスターがチンとやかましく吠え、残った二枚の十円玉にギザ十が一枚。
帰りのバスには乗れないが、いいやもういい歩いて帰る!
お題「待つ」「帰る」「寄り道」
<>
Mr.G<>CjPLNnLiZL5<>08/10/18 01:25 ID:KXh.tIY4Sy<> ― 我だけを想う男のつまらなさ 知りつつ君にそれを望めり ―
金曜日の遅い家路。俺を待つ者はいない。
妻は出て行った。それは今朝の事。
女の同僚との仲を疑われた。
結婚前に遊びすぎたのが原因か、否定をしても信じてもらえなかった。
妻ともはじめは遊びのつもりだったのだ。
誰かと飲みに行こうかと思ったが皆先に帰ってしまい、
結局、数年前の独り暮らしの時のようにコンビニで弁当を買った。
コンビニから家までの距離が長く感じられる。
秋も深まりYシャツだけじゃ寒くなってきた。
そうだ、このYシャツも土日のうちに洗ってアイロンをかけなきゃならない。
ああ、最近天気良くないのになあ。アイロンどこにあるんだっけ。
ぐだぐだと愁いながら、スーツの上着をはおり人もまばらな夜道を帰る。
マンション前に見える人影。
影は小走りに近寄ってきたかと思うと、手にあるコンビニ袋を見て苦笑った。
「お帰り」
見慣れたはずの顔を見て思い立つ。
久しぶりに、デートでもしようか。今日これから。
夜も遅いしコンビニまでの距離だけど、
立ち止まって見つめ合うのではなく同じ方を向いて歩こう。
ふたりでなら寄り道だって道になる。
君が望んだのだ。ツマラナイ男になることを。
芯まで冷えた長い髪を暖めるように、スーツの上着を細い肩にかけた。
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